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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
能力邂逅編
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五一話 ソウル・ハック


白銀の稲妻を全身に走らせるヒロム。


そしてヒロムの姿と言葉にガイたちはどういう事なのかわからないままでいた。

「一体何が……」


理解しようとするガイたちを他所にバッツはため息をつくとヒロムに言い放つ。



「新しい姿?

何を言うかと思えば……ただ全身に纏えるようになっただけだろ?

それに「ソウル・ハック」だったか?

大層な名前つけてるが、そこまで大きな変化はないぞ?」


ヒロムの姿、そして言葉を嘲笑うかのようにバッツは次々に言葉を並べるが、それを聞いたヒロムは何の反応も見せない。


それどころか首を鳴らし、さらに指の関節を鳴らしながらバッツを見ていた。


「……話はそれだけか?」


「あ?」


「長々と中身のない話される身にもなれよ……

無駄に口数増やせばいいってもんじゃねぇ」


「だが威勢だけの小僧の言葉には何もない。

勢いだけ……」


「試すか?」


バッツが何かを言い終えるよりも先にヒロムはバッツの背後に現れる。


ヒロムが動いた様気配もなく、音もなくバッツの背後に現れている。

バッツどころかそれを見ていたガイたちも自我を失って暴走している「ハザード・チルドレン」も反応出来なかった。


ヒロムが背後に現れたことに遅れて気づいたバッツは振り返ろうとしたが、そうしようとした時には体に痛みが走り、そして勢いよく吹き飛ばされる。


「……悪い。

あまりにのんびりしてるから余裕なのかと思ったよ」


バッツは勢いよく吹き飛ぶが、何とか立ち上がると構え、ヒロムに攻撃しようと走り出した。


「ただのまぐれで……」


バッツが迫る中、ヒロムは音もなく消え、それと同時にバッツが地面に叩きつけられ、さらに幾度となく衝撃波にも似た何かがバッツを襲い、地面へと押しつける。


「ぬおおお!!」



そんなもんか、とバッツの背後に現れたヒロムが拳をかざすと、バッツは勢いよく吹き飛び、地面を何度も転がっていく。



「スゴい……」


目の前で起きている光景に言葉を奪われるガイとイクト、そしてカルラはヒロムの強さに驚く以外のことが出来なかった。


「あああ!!」


だがそんなガイたちを気にすることもなく自我を失って暴走している「ハザード・チルドレン」は走り、距離を詰めるように迫っていた。


「……うるせぇな」


ヒロムはまたしても消えると「ハザード・チルドレン」の前に現れ、ヒロムが現れると同時に彼らは大きく吹き飛び、体は宙へと浮いてしまう。


「……アイリス」



ヒロムが指を鳴らすと同時にヒロムの前に一人の精霊が現れる。



腰まである紺色の長い髪には毛先だけ紫色に変色しており、ノースリーブのように袖のない服、スカートの上には薄紫色の腰布を巻いており、その手には槍を持っていた。



その少女の名はアイリス、今ヒロムが名を呼んだ少女こそ彼女だ。


「……うるせぇから黙らせろ」


「わかりました」


アイリスはヒロムに言われると槍を大きく振り回し、「ハザード・チルドレン」の彼らが地面に落下するとほぼ同じタイミングで槍を地面に突き刺した。



「……アブソリュート・ゼロ」



アイリスが小さな声で呟くと、「ハザード・チルドレン」は音もなく一瞬で全身が凍結し、氷に覆われていく。



目の前で起きているのは現実なのか?

