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牽制


 決意を固めて勇者たちに向き直る。

「これから、よろしくでござるっ!

 ……それで、でござるが。とりあえず店を続けたいでござるよ」

 食堂の向かい側に、こちらを窺いながら集うクマ柄セーターのおじちゃん達。

 寒いからね。

 奥様方にお遣いを頼まれたジェントルメンだ。


 ほとんどがクマ柄セーターということは、もしやこれがここシューロスでの流行りなのだろうか?

 『クマにクマ着せてみたらむっちゃ可愛かったのよ♪』とか言う感じの。

 奥様方の井戸端能力はすごいからそんな感じもあり得るかもしれない。

 ナイスだ、奥様方!!


「ラビーちゃん、私のも一個残しといてくれるかなぁ……?」

 美少女の上目遣いに勝てる者はいるだろうか?

 いやいない。

「分かったでござるぅ」

「俺も頼む」

 ディーノさんが意外に甘党だったとしても、私は幻滅したりなんかしない。私の愛を舐めるんじゃない。

「承知でござるっ」

「センセー、俺も~」

「一個5ビル」

「……いいけど」


 いいんだ?

 ジャンのしょげるポイントがいまいち分からない。

 ソル君は……あぁはいはい。

 ルーナたん眺めてたら甘い物なんかいらないよね。

 ルーナたんが美味しそうに食べる顔を見るのがソル君のご馳走だもんね。

 ソル君もソル君だけど、気づかないルーナたんもさすが、正当派ヒロイン!

 そのピュアな鈍さでソル君を思う存分振り回して欲しい。


「――ではお店を再開するでござる!

 お待たせしたでござる!

 おいくつご所望でござろうか?」

 今日もがっぽり稼げた。

 モンスターを狩って稼ぐより、この商売の方が利率がいい気がする今日この頃である。




 さて。

 フードを被って先ほど私のブラウニーを5個購入していった赤髪の男。

 彼こそが明日のイベントの主人公だ。

 ……なんでブラウニーを買っていったのかはともかく、今日中に明日の打ち合わせをすべきだろうな。

 彼の名はエラクレス。

 BF各シリーズに出てくる主人公のストーカーで、対戦時に盗むと稀に良い装備を寄越してくれる素敵な粘着男だ。


 このBF6では『”エロく”です』というニックネームで呼ばれている。

 理由は……まぁお分かりのことと存じる。

 なんせ下ネタが多いのだ。

 だが明日はその下ネタに激怒されてはならないのだ。

 特にソル君。

 得たばかりの加護を使ってエラクレスを火の最上級精霊召喚魔法で止めを刺してしまっては駄目なのだ。

 カーリーお姉様の出番はまだない。


 ということで私は勇者達に釘を刺しておかなければならないのだ。

 好きな女の子にセクハラ発言をされてもキレないような根回し。

 ……詰んでない!

 いくらソル君が私の言う事なんてこれっぽっちも重視していなくても、やらねばならないのだ!


「やっぱり男は鷹揚に構えているのが一番カッコいいでござるよねぇ、ルーナたん」

 宿屋での夕食時、私は勇者一行と食事を摂りながらルーナたんに話しかけた。

「??うん、そうだね……?」

「多少のことでは怒らない、キレにくい男がいいでござるよね?」

「う、うん……えぇと、やっぱり笑顔を見る方が嬉しいよね」

 ルーナたんは顔を疑問符だらけにしながらも私の話に乗っかってくれた。

 ジャンとソルは、『いきなり何の話してんのコイツ?』という、呆れをあからさまに滲ませた顔をしている。

 ディーノさんは……黙々と食事を味わっているようだ。

 うん、私は笑顔がなくても渋いディーノさん推しだなっ。


「自分の感情を隠して根暗に笑う男より、たまに笑う顔が優しくていざとなれば守ってくれる落ち着いた寡黙な男の方がいいでござるよねぇ」

「う、うん……?」

 斜め前から私のシチュー皿にサラダ用のキュウリっぽい緑の生野菜が投げ込まれた!

 お、おのれ……なんと根暗な嫌がらせをするんだこの男は!

 お返しにトマトっぽい赤い生野菜をソル君のシチュー皿に投げ込んでやった。

 この世の終わりみたいな顔をしていた。ざまあみろ!


「え、えぇと、とにかく一緒にいてドキドキできる人がいいよねっ」

 そう言った後、自分で自分の発言に『あれ?』という顔になったルーナたん。

 そっかぁ、月でルーナたんはロイヤルな存在だったからもちろん婚約者はいたけど、ルーナたんの方では親愛の情はあっても恋愛感情はなかったもんね。

 『お兄様みたいに思ってた』って、ずっと後になって言ってた。

 そっかぁ、つまりルーナたんはそのうちソル君にドキドキするようになるわけだ。

 ……なるのか?


「なんだい、ウサギ?その不躾な視線は?」

 私の目線に気づいたソル君が不機嫌に言った。

「まだ根に持ってるでござるか?根暗な男でござる」

 トマトっぽい野菜のことだ。

「根暗っていうのは、何日も前のことをネチネチ言い続けることを言うんじゃないのかな?」

「ふむ。さすがはその道の先達でござる。定義をよく存じているでござるね」

 バチバチっと私たちの視線がぶつかり合う。


「ソルさんとラビーちゃんは本当に仲良しだねっ」

 にこにこ笑うルーナたんに、私たちは敗北した。

 鈍い美少女に勝てる人間はいるのだろうか?

 いやいない。

「まぁある意味『仲良し』だよな。似たもの同士っつーか」

「うるさいよジャン」

「黙れでござる!」

 余計なことを言う男は常に冷たく扱われる。

 これも鉄則だろう。



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