第40話:沈黙の断罪者、あるいは神殺しの産声
絶対王が隠蔽した「真実」を手にしたショウたち。
しかし、壁を物理的に破壊した衝撃は、王都の地下深く、数千年の眠りについていた太古の自律防衛機構を呼び覚ましました。
重厚な足音が、四方八方の通路から反響して聞こえてくる。それは規則正しく、それでいて生物的な重みを一切感じさせない、冷徹な足音だった。
だが、暗闇の向こうから姿を現したのは、王国兵でも、凶暴な魔物でもなかった。
「……壁、なのか? あれは」
ゼスタが、その光景を信じられないといった面持ちで、呆然と呟く。
現れたのは、巨大な石壁そのものだった。いや、正確には壁の下部のブロックが足のようになって音を立てて歩いているのだ。
石とも金属ともつかない正方形のブロックが、一分の隙もなく精密に組み合わされた、顔も手も持たない立方体の怪物。ゴーレムの原種とも、あるいは移動する要塞とも呼ぶべきその異形が、通路の幅一杯に広がり、逃げ場を塞ぐようにして次々と集まってくる。
「っ……自動防衛機構か!? 皆さん、下がってください!」
エリオが杖を構えるが、俺は直感的に敵ではないと感じ取った。この機械たちから放たれているのは、冷酷な殺意ではなく、長い年月を経て持ち主を探し当てるような、どこか切実なまでの「待機」の意思だ。
「待ってください! 俺たちは敵じゃありません!」
俺の声が、冷たい地下広間に反響し、幾重にも重なって消えていく。
すると、迫りくる歩く壁たちは、ピタリと動きを止めた。数秒の重苦しい、耳が痛くなるほどの沈黙。エリオが固唾を呑んで見守る中、俺の目の前にある、ブロックの表面に、ぼんやりと青白く光る「手の形をした紋章」が浮かび上がった。
「……手を置け、ということでしょうか」
「ショウ、罠かもしれん。私が代わろう」
ショーベルが警告するように剣の柄を鳴らすが、俺は首を振った。俺の服に付与した【概念:探知】は、この無機質なブロックから、主を迎える執事のような、不思議な共鳴を感じ取っていた。
俺は恐る恐る、明滅する光の紋章に右手を重ねた。
冷たいはずの石の表面が、俺の手の平の体温を優しく吸い込むように柔らかく明滅する。
『――個体識別完了。生体波動、精神パターンを照合……認証しました。おかえりなさい』
「喋った……!? 古代の魔法言語じゃないぞ!」
ゼスタが声を荒らげる。
直後、ブロックの表面に、現代の文字とは異なる幾何学的な図形が、二つの選択肢を形作った。
『管理者権限を確認。最終フェーズに移行します。――計画を実行しますか?』
【実行する】 【実行しない】
無機質な、それでいて全てを見透かしたような問いを前に、俺の指先がかすかに震える。
「計画……? 一体、何の計画だ。俺はただ、歴史の真実を調べに来ただけで――」
俺の問いに、壁のゴーレムは迷いのない、冷徹な合成音で答えた。
『――プロジェクト:デオサイド。「神殺し計画」です』
「神殺し……!?」
その言葉が発せられた瞬間、エリオは膝をつき、ショーベルとゼスタは息を呑んだまま石像のように硬直した。
神によって作られ、神によって管理されているはずの世界。その底の底で、神を殺し、理を解体するための計画が進められていたのだ。
29歳、成人男性。
平和を仕立て直すために来たはずの俺の手のひらが、神そのものを破壊するためのスイッチに触れていた。
「……この計画の内容、今ここで詳しく知ることはできるのか?」
『実行が選択されない限り、詳細は秘匿されます。なぜなら神に知られてしまうからです。……詳しく知りたい場合は封印の書に書かれています』
「封印の書?」
俺たちは、あまりにも巨大で不吉な選択肢の前に、立ち尽くすしかなかった。
第40話をお読みいただきありがとうございました!
ついに明らかになった地下遺跡の真の目的。それは「神殺し」という、世界そのものを敵に回す禁忌の計画でした。
物語はついに、取り返しのつかない運命の分岐点へと差し掛かります。
いつも応援ありがとうございます!次回、お楽しみに!
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※AIとの共同執筆作品となります。




