親愛なるストーカー
ワンピース良し、おんぶ良し、手袋良し!
「うむ、完璧でござる」
ルーナたんにおんぶしてもらい、ルーナたんに選んでもらった冬用のワンピースを纏い、ルーナたんと選んだ手袋を身につけた私。
ちなみにワンピースは勇者達の財布からで、手袋は私が支払った。
「可愛いじゃん、センセイ。似合ってるぞ、その服」
軽いジャンの褒め言葉はスルーが基本だ。
「なんでウサギの服を私たちの財布から支払わねばならないんだ……」
ぶつくさ言っているソル君が、なんとこの勇者一行の会計担当だった。
まぁ確かに重箱の隅を突っついて値下げ交渉できそうな男ではある。
でもせっかくの美貌が台無しだ。
己の容貌をこそ無駄に使うなと言いたい。
「ラビーちゃん、お揃いだねっ」
「ござるっ」
そうなのだ!
なんとこのワンピースはルーナたんとお揃いなのだ!
大人しめの、深い茶色が基調のワンピース。
でも胸元とスカートの裾に濃い茶色の花柄がさり気なくあしらわれていて可愛い。
色白で色素の薄い髪色のルーナたんには、落ち着いた深い色がよく似合っている。
ということはつまり、白ウサギ柄である私・ラビーにも似合っているということではなかろうか?
まぁ、ツルペタすっとんな幼児体型ではあるけれど。
3.5頭身ではあるけれど。
「ではいざ出陣!でござるが、くれぐれもラビーが合図するまで防御か回避に努めるように。
時間と3200ビルを無駄にしたくなければ、でござるが」
にやり、と笑う私を胡乱な目で見てくる二人の若者。
おいソル君や、私がルーナたんにおぶわれているのを忘れたのだろうか?
その性格悪そうな顔がルーナたんにも目撃されているのだぞ?
「大丈夫だ、ラビー。
ソルもさすがに大金が関わってくるなら大人しくなるだろう」
ディーノさんが太鼓判を押してくれた。
そ、そうなんだ……さすがに孤児だけあって、金銭感覚がしっかりしてるんだね、ソル君。
「ジャンも、いくら勇者割引があるとはいえ、自重しろ。いいな?」
「そりゃもちろん。センセイの指示とあれば従いマスよ」
にやりと笑うジャンが胡散臭いのは置いといて、私がこの勇者一行に加わって何が驚いたって”勇者割引”だ。
確かに、最初の町であるカティアの宿屋、プレイしている時には20ビルぐらいで泊まれたのだ。
だが実際にラビーで泊まってみると食事付きで50ビルだった。
前世の金銭感覚でいったら、確かに50ビルでも若干安いような感じではあるけれど、宿泊に50ビルも取るなんて中盤以降の大きな町だったのだ。
その辺はゲームと現実世界の差かなぁと思っていたのだが、なんと宿屋には”勇者割引”というものがあったのだ……!
その割引を使った結果、カティアでは勇者4人様が20ビル、ここシューロスでも私が増え、雪国で光熱費が嵩むにも関わらず5人で30ビルという破格の割引がなされていたのだ!
そりゃまぁ確かに?
勇者様が頑張ってくれなければこの世界は滅びるわけですから?
まぁ当然っちゃ当然ですけど?
なんとなく理不尽だっ!
私たちは宿屋を引き払い、雪の積もった大通りに出た。
もうすぐである!
もうすぐカモが!じゃなくてストーカーが!来てくれ――
「――俺が勇者だっ!」
キター!
「そこの金髪のひょろい男じゃなくて、俺が勇者なんだ!
俺の方が勇者に相応しいんだっ!」
自分を勇者と言いつつ、俺の方が相応しいという言葉で周りの通行人から、『あぁ、自称勇者ね、お疲れ』と、生温かい目で見られているとも知らない赤毛の、それこそひょろそうな青年。
彼こそがエラクレス6.0なのだ!
「ルーナたん、ちょっと我慢してほしいでござる」
ルーナたんに謝りつつ、彼女におんぶしてもらっている私は目の高さにあるルーナたんの耳を、モコモコの手袋で塞いだ。
ここから先は、ピュアなプリンセスには聞かせられない言葉が出てくるからね。
「お前かよエラクレス。良くここまで来れたよなぁ?
もしかして勇者の素質あるんじゃね?」
う~ん、それはエロくデスが強いからじゃなくて、父親である神殿長から、神殿の秘宝であるアイスシールドやら炎の杖、アイスマントを用意してもらって着込んでいるからじゃないかなぁと思う。
なんか、無理に着込んでいるみたいで、重いのかヨロヨロしているし。
アイスマント、欲しいなぁ……炎の杖も。
ボコボコにして追い剥ぎしたら奪えないかなぁ?
盗めるのはルーナたんの防具だけなんだよね。
「あるさ!素質ならそこの、聖女の息子ってだけで特別扱いされてるピーでピーな男なんかより俺の方がずっとある!」
ピーには適当なスラングを入れていただければ良いかと思う。
私も下品すぎてついていけない。
「大体っ!お前らそこの美少女達と夜な夜な何をしてるんだよっ?!毎晩裸エプロンさせてお口あ~んで何喰わせてんだかっ!」
ん?達?複数形?
つまり、ルーナたんと私?
「ルーナたんならともかく、ラビーに裸エプロンって誰得でござるよ」
だってラビーは亜人で獣人だ。
つまり、一般的なウサギぐらいの毛が体表面を覆っているので、裸にしたところで毛皮がよく見えるというメリットしかない。
「ル、ルーナ……裸エプロンだと……っ」
「セ、センセイが裸エプロンっ」
呟き声に横を向くと、二人の若者がワナワナ震えていた。
「ソルはともかくジャンはキモい」
それともあれだろうか?
毛皮を愛でる、いわゆるモフるという行為を愛しているのだろうか?
どっちにしてもごめんだが。
「とりあえず防御か回避を頼んだでござるよっ」
私が声をかけると共に、
「うぉぉぉぉっ!
お前ら羨ましすぎるぜぇぇぇっっっ!」
と言ってやつが襲いかかってきた。
……阿呆だと思う。




