入学式
春の光が差し込む貴族学園。
僕はとうとう入学式を迎えてしまった。
今、王子として壇上に立っている。
同学年の好奇な眼差しを受けて、冷静を装いながらも内心は緊張していた。――前世も、人の前に立つのは苦手だった。今から慣れていくことはできるのか……。
これから、僕と聖女の婚約が発表される。まだあったことの無い婚約者、セレスティア。一生を共にするパートナー。どんな人なのか。
「陛下のご子息、レオン・アーデルハイト殿下。ルヴェリエ侯爵家のセレスティア・ルヴェリエご令嬢。両名が婚約したことを、発表致します。」
学校長が発表し、会場はざわめく。
王子の結婚相手は侯爵家の聖女。聖女だから納得する者もいれば、侯爵家ごときがと思う公爵令嬢だっている。僕は、皆の目線に気まずさを覚えながら、辺りを見渡す。
扉が開き、セレスティアが入場した。真っ白な手足に亜麻色のさらさらな髪、くっきりとした海のような蒼色の瞳。その姿は、どこをとっても完璧だった。
「ご紹介にあずかりました、ルヴェリエ家のセレスティア・ルヴェリエです。どうか、よろしくお願いします。」
綺麗にお辞儀をする彼女。姿勢を戻したあとは、真っ直ぐで強い瞳でこちらを見つめてきた。
「よろしくお願いします、レオン様。」
会場は、拍手であふれた。そこにはさっきまでの疑いはなく、聖女と王子の婚約を祝福するものだった。
会場が祝福に包まれたあと、式典は終わり、在学生も参加する入学パーティーとなった。初めての社交の場――。僕はとても緊張していた。
「レオン様。改めて、セレスティアです。これから、よろしくお願いします。」
「こちらこそ。聖女のあなたと婚約できてとても光栄です。」
セレスティアは、少し困ったように笑った。
「聖女……。私のことは“聖女”としてではなく1人の人間として関わってほしいのです。レオン様も、殿下ではなく、“レオン様”でいてください。」
1人の人間……。セレスティアのことを好きになれるだろうか。彼女は完璧だ。性格も優しそうな感じがにじみ出ているし、物腰も柔らかい。
前世――莉亜のことは忘れて、セレスティアのことを好きになろう。彼女の期待に応えるために――。
それからは、婚約者として彼女をエスコートしながら回った。名前は知ってるけど初めて会う人ばかりで、気持ちが疲れた。その人の家庭事情とかを把握しているから、少し罪悪感が出てくる。貴族というものは、とても厄介だ。常に階級を意識しながら行動しなければならない。そして、敵意や嫉妬が多い。ご令嬢たちは、僕に対しては笑顔で振る舞っているのに、セレスティアと話している時は目が笑っていない。王子と結婚することに対する嫉妬。セレスティアは無防備で気づいていなかったけど、僕はとても心が傷んだ。