目を疑うしかないガイとイクトの視線に気づいたアイリスは二人を見ると優しく微笑む。


「安心してください。

彼らはもう動けません」


「あ、ああ……」


「ふざけるなよぉ……」


バッツは起き上がると魔力を全身に纏い、そして自身の周囲に無数の銃口を出現させる。


その光景に見覚えのあるガイとイクトはある人物のある技を頭に浮かべる。


「ソラの……」


「インフィニティ・フレア・バレット……!!」


「……」


「蜂の巣になれ……

ミストバレット・ガン・パレード!!」


バッツと無数の銃口を紫色の煙が覆い隠し、その煙の中から次々に弾丸が飛び出し、ヒロムに襲いかかる。


が、ヒロムはそれを避けるわけでもなく、ただ立ったまた弾丸を見ていた。



「死にたいのか?ええ?」


「……遅すぎる」


ヒロムが大きく右腕を横に振り払うと、迫り来る弾丸はすべて破壊され、そして無数の銃口は砕けていく。


「な……」


「今ので放たれた弾丸は二百程度……

そのすべてが目で見て追える程度の速度……遅すぎるんだよ」


「だったらこれはどうかな?」


するとバッツの背中に黒い大きな翼が現れ、そしてバッツの両手に纏われた魔力は刃のように鋭くなる。


バッツはすかさず空高くに飛翔し、見下すようにヒロムを見るが、ヒロムは何の焦りも見せずに平然としている。



「逃げんのか?

勝てないとわかったから上から姑息な手を使うしかないのか?」


「あまりオレを挑発するなよ?

オレは……」


バッツはまたしても何かを言おうとしたが、その途中、背中に激痛が走る。


恐る恐る背中を見ると、視界にまず入ったのは空高くにいるはずの自分の背後にいるヒロム、そしてそのヒロムが自身の片翼を引きちぎっていたのだ。


両手に纏う魔力も気づけば消滅していた。


「な……」


「こんなところに飛んでもオレは追いつける」


「ふざけ……」



バッツは回転蹴りをくらわせようとするが、ヒロムが動くと同時にバッツは地面に叩き落とされ、そのバッツにヒロムが追いつくと、蹴りが放たれ、それを受けたバッツが地面に叩きつけられる。


「があああ!!」


「遅すぎる……」


バッツに攻撃したヒロムは音もなく消えると、ガイたちのもとへと現れる。


バッツを圧倒したその強さに唖然とするガイたちを見るとヒロムは不思議そうな顔をした。


「どうした?」


「オマエ、それって……」


「オレの新しい姿だ」


「もしかして能力か?」



違うけど、とイクトの言葉を即答で否定するとヒロムは説明しようとするが、面倒になったのかそれをやめた。


が、説明をしてほしいと思うガイとイクトはそうさせようと視線を送るが、ヒロムはただ無視した。


「気づいてるなら教えろよ、大将〜」


「……簡単に説明できることじゃないから面倒い」


「ヒロム、それはどういう……」


ヒロムの言葉について問おうとするガイの言葉を遮るかのようにバッツは起き上がり、こちらを見ながら笑いだした。


バッツの身に纏うその鎧はヒロムの度重なる攻撃によりヒビが入り、今にも壊れそうになっていた。


「素晴らしい……Excellent……いや、Perfect!!

その力……あの時の白銀の魔力だな……?

まさか「ハザード」を糧にするとはな……」


「やっぱり「狂鬼」との戦いを見てやがったな……」




「ああ、当たり前だろ?

オマエの成長こそオレの目的のために必要なんだからな」


「……それはそこの彼らのためか?

