11-8 誘拐の一報と、計画的な犯行と
「王女が誘拐!?」
剣士が大声を上げる。
「外に知れるとまずいのでもう少し声を落として」
副ギルドマスターが釘を刺す。
「すまん、続けてくれ」
「今日の朝、市場の調査に出かけた王女が、何者かに誘拐された」
「護衛はどうしてたんだ?」
「後ろから刃物のようなものでいきなり斬りつけられ襲われたそうです」
「無事なのか?」
「現在ギルドの病院施設で治療中です」
「剣姫は?剣姫は何してたんだ?」
「剣姫殿は、その時は別の場所に」
「なんてこった」
「とりあえず、護衛の付き人に詳しい話を聞きに行く」
「バルキリーたちも同伴してくれ」
「承知した」
――
ギルドの病院施設。
ベッドには身体に血まみれの包帯を巻いた付人が眠っていた。
タイチと組み手をした付人だった。
医師らしき男が、
「今は薬で眠っています」
「そちらは目覚め次第話を聞くつもりだが、」
部屋にもう一人の付人が看護師に付き添われて入ってくる。
腕と足にうっすらと血が滲んだ包帯を巻いていた。
「私の方は比較的軽症だったんだが、そっちはかなり出血していてな」
眠っている付人を見ながら言う。
「怪我の心配もあるが、最優先は王女殿下の安否だ」
「わかっております」
当時の現場の状況を聞く。
早朝の王都内の客層を把握するため、剣姫と付人二人を連れ立って町へ出た。
市場の裏路地で、冒険者らしき男たちの喧嘩に出くわした。
王女の指示で仲裁に入った剣姫が、そちらに気を取られている間に、暴漢に襲われた。
その話を聞きながら、
「その冒険者、グルだな」
「間違いないでしょう」
剣士と副ギルドマスターが推察する。
「なんで分かるんですか?」
タイチの疑問にエルフが、
「賊が襲った路地で、冒険者の喧嘩が都合よく目の前で起きるとかありえん」
「……剣姫と王女を……引き離すために、予め仕組んでいた……」
魔法使いが付け加える。
剣士はさらに、
「内通者もいるな」
「信じたくありませんが、それも」
副ギルドマスターも苦い顔をする。
「なんで内通者がいるって分かるんですかぁ?」
聖女が質問する。
「そりゃあんた、王女がそこを通ることを、」
「いや、その時間にそこにいることを知ってるからよ」
娘がそう話す。
「王女の予定を流したやつがいるにゃ」
ロリ猫も同意する。
「ひとまず、王女の安否だが、多分無事だろうな」
「それは私も思う、突発的な犯行なら連れ去る必要はないからな」
「ああ、何らかのアクションを起こしてくるはずだ」
(すごいな、たったあれだけの情報で……)
すると、寝ていた付人が目を覚ます。
「申し訳ない……申し訳ない」
朦朧としながら涙を流し言う。
「心配するな、王女は無事だ、多分」
「そうだな営利目的の誘拐の可能性が高い」
「交渉の切り札を無意味に傷つける事はしないだろう」
「そうか…無事で……あってくれ……」
そうしてまた付人は意識をなくす。
――
ギルドの病院施設の一室で話し合いは続く。
「まずは王女の予定を知ってる奴がどれだけいるか」
剣士が副ギルドマスターに問う。
「王女付きの侍従長と侍女を呼んであります」
そう言って、侍従たちを部屋に呼ぶ。
(あ、助さんと格さん)
侍女の中には御前裁判の時の二人も居た。
勝手にそう呼んでいるだけで名前も知らない。
侍従長が、手帳を取り出して、王女の予定を知り得るものを挙げていく。
「まず、我々、侍従長ならびに執事、護衛兼付人、王女付き侍女、料理人、」
「宰相、大臣、政府高官、衛兵長、憲兵長、騎士団長、将軍、軍部高官、」
「結構知ってるんだな」
「あとは必要な場合のみ、移動先に伝えております」
「王族は?」
「王族関係には基本お教えしておりません」
「じゃあ王族の仕業じゃないな」
「なんで王族が関係あるの?」
「そりゃ跡目争いとかでしょ」
「どれも怪しいし、どれも怪しくないな」
剣士はひとしきり話を聞いた後、
「勘で答えれるのもここまでだな、あとはエルフに任せる」
「なんじゃそりゃ」
「頭を使うのは苦手だ、体使う時が来たら言ってくれ」
そう言って、ソファーに腰掛ける。
そこに憲兵を連れ剣姫が現れる。
「剣姫、現場の状況を聞かせてくれるか?」
「こいつに……全部話した……」
憲兵に指差して剣士の横に座る。
王女、付人、剣姫と四人で市街を移動中、
路地の奥から大声がした。
剣姫が見に行くと冒険者らしき二人が言い争っていた。
付人は関わらない提案をしたが、
二人が剣を抜いたので王女が剣姫に止めるよう指示した。
抜刀した二人は剣姫を誘導するように奥へ。
通り側に馬車が止まる音がして、叫び声が聞こえ、
戻ると付人二人が倒れていた。
二人の冒険者も居なくなっていた。
憲兵が剣姫の代わりに説明する。
「概ね剣聖の予想通りじゃな」
「うむ、計画的に王女を狙っている」
「これに関して枢密院はなんと?」
「枢密院からの指示は、」
「明日までに犯人側から」
「何かしらの要求が来なければ」
「王女の誘拐を発表する」
「大事にしたくはない、早期の解決を望むと」
副ギルドマスターがそう告げる。
「では、私はギルドの情報網を使って調査を続行する」
「何かあれば担当職員を通じて情報共有を行なう」
そう言い残して部屋から出ていった。
残されたバルキリーと侍従たち。
エルフが状況を紙に書き出していく。
剣姫、付人の話の裏をとっていく。
そんな中、剣士が何気なく呟く。
「なあ、あんたらもう王女の場所は掴んでんだろ」




