表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

出会い

12年前の雨の日だった。

雷がとどろいていた。

これは事故だった。

突如、車は暴走し、電柱にぶつかった。

中川両親は即死、後部座席にいた娘・妙子はシートベルトをつけていて無事だった。

ある者はこの光景をほくそ笑んで眺めていた。

月州共和国首都「月都げつと」。

セレスとミリアは聖騎士団に属する聖騎士だ。

聖騎士団はシベリウス教の宗教的アイデンティティーのようなものだ。

これはシベリウス教の特徴で、宗教と軍事が結合しているのだ。

聖騎士団は主に悪魔と戦うために存在している。

そして月花基地を本部としている。

セレスとミリアは兄と妹の関係だった。

セレスはジャージでランニングして来ていた。

セレスの髪は金色だった。

セレスは基地に戻ってきていた。

「ふう……よく走ったものだ。今日のランニングはこれで十分だろう。さて、もう昼だ。食堂で弁当でも食べるか」

そこに一人のきれいな女性が来た。

「ランニング、ご苦労様。どうするの? これからシャワーを浴びる? それともご飯にする?」

セレスはミリアが差し出したタオルを受け取る。

「先にご飯にするよ。シャワーはその後で入りたい」

「じゃあ、食堂に行きましょう」

セレスとミリアが歩き出したとき、ふとセレスのスマホが鳴った。

セレスはスマホを取る。

着信は友人の中川からのものだった。

セレスは顔をしかめる。

「こんな昼にいったい何の用だ? はい、もしもし?」

セレスが電話に出ると。

「あの、ファーゼンハイトさんですか?」

「? あなたは?」

セレスの耳に響いたのは友人の声ではなかった。

それは年配の女性の声だった。

「失礼しました。私は中川 健一けんいちの母です。とても申しにくいことなのですが、先日健一が事故で他界しました」

「え?」

セレスは一時我を疑った。

いったい、何を言われたのかわからない。

「つまり、交通事故で健一は死亡いたしました」

「健一が、死んだ?」

あまりに早すぎる死だ。

セレスは呆然とした。

セレスはリアリティーを感じ取ることができなかった。

「健一と今まで仲良くしてくれて、ありがとうございました。葬儀の日程は後程お伝えいたします。失礼します」

スマホの通話が切れた。

「? どうしたの、兄さん?」

「ミリア……大変なことになった」

「大変?」

「健一が事故で死んだ」

「え? 健一さんが?」

ミリアは驚きの表情を浮かべた。

ミリアも思考が一瞬止まったようだ。

「そんな……まだ22歳だったのに?」

健一はセレスの親友だ。

そして、ミリアとも面識があった。

セレスは今年で22歳。

ミリアは20歳だ。

中川 健一は学生の時に、美和みわ みどりとのあいだに一人の子供をもうけている。

「ああ、あまりに若すぎる死だ」


セレスは喪服に着替えて中川 健一の自宅に行った。

健一は仏教徒であったため、葬儀は仏教式で行われる。

月州では人は必ず、何らかの宗教に入らねばならない。

と同時に宗教で人間が区分される。

セレスとミリアが中川家の親族に一通りあいさつすると、顔見知りの人物と出会った。

「おまえ、立花か? そっちのおまえは牧野か?」

「「ああ、そうさ。よくわかったね」

「久しぶりってことかい? 高校を卒業して以来だな」

三人は死んだ中川のことで話をした。

立花は新聞配達の仕事をしていて、牧野は工場で働いているらしい。

セレスは二人と別れると、ふと、ひとりの女の子が目に入った。

それがセレスと妙子の初めての出会いだった。

「君、どうしたの?」

セレスが優しく話しかける。

「……」

「君の名前は?」

「妙子」

「妙子? 健一の娘か? いくつだい?」

「6歳」

「そうか、つまり小学生だね」

「うん」

妙子は下を向いてさびしそうな表情をしていた。

「あら。兄さん、その子は?」

「この子は妙子。中川 妙子。 健一の娘だ」

「健一さんの?」

セレスはその後、妙子が身寄りがないため孤児院に入れられることを知った。

親族は妙子にあまりいい感情を抱いていないようだ。

セレスは妙子は悪くなく、周囲の人間に問題があると思った。

「なあ、妙子?」

「なあに?」

「俺の娘になる気はないか?」

この言葉を当時の妙子は信じられないというような表情で聞いていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