お酒と小悪魔。
「今日の服もあまり見ないデザインですが、可愛いらしいですね」
「カーティス様、ありがとうございます。ティア様が贈って下さったのです」
カーティス様があの女から離れて、私の側に来てくれた。
私は自分の服を、スカート部分を改めて見た。
そう言えば、ピンタックの……前がボタンで開くワンピースはこちらではあまり見ないな。レースアップならよく見るけれど。
前世では某有名ブランドの服で見てた感じのデザイン。
フリフリを着る勇気は無くて、でも可愛いからカタログだけ集めたり……。
リリアーナ姫の容姿はお人形のように可愛いくて可憐なお姫様だから、いろんな服が似合う。
あの、シルクレラ商会のミリアン・アペール嬢はカーティス様に何を贈ったのかな?
箱に入っていて見れないし、ここで開封する気配がない。
組み紐じゃ勝てないかしら……。
「あ、君、これを私の部屋に届けておいてくれ」
「かしこまりました」
カーティス様はあの女性からの贈り物を、たまたま側を通りかかった執事に任せた。
「私もお酒を飲もうかな……」
近くにいる人がワインを飲んでいたので、私は変な思考に囚われる前に、酔ってしまおうかと思った。
「飲むならほどほどに、多分明日は草スキーですよ、坊ちゃんが行くと張り切っていて、セレスティアナ様も同行されるらしいですし」
あら……。
「草スキー……、お嬢様……いえ、ティア様まで行かれるなら確かに……」
泥酔は出来ないな。
と、思いつつもお酒に手が伸びて、私はワインを飲んだ。
「それとね、ヤギに草を食べさせてあげるから……」
ウィルバート坊ちゃんの声がまた聞こえた。
「ヤギ……?」
「あのシルクレラ商会からはシルクの他にヤギを五頭、坊ちゃんに贈られたようですよ」
「ヤギ……、ああ、あの女性、坊ちゃまにヤギを贈っていたのですね」
流石に今日の主役の坊ちゃまへの贈り物をカーティス様の分より先に渡す分別くらいはあったようね……。
この場で見ないはずだ、贈り物が家畜とかヤギなら城の外にいるだろう。
昔、アニメで見たな、羊飼いの少年が……スイスの山でヤギの放牧を……。
いや、羊飼いではなく、あれは……ヤギ飼いだったわ。
連れてたのはヤギだもん、ヤギ使い……。
ヤギのお乳って美味しいのかな? 匂いが強いと聞いた事があるような……。
そう言えば、ヤギのミルクは飲んだ事がない。
「リナさん、大丈夫ですか? 目が座って来ていますよ」
あ、いつのまにか、ワイングラス三杯分を飲んでいたのね、私……。
「手が勝手に……、ほぼ無意識に……」
「あまりお酒に強くはなさそうですので、そろそろ水かジュースにしましょうね」
カーティス様が私の手の中にあるワインを葡萄ジュースに変えた。
「ジュースに変えましたね……私を子供だと思っていますか?」
「いえ、そんな事はありません、明日の事を考えたまでです。
貴方は立派なレディですとも」
「そうです……もう二十歳を過ぎたんです〜〜合法でお酒が飲めます」
私の頭はゆらゆらと揺れ出した。
「あ、リナさん、酔ってますね?」
「酔ってません……」
「酔っ払いは皆、そう言うのです。ほら、体がゆらゆら揺れていますよ」
「これはぁ、楽師の音楽に合わせて、リズムのって、体を揺らしててぇ、わざとなんでぇ〜〜」
誕生日会なのでここには楽師も呼ばれている。
「まあ、リナ、酔ってるのね」
目の前に天使降臨! ここがヘブンかぁ〜〜。
「ティア様は今日も最高に美しいですぅ〜〜」
「あらあら、リナったら、ゴキゲンかしら?」
「リナさんの様子が若干、怪しいので部屋で休ませた方がいいかもしれません」
あら、カーティスさまったら、なにを……
「私はまだ……戦えます……」
「ふふ、リナったら、誰と戦うつもりなの?
物語に出てくる戦士みたいな事を言って」
ティア様がクスクス笑った。笑顔きゃわいい……。
「ほら、見てください、セレスティアナ様、リナさんの体がゆらゆら揺れているんですよ」
「……本当。大丈夫かしら? ワインを飲んだのね?」
「今持たせているのは葡萄ジュースですが、既にワインを三杯くらいは飲んでいます」
「あら、かわいい。三杯で酔ってしまったのね。
カーティス、リナを部屋まで送ってあげてくれるかしら?」
「はい、仰せのままに」
「私はティア様のお側にいるんですぅ……」
「はいはい、また明日ね、今日はもう休んでいいから」
────…………。
そこら辺から、私は……記憶を無くした。
気がついたら部屋のベッドの上で寝ていた。
朝食は、リクエストで味噌汁をいただいた。
「リナ、昨日はかわいかったわね」
「え? 服の事ですか?」
「服も可愛いけど、あなたが酔ってて、ゆらゆら揺れてて面白いなって」
「ああ〜〜! 失態です。忘れてください!」
「今日は弟の草スキーの見守り係だけど、大丈夫? 辛ければ休んでても良いわよ」
「いいえ! ティア様に日傘をさすのは私の仕事なので!」
夏の日差しからティア様を守らないと。
「あ、この日焼け止めを塗って行ってね」
「今、お塗りします」
「リナ、これはあなた自身によ、私の方はもう塗っているから」
出遅れた!
「誰がティア様の体にサンオイルを塗ったんですか!?」
「顔とか腕は自分で塗ったし、他はギルバートが喜んで首の後ろとかを塗ってくれたけど」
「なんだ、夫なら仕方ないですね!」
前世、昔の漫画で見たやつが脳裏に浮かんだ。
海とかで小悪魔系女子が、「サンオイル塗ってくれない?」って好きな男の子に言って、ドキドキさせるやつ。
「ティア様が、ギルバート様にサンオイルを塗って欲しいとお願いしたんですか?」
「いいえ、自分で塗っていたら手伝うと、自主的に」
あらぁ〜〜、ちょっとだけえっちですね。
まあ、でも背中太ももあたりじゃなくて、首の後ろあたりならセーフ?
「ふふふ。今、リナが何を考えているか、私には分かるわよ」
ティア様がまた悪戯っぽく笑った。
「え!?」
「今度プール開きするから、ほらライリーの城の庭園にあるでしょ、あそこ。
なのでそのプールサイドで休む時、カーティスに背中あたりにサンオイル塗ってくれない? って、聞いてみたら?」
「そっ、そんなえっちな事! 頼めませんよ!」
「私、すっごく見たいわ、小悪魔になったリナが」
クスクスと笑うティア様。
「無理ですよ! それはティア様がギルバート様にすれば良いですよ!」
「既に夫になった人にやってもインパクトが無いのよ、まだそこまで行ってない人同士でやるのが面白い訳で」
「も〜、面白がらないで下さい〜〜」
「あらあら、お顔が真っ赤になっちゃったわね、かわいい〜〜」
私は思わず脱力した。




