オープニング
その日、妙子・中川・ファーゼンハイト(Taeko Nakagawa-Faadzenheit)は18歳だった。
今日は妙子が修道院に入る日だった。
修道院付属の天光教会で入会が行われた。
妙子には6歳のころから育ててくれた養父がいた。
彼の名はセレス・ファーゼンハイト(Seles Faadzenheit)。
青い騎士用の服を着た男性である。
彼はメガネをかけている。
同じく妙子には養母がおり、彼女の名はミリア・ファーゼンハイト(Miria Faadzenheit)と言った。
彼女は白い女性用スーツを着ていた。
せレスとミリアの二人は入会式に出席していた。
入会式では志願者たちは白い襟もとに青い修道服を着ていた。
志願者たちからは緊張がうかがえた。
妙子はそばかすの顔に、左右に髪を縛っていた。
かわいらしいが、あまり美人とは言えない。
パイプオルガンが奏でられた。
教会内部はパイプオルガンの音がよく反響するようにできている。
しばらくして、教会の奥に並んで10人の志願者たちはいっせいに合唱し出した。
これは讃美歌だった。
パイプオルガンの音色と、讃美歌が見事に合わさった。
すばらしい音が教会内でこだました。
セレスとミリアはそれを聞いて音色に引きつけられた。
セレスは妙子を見ていた。
妙子はセレスの自慢の娘だ。
セレスは今日この日を、すがすがしい気分で迎えた。
それは今日から妙子と別々に暮らすということだからだ。
自分の子供が自分の手を離れて独立していく……それはすべての親が体験することだ。
セレスは優しいまなざしで妙子を見つめた。
パイプオルガンの音が止まり、妙子たちも讃美歌を歌うのをやめた。
静寂と緊張が教会を支配する。
女性の牧師が前に出て、10人の志願者たちに問いかける。
「あなたがたは神を信じますか? 主にして、唯一、父なる神を信じますか?」
これは誓いであり、信仰告白でもあった。
少女たちは全員が息を合わせて。
「はい、私たちは神を信じます。どのような災厄が訪れても、私たちは主の導きに従って歩み続けます。主が私たちを愛してくださるように、私たちも主を愛します」
シベリウス教は新しく国を興した。
それが「月州共和国」だった。
政治はシベリウス主義政党「労働党」によって支配された。
月州はまず「月州共和国憲法」が父たちによって創られ、その後各都道府県に送付され、各々の議会で承認された。
シベリウス教は月州成立以前を「無道時代」と呼んで否定的にとらえた。
この物語は、月州を舞台としている。




