エクムント。
石に絵を描いた後に、私は裏庭に出て石をトレイにのせて並べ、天日で乾かしていた。
そこにカーティス様が現れ、いい話を持って来てくださった。
「ウナギを一匹下さるんですか? 私に?」
「はい、エイデン卿が譲ってくれるそうです。
ティア様伝てにリナさんがウナギが好きなようだと聞いたらしくて」
やった〜〜! 綺麗な川だし、泥抜き三日くらいで食べられそう。
「ありがとうございます!」
「泥抜き後、ご自分で捌かれますか? 料理長にお願いしますか?」
「自分のウナギの為に料理長の手を煩わせる訳にはいかないので、私は自分でやります」
「ウナギの血には毒があるようですが、大丈夫ですか?」
「昔、捌いていたので大丈夫です」
前世でだけど。
「心配なので、その時は見ていてもいいですか?」
「は、はい、どうぞ」
──そして三日後。
私はカーティス様に見守られながら、ウナギを捌いた。
ティア様特製のタレが厨房にあったので、BBQセットと一緒に借りた。
網に脂を軽く塗る。
ウナギにタレをつけ、網の上で身から焼く。
皮目から先に焼くと皮が縮んで うなぎが反ってしまうから。
一方で、土鍋ではしっかりと米も炊く。
ウナギを何度かひっくり返しつつ、その都度、ハケでタレを塗る。
う〜〜ん、蒲焼きのタレが……凶悪な程美味しそうな匂いをさせる〜〜!
炊き上がったご飯にカットしたウナギを乗せて、鰻丼の完成!
「カーティス様もどうぞ、二人前作りましたので」
見守り係のカーティス様にもあげた。
「あ、それ、ティア様の分ではなかったのですか?」
「いいえ、カーティス様の分ですよ、ティア様はエイデン卿にいただくとしたら、ギル様と一緒に食べられると思うので」
エイデン卿も残りのウナギを4匹全部食べるとも思えない。
きっと主にも分けるでしょう。
「そうでしたか、あなたの分を減らしてしまい、申し訳ないのですが」
「ふふ、私が太らないように半分食べてください」
「あなたはとても細いので、大丈夫だと思いますが、では、せっかくなのでいただきます」
その日のランチとして、私はカーティス様と美味しくウナギをいただいた。
天然ウナギの身はふわっとほくほくしてて本当に美味しかった。
厨房に道具を返しに行くと、ティア様は料理長の手で捌かれたウナギをギル様やエイデン卿と一緒に夕食として屋上で夕陽を見ながら食べられるそうだ。
夕食の配膳をする私が主より先に食べてしまったわ。
味見係をしたんだと思おう。
* * *
ギル様の誕生日前日になった。
朝のライリーのお城の庭園の空気は清々しい。
「ん〜〜っ!」
祭壇のお掃除を終えた私は、庭園で思いっきり伸びをしていた。
今日も私はカーティス様に貰った例の百合のリボンと、両耳には水色のパールのイヤリングを身に着けている。
この二つのパールのイヤリングは海で自分で見つけた物とカーティス様にいただいた物で出来ている。
イヤリングとして出来上がったばかりなのを耳に飾った。
そこまで派手じゃないし、仕事中につけていても多分怒られはしないと思う。
ふと、見知らぬ黒髪の男性が城の庭園でキョロキョロとしているのを見つけた。
朝から何をしているんだろうと思って、私は声をかけた。
「あの……何かお探しですか?」
「あ、怪しい者ではありません、カーティスを知りませんか?」
あら、カーティス様のお知り合い?
「カーティス卿は竜騎士の方達と少し前にワイバーンを朝のお散歩をさせに飛んで行きました。
空を見ていたら、そのうち姿が見えるかと……」
「あ、ああ。そうですか」
彼の首にあるクラバットの留め具の装飾が目についた。
「あら、あなたのクラバットの模様……その百合と剣は家紋ですか?」
「ええ、私はカーティス・アルビオルの弟で、エクムント・アルビオルと申します」
「カーティス卿の! では……あの、幼馴染さんの病気は治りましたか?」
「──ああ、そうか、その百合のリボン、貴女があの堅物の兄の……
ええ、おかげさまで、あのエクストラポーションとやらはたいした効果でした」
兄の何!?
──で、でも幼馴染さんは無事復活したみたいで良かった!
流石ティア様の作ったポーションは素晴らしい!
それは、それとして……
「ところで……何で婚約者に贈る指輪の石に悩んでるとかお兄様に嘘を吐いたんですか?」
「どうせあの優秀な兄のことですし、俺のしょうもない嘘なんて見抜いていると思ったんですよ、でも騙されたふりでも、なんか金目の物でもくれるかもって、本当に宝石を持って来てくれて驚いたんですが」
「嘘だとバレるなら正直に幼馴染のお薬代欲しいって言えば良かったのでは?」
「これでも一応恋人はいるんで……、浮気相手だとか変な風に婚約者候補に伝わったら、誤解されてダメになるかもしれないじゃないですか」
ああ、そういう……。
「バクチでお金をスッたようですが、肝心の婚約者候補さんへ贈る指輪はあるんですか?」
「う……っ」
無いのか……。
「私、最近納品があって思い出したのですが、このイヤリングの水色のパール。
ライリーの海で貝を獲ったら中に入っていたんです、レインボーパールと言う物です。
海に潜って探してみては?
自分で採ってきた真珠で作った婚約指輪って素敵だと思いますよ」
「な、なるほど、ライリーの海にそんな貝が……。今から探しに行って来ます!
すみませんが、この手紙を兄に渡しておいていただけますか?」
弟さんに手紙を手渡された。
「はい! あの! 手紙を渡すのはいいのですが、エクムントさんは水着をお持ちですか!?」
「男ですが、下着で潜るのはまずいですかね?」
海にパンイチで!? 騎士の家の人が!?
「ライリーの売店に水着が売っていますよ」
「買って来ます! ありがとうございました! 親切なお嬢さん!」
エクムントさんは場内の売店に向かって走って行った。
良かった……水着を着て潜ってくれるみたいだわ。
リナがラインハート卿に貰ったパールはお守り袋に入れているらしい。




