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死に別れた恋人と再会したので、結婚しようと思います


 エラクレスは、BFシリーズでも有名な変態(ロリコン)担当だった。

 各シリーズのヒロインに絡みまくり、複数ヒロインの場合はより若い方に積極的になるということから、ロリコンの称号を欲しいままにしていた。

 そんな変態がセンセイに目をつけることは分かりきっていたわけで。


「こ、こっち来んなでござるよ変態っ!」

 だからセンセイが毅然とした態度で変態を拒絶してくれたことに、俺は快哉を叫びたかった。

「――……だってよ、フラれたな、お前」

 まぁ、精々嫌みを言う程度だったけど。

 ゲームの中では嫌いじゃなかったし。

 ただ、トーコを変な目で見られるのが許せなかっただけで。


 しっかし、俺達が孤児院でそこそこ質素な生活をしてた時に

「あ~食い過ぎて腹が苦しいぜ」

 とか嫌みったらしく高価なおやつをわざわざ頬張ってみせてたツンデレ少年の末路が、ロリコンとは。

 人生って分からないもんだな。


 しかもあいつ、

「しょうがないから分けてやる」

 と言って差し入れしてくれてたんだぜ。

 前半がなけりゃ、ただのいい人だったのに……なんて残念な男だったんだ、小さい頃から。

 

 あいつの今後に関しては、ディーノさんが適当に指導してくれるだろう。

 適当に。

 ……気が向いたら。




 聖女アンヌに会えたソルは、泣きそうに見えた。

 幼馴染みで、ずっと一緒にいた俺にも『母さんに会いたい』なんて言ったことなかったくせに……。

 大切に、大切に亡き母を抱きしめるソルを見て、俺はトーコの両親を思い出していた。

 それしか呟けないみたいに、何度も『どうして』と繰り返していたおばさん。

 黙って拳を震わせていたおじさん。


 家族を喪うことの、痛み。

 俺がもたらした、苦痛。

 俺が、決して忘れてはならない、罪。


 ソルが、ありがとうと言った。

 もう、大丈夫だと。

 同じ声の大きさで、おじさんとおばさんの声がした。

『ありがとう。

 もう、大丈夫』

 と。


 ……分かってる。

 都合のいい幻聴だ。

 そんな風に言って欲しいっていう、俺の願望が生みだした、幻の声だ。

 俺は卑怯で、クズで……だから、嬉しくて泣けるんだ。

 そんな言葉に縋って、泣けてしまうんだ。


 守ろう。

 今度こそ、誰からもトーコを守って、可愛いおばあちゃんにしてあげよう。

 もうこれでいいやってぐらいまで長生きしたトーコが、楽しかったと言って目を閉じられるまで、ずっと見守ろう。


 だからルヴナン。

 お前はもう、この世界には……要らない。





 無音無風の超新星爆発を終えて、ようやく全てが終わった気になった。

 ソルもルーナもディーノさんも、そして肝心のトーコも無事だ。

 見守るとは言ったけど、恋人として見守るつもりは満々だった俺は、センセイの言葉に飛び上がった。

「な、なんか変なことになってるでござるよぅ」

 なんだよ変なことって!?


 ようやく恋人と幸せになれると思った矢先に不治の病とかか!? とおののいた俺だったが、どうやらセンセイが進化したらしいということが分かって心底ホッとした。

 あ~、センセイが無事ならどっちでもいいや……そう思っていたが……人化。


 え、人化?

 人化ってアレだよな?

 ラビウサ族じゃなくて人類に化けられるってことだよな?

 ……え、トーコになれるってことじゃねぇ!?

 別にラビウサでも我慢できたけど、俺の下半身事情的には圧倒的に人化推しだ。

 

「トーコッ!」

 そして、白ウサギっぽかったセンセイは、見事黒髪美少女のトーコに変身していた。

 俺ががっつくのも無理はないと思ってくれないだろうか、ルーナ。

 散々牽制してくるけど、ソルより俺の方が紳士的だと思うぞ?


「やっぱりトーコは可愛いな」

 目線でルーナとやり合った後、どうにかトーコに近寄った。

「――……ハルト君?!」

 え、俺だって分かったの?

 やっぱり愛だよなぁ、俺達――

「ハルト君が変態になってた?!」

 ……それ、誤解だからな?




