番外編2 後編〜ハナヨメオヤコ〜
随分前の小説の続きです。
式が順調に進んでいった。途中でお色直しで見たことない民族衣装に身を包んでいたり、男女逆転の服で登場してたり、そのまま何故かゲーム大会が始まって王子とシンデレラが無双してたりなんてのはもう突っ込まない。本人達が楽しそうならいい。
ブーケトスの時間になり若い子達がキャッチするためのアップを始めた。私は勿論遠くの席に座ったままだ。
「それじゃあ投げるわよ!そーれぇぇぇぇぇい!!!!」
白いタキシードに身を包んだ花嫁が、勇ましいかけ声と共に花束を投げた。投げた、というよりも真上に投球したくらいの勢いだ。
そしてその花束を目がけてシンデレラが跳んだ。……よかった、この子も結婚する気があったのか……と思ってたら、シンデレラは腕を振り下ろし全力でアタックをした。
そしてその花束は後ろで待っていた若い子達ではなく、遠くで見守っていた私の顔面に落ちたのだった。
「よっしゃー!大成功!!」
「いえーい!!」
「貴女の言う通り、服を変えて投げやすくするのは大正解でしたね」
娘はシンデレラと共に、隣にいるウエディングドレス姿の新婦へハイタッチした。
「おまえ達、一体これはどういう……」
「お義母さま、これが私たちの気持ちですわっ!」
娘が食い気味に答える。
「私達はお義母さまに拾ってもらって、ここまで大きくなれました!そして、私は今日、結婚します!シンデレラもそのうち結婚予定です!二人ともしっかり幸せになりますわ!
ですから、次はお義母さまの番ですわ!」
娘が駆け寄って、花束と共に私の手をしっかり握る。私は笑みを浮かべるしかなかった。
「……お前があいつの事を知ってるとはねぇ。誰に聞いたんだい全く」
「ふふふ、お酒の席で情報を聞き出すのは私の特技ですからっ♪」
つまり酔った私が零したのだろう。この娘には敵わない。
「まあ今日は私の結婚式ですので、今は全力で私の晴れ姿を見て下さいね!彼のことは、家に帰ってから作戦会議しましょう」
娘はそう宣言してから、新郎の元へ戻って行った。
そして式は再開された。
そして式が終わり、家に帰ってきた。
娘は今日からは新居で暮らす。花嫁修業は結婚が決まる前からやっていたので、家事は安心だ。私は帰りはいつもの馬車で帰ってきたが、シンデレラと王子は2人で歩くと言うので放っておいた。王子にもダイエットは必要だろう。
「ただいまー」
「あら、お帰り……ん?」
娘が帰ってきた。あまりにも今まで通りだったのでいつも通りに返事したが、この子は今日から新居で暮らすはずだ。
「作戦会議するから今日は帰ってきた!」
「いや、そんなの何も今日やらなくても……来週とかでいいじゃない」
「いやいや!いつまた現れるか分からないんだよ?早めに作戦立ててこっちから奇襲するくらいの覚悟で行かなくちゃ!」
娘は私を応援する、と言っていたが、もしかして奴を倒すのか何かと勘違いしてるのだろうか。
そう唸っていると、玄関で何やら声が聞こえた。シンデレラが帰ってきたようだ。
「シンデレラが帰ってきたみたいだから、出迎えてくるよ」
娘から逃げるように玄関に向かった。
「そういえばすっかり忘れてたけど、義姉さんってば私もそのうち結婚するとか言ってたよね」
「ああ、言っていたな」
「どうしよう私今の所結婚の予定ないんだけれど……あの時は流石に空気読んで何も言わなかったけれど、このままだと義姉さんが嘘ついたことになるよ」
「……ならば、本当にしてしまえばいい」
「へ?」
「私の妻になってくれないか、シンデレラ。君を愛している。」
「……!!??」
「……まさか、私の気持ちがこれ程までに気がつかれてなかったとは」
