かすかな違和感
数週間が経って、もう学園での生活は当たり前になっていた。
昼休み、セレスティアとその友達たちが、花壇の手入れをしていた。水やりや雑草抜き、枯れた花の再生まで。この世界は魔法でできてしまう。本当に便利な世界だ。
そんな和やかな雰囲気の中、それを壊す者が現れる、リアナだ。
「まあ、さすが聖女様。お花の世話とは……。薄汚れた侯爵家のあなたにお似合いじゃない。」
彼女は無駄に大きな声でセレスティアを挑発し始めた。空気が、一瞬で張りつめた。
「聖女様、花に魔力を分けてあげるなんて随分とお優しいこと。」
リアナは、いいながら取り巻きたちと共に綺麗になったばかりの花を踏み潰してゆく。
「リアナ様!?お花がかわいそうです。」
「あら、まあ。お花は感情がないわよ。そうやって綺麗事いって私のこと見下しているんでしょう?」
「やめろ、リアナ!」
耐えきれなくなって仲介に入ると、セレスティアとリアナたち、遠くから見ていた観衆が、一気にこちらを見てくる。人前で話したくないけど……。でも――。
「リアナ、なんでそんなことをするんだ?」
「殿下には分かりません。」
そういう彼女は今にも泣き出しそうな表情だった。あのリアナが!?と信じられないけど、確かにこの目で見た。リアナは甲高く笑いながら誰もいない方向へ言ってしまった。取り巻きがついて行こうとすると、
「来ないで……!」
と言って。その声は少しだけ震えていた。
「セレスティア、大丈夫か?」
「ええ、私は大丈夫です。ただ、お花たちが――。」
「大丈夫だ、セレスティア。僕はお花より君のことが心配だ。」
「レオン様……!」
セレスティアが抱きついてきた。人の温かみが感じられた。でも、また守ってあげられなかった――。お花の痛みも自分のことのように感じてしまう、この優しい彼女を、守れなかった。
まずは、リアナと話をしよう。それでも聞く耳を持たないならば――。彼女は悪役令嬢。処刑するだけだ。
それでも、リアナの違和感が消えることはなかった。あの泣き出しそうな表情。セレスティアを執拗にいじめようとする彼女。その2つがどうしても結びつかなかった。セレスティアに嫉妬しているのなら、なぜあんなに泣きそうな表情をしていたのか――。泣き出しそうな表情のリアナは、セレスティアよりも弱くもろい心を持っているのではないか――。そんな考えが頭に浮かんでいく。