「……ねぇ、お父さんとお母さん、元気だった……?」

 俺は、一世一代の演技をした。

 おじさんもおばさんも、トーコに心配かけたいわけじゃない。

 絶対に。

 でも、俺が知ってることをそのまま話したら、絶対にトーコは傷つく。

 自分のせいだって、自分を責める。

 

 そんなの、させてたまるか。

 トーコの家族が今のトーコを知ったら、絶対にこれからのトーコの幸せのことだけを祈る。

 もう会えないけれど、だからこそ幸福を祈るだろう。

 だから、俺はトーコの幸せのためにも、嘘をつき通すんだ。


 トーコ、君の家族は、君を愛していた。

 君の幸せを今でも祈っている。

 ……トーコが知る必要のある情報は、これで全部。

 それでいいと俺は思っている。


 膝の上に乗せたトーコの体温や匂いが懐かしくて、ついでに下半身を直撃したためにちょっとだけイタズラを始めたら、即座に絶叫された。

 ……不本意だ……。

 あと、ルーナよりディーノさんが駆けつける方が早かったのが、なんか嫌だった……。

 孫娘じゃないですから!

 




 さて、こっそりシューロスに準備していた店舗兼住居に、トーコと一緒に住み始めてはや半年。

 う~ん、トーコが可愛くてチョロい……。

「ハ、ハルト君はそんなに手慣れてなかった……っ!」

 今日も今日とて、俺に壁際まで追い詰められたトーコが喚いた。

「そうか?」

 今思えば、ハルトの時に気遣いすぎてプロポーズも逃してたし、そういう後悔は今の俺に影響してるかもしれない。

 さっさと結婚しておけば、あんな悲劇は訪れなかったのかもしれないし。


「なぁ、トーコ。

 お帰りのキスは?」

 俺がいると必ずラビウサの体になるトーコだが、別に本番ができないだけで色々と体のコミュニケーションが取れるということは分かっていないらしい。


「い、意味不明でござるよっ!」

 さすがはゲーマートーコ。

 ラビウサの時はきっちりラビウサ弁を使う所が、好感度大だ。

「するって約束したろ~?」

 顎を柔らかく掴んで無理やり唇を近づけると、もう少しという所でフワッと抵抗が止むところが可愛い。

 

 ラビウサの口は小さいから、俺が変な嗜好に目覚める前にさっさとトーコに戻って欲しい。

 酔わせたらこっちのもんなんだが、酔った勢いで既成事実作るのも情緒がないっていうか。

 やっぱりトーコの合意が欲しいっていうか。

「セ、セクハラばっかりするなら、もうプリン作ってあげないからっ!」


 トーコの必殺技が炸裂した。

 いや、ぶっちゃけプリンがなくても生きてられるんだけど、あんまりトーコの逃げ場がないと泣かせそうだし。

「…………」

 黙り込んだ俺を泣きそうな顔で見上げて、俺が止まったことにホッと顔を緩める所も可愛いし。


「……じゃあ、今夜はトーコでいて欲しい。ダメ?」

 こういう交渉なんて聞かなきゃいいのに、しぶしぶ頷くトーコが可愛い。

 悪い男に騙されないか、とても心配だ。

 町全体でトーコ防衛網を構築してるけど、もっと範囲を広げた方がいいかもしれない。


「好きだよ、トーコ」

 俺が頬にキスをすると、顔を赤くした。

 そういう顔されると、全然引く気にならないんだけど……トーコは分かってない、んだろうなぁ。

 いっそさっさと結婚してしまえば、トーコも踏ん切りがつくかもしれない。


 まずはお披露目するための、結婚会場の設置からだよな……。

 トーコにはどんなドレスが似合うだろうか?

 お披露目はセンセイ(ラビウサ)だから、ラビウサ用の可愛いドレスも作らないと。

 近いうちにルーナと相談することにしよう。


「ハルト君、悪い顔……」

 失礼な。

「そのうち、ルーナのとこに遊びに行かないか?」

 俺の誘いに、怪訝そうな顔のくせに頷くトーコ。

 ……うん、やっぱりトーコは騙されやすいから、きっちり俺がこれからも守っていこうと思う。


 転生したら死に別れた恋人と再会したので、夫婦になろうと思います。

 つまりは俺の転生人生は、そういうものになるわけだ。

 出会えて、良かった。





最後までお読みくださって、ありがとうございました!

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