「え、だって、王子は友達で、一緒にゲームして、笑顔が好きで、え……?」
「どうやら可能性はあるようで安心したよ。次会う時までに考えてくれると嬉しい」
「え、王子!?」
「私は本気だ。では」
……玄関先からなかなか来ないと思ったら告白シーンに立ち会ってしまったので、何も言わずにUターンする。知らなかったことにしよう。
「あれお義母さま、シンデレラは?」
「王子にプロポーズされてたから先に帰ってきた」
「あら〜〜〜」
とても嬉しそうにニヤケている。今日の作戦会議は変更になりそうで一安心だ。
入ってきたらどんな声をかけようか考えていると、扉を開けた音がした。
「ただいまー。母さんのこれ、落ちてたよ」
部屋に入ってきたシンデレラは、彼をお姫様抱っこしていた。
「……元あった場所に戻してきなさい」
「捨て猫じゃないんだから!!」
娘に突っ込まれても、私も脳が動かない。
「サブローがさ、魔法使いが寝たことでネズミに戻っちゃって、魔法使いをどうしようって困ってたんだよ。戻してきたらサブローが困っちゃう」
「……いや、サブローって誰?」
「あ、そうか。母さんは説明したときいなかったんだ!」
そういえば昼に彼と会った時に、誰かと一緒だったことを思い出した。サブローという名のネズミについて聞きながら、横目に彼を見る。昼に比べて顔が赤い。酔っ払いなのだろうか。そういえば、彼と酒を飲んだことは無い。
「……分かったわ。とりあえず寝室にでも置いてきなさい。話はこの人の酔いが覚めたらするわ」
「お義母様、誰の寝室に置くの?新婚の私の部屋?それとも、嫁入り前、しかも未成年の娘の部屋?」
居間に置いておいたら二人とも自室に戻らなそうなのでそう伝えると、娘からはとても愉快そうな返事が来た。
「……仕方ないから、私の部屋よ」
「はいはーい」
シンデレラはそのままお姫様抱っこで私の自室まで連れていき、ドカッと置いたら自室に帰って行った。
彼の目が覚めたのは、深夜2時頃だった。
「んぁ……あれ?サブロー……まって、この匂い……もしかして!?」
「数十年経ってるのに、なんで匂いで分かるのよ気持ち悪い」
彼は勢いよく振り向いてこちらを見た。完全に酔いが覚めたようで、目を真ん丸にさせて驚いている。少しいい気味だ。
「……信じてもらえないかもしれないけど、君のことをずっと想ってたからね」
「あなたの友人がネズミに戻ったからって、シンデレラがうちに連れてきたのよ。お姫様抱っこでね」
「うわーーーめっちゃ恥ずかしい……お酒、そんな弱くないんだよね……」
「初めて知ったわ」
「そうだね……君と離れた時は、まだ未成年だったもんね」
居心地悪そうにしていた彼は、深呼吸した後に、私をまっすぐに見つめた。
「ねえ、明日って空いてる?」
「……まあ」
「ちょっと、もう1回話したいことがあるんだ。僕に時間をくれる?」
「……分かった。私ももう一度話そうと思っていたところだったから」
彼の隣に、背中を向けて寝転がる。ここは私のベッドだ。誰も文句を言うまい。
結婚式に向かう途中に考えていたことや長年目を背けていた想いを、少しずつ少しずつ伝えていった。
その結果はまあ、皆の知る通りだろうから、これ以上なにかを語るのはやめておこう。
最後に言うとするならば、
「ばぁばさま、おはようございます!きょうは、ままといっしょにくまさんをさがしにいくんです!わたしといっしょにきてくれますか?」
「だめだよ!ばぁばさまは、ぼくといっしょに新聞紙やぶきチャレンジをするんだ!」
私の孫は2人とも娘達によく似ていて、
世界一やんちゃで、
世界一可愛いってことかしらね。
おわり
これにて完結!たぶん!




