心を許せる友
入学式が終わり、数日。授業が始まり、それが少しずつ日常に溶け込んでいった。
この日の授業は初めての魔法。王城で練習したけど、教師と自分の魔法しか見てないから、他の人の魔法を見れるのが楽しみだ。
この世界の魔法には、属性というものがある。水、風、緑、大地、光、闇。生まれ持った属性によって扱える魔法が決まっていて、1種類しか使えない者もいれば全部を使える者もいる。そして、それは大体家柄に比例している。僕は王族だから全部使えるけど、セレスティアは侯爵家だから、風と緑と光しか使えない。聖女だから、光の魔法は飛び抜けて有能だけど。
魔法の授業は、一人一人が前に出て先生に見せる形で行っていた。風の魔法で物を浮かせる、大地の魔法で炎を生み出すなど様々な魔法があった。しかし、どれも初歩的なもの。だが、たまに上手い人がいる。
「次、エリオット・ヴァレンティーノ。」
「はい。」
ヴァレンティーノ家は公爵家で、代々騎士団長を務めている家系である。エリオットは全属性使えるらしく、魔法も上手だ。彼は水と光の複合魔法で虹を創り出した。あれは中難易度の技のはず。彼の創った虹は、幻想的で綺麗だった。
「次、セレスティア・ルヴェリエ。」
「はい。」
彼女は、大地の魔法で自ら手を焼いたあと、治癒魔法で傷一つ残さず治した。あれは、文句なしの合格だろう。彼女にしかできない。
「次、リアナ・グランチェス。」
「はい。」
リアナは、光以外の全ての属性が使えるらしい。光が使えないのは、彼女の性格がひねくれていて、光の天使に祝福されなかったからに違いない。彼女は、闇の魔法で物を隠した。あれはけっこう上級者だと思う。僕はまだできない。僕にできなくて彼女にできるということが、何となく悔しかった。
「次、レオン・アーデルハイト。」
「はい。」
学校では教師は呼び捨てで僕の名前を呼ぶ。平等にするためらしい。僕の番――。僕は風の魔法と大地の魔法で教室を飛んだ。
周囲が驚きの目でこちらを見ているけど、そんなに難しい魔法ではない。騎士団の人達は皆使い慣れていた。
僕は注目が苦手だから、あまり人の方を見ないようにした。
「レオン様、さすがでした。」
「エリオット。あなたの魔法も良かった。あの虹、綺麗だった。」
「ありがとうございます、光栄です。」
「敬語は使わなくていい、同級生なんだから。」
「……!よろしいのですか?」
「ずっと敬語使ってると息が詰まる。レオンって呼んで。」
「……レオン、よろしく。」
それからは、だんだんエリオットと打ち解けていった。彼は剣技がとても上手くて、将来は騎士団長になって僕を支える!ってすごい楽しそうに話してくれた。彼には、変な気を使わなくてよかった。
「レオン、いいこと発見しちゃった。この魔術具、つける時の魔力の大きさで魔法を制限する力を決めるだろ。だから、つける時に、魔力を抑えれば……。ほら、簡単に壊せる!」
「おぉ!すごっ!でも、使う時来ないよ。」
「うーん。敵に捕まった時とか?」
「その時になったら思い出すわ。」
エリオットとなら、肩の力を抜いて笑い合える。彼は、僕がこの世界に来てから初めてできた親友だった。
「ありがとう、エリオット。」
「何を今さら。これからもよろしくな、相棒。」