それとも別の何かのためか?」


ヒロムはどこか不満があるようにバッツに向けて問うが、バッツは拍手をすると話題を逸らすように語り始めた。



「オマエはわかっていないようだな。

自分の力の可能性を……無限の可能性を!!」


「無限の可能性……?」


「そうだ……そしてそれがそこの雨月ガイや黒川イクト、そして相馬ソラや紅月シオンをより強くさせる」


「……訳わかんねぇな」


バッツが何を言いたいのかわからないヒロムはこれ以上の話は聞く気は無いとして、拳を強く握り構える。


が、その瞬間、全身に走る白銀の稲妻が消えてしまう。


「……」


「やっぱりあったなぁ……タイムリミットが。

せいぜい三分か」


「そんな……」



ヒロムが元の状態になったことで不安を感じるイクトだが、それとは正反対にガイは「修羅」の力を大きくして刀を構えた。


ガイの瞳にはやる気が満ちており、そして闘志が体から溢れ出ていた。


「……何のつもりだ?」


ガイの行動に疑問を抱くバッツは首を傾げながら聞くが、ガイは返事をしなかった。


それどころか、ガイはバッツに向けて殺気を放ち、そして刀でバッツの命を断ち切ろうと攻撃する機会を窺っている。


「怖いねぇ……」


「ヒロムがここまでやったんだ。

だからこそここからはオレがやる!!」


「あぁあ……萎えるな」


バッツが指を鳴らすとアイリスにより全身が凍結した「ハザード・チルドレン」が煙となって消え、バッツ自身の鎧のヒビが消えていく。


「ハザード・チルドレン」が消えたことに関してはガイもイクトも驚かなかったが、バッツの鎧が直ったのだけは二人とも驚いていた。




ヒロムが追い込み与えたダメージが消えたのだ。

音もなく、ただ指を鳴らしただけで何も無かったかのように……



「ふざけてるだろ……!!」


「……ヒロムの攻撃も無駄ってか?」


「この程度で死ぬオレじゃあない。

オマエらの足掻きも何も感じない。

オレにとってオマエらの行動なんて大したことないんだよ」


それに、とバッツはヒロムを見つめ、少しの間を置くとヒロムに告げる。


「……もっと強くならなきゃ守りたいものも守れずに終わるぜ?」


「何……?」


「次に会う時までに強くなれよ〜?

じゃあな……」


「逃がすか!!」


「待て!!」



煙となって消えようとするバッツに対してガイとイクトは手に持つ武器を強く握ると走り、逃さぬように攻撃を放つが、バッツの体は煙となって二人の攻撃がすり抜けてしまう。



「!!」


「慌てんなよ〜?

オレの目的のためにもっと強くなれよ」


「最後に聞かせろ」


逃げようとするバッツに対してヒロムは一つだけ問い詰める。


「オマエの目的はトウマのためのものか?

それとも別のものか?」



「……それくらいは答えてやるかぁ。

オレの愛する者の為だよ」


「……」


さらばだ、と煙となってバッツは消えてしまう。


最後の問いに対する答えを聞いたヒロムは思うところがあるのか下を向いてしまう。


それを見たカルラはヒロムに優しく声をかける。


「大丈夫だよ。

オレが守る」


「……ああ。

けど……もうこれでアイツの正体はわかった」



間違いないのか、とガイはヒロムに確かめるように言うが、ヒロムは迷うことなく頷く。


「……ただアイツがバッツとして動く理由がわからない」


「まぁま、大将。

確信が得られたなら大将の頭でなら答えも導けるだろ」


「……だといいがな。

カルラ、頼まれてくれるか?」


「任せろっすよ。

とりあえず……」


「それと、一つだけ頼みがある」


ヒロムはカルラにあることを伝え、それを聞いたカルラは少しだけ意外そうな反応を見せる。


「なるほど……考えましたね」


「すまない。

面倒を押しつけて……」


「いいっすよ。

これからはじゃんじゃん頼ってください」


「で、オレたちはどうする?」


ガイに訊かれ、どうするか悩むのかと思ったが、ヒロムは迷うことなく答えた。


「オレは屋敷に戻る。

少し……厄介事を片付ける」


「手伝おうか、大将?」


興味津々で話を聞こうとするイクトに反してヒロムは面倒くさそうにため息をつき、そしてイクトの申し出を断った。


「いや……さすがのイクトでも無理だろうからな」


「えっ、そんなやばいの?」


「……色んな意味でな。

お姫さんたちの守りも大変なんだよ……」


「……」

(どうせイクトに来られたらややこしいことされるってわかってるからだろう……)


イクトの申し出を断ったヒロムの考えを推測したガイはヒロムらしいと思うと思わず小さなため息をついた。


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