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突然ですが、結婚しました

 すみません、若作りしてしまいました。女心を察してください。長女、長男、次男の母です。重ね重ねすみませんが、母親になりました。


 いや、まあ「死について考えてみる」という情報ネタを集めていたわけだけど、まあ、産むということを考えてみようかと...最初はちょっとした出来心だったの。後悔はしているが、反省はしていない。前にも言ったけど、この世界で出産は命に関わることだよ。ただ、苦しんだあと赤子の鳴き声を聴きながら、薄れていく意識の中で、「子供だけでも助かってよかった」と考えるのか、成長を見れないことを嘆くのか、産むという選択をしたことを後悔しながら、自分の命を終えることになるのか。まあ、最悪それだけでもネタにはなる。妊娠中に胎児が死んで、私の生命に関わる可能性もあるけど、それは、転生でなんとかなる。若干、この世界の普通の出産より死のリスクが少ないって計算したわけだよ。まあ、前世でも子供に拘束されるのは長くても30年程度だ。こちらは、自立が早いからね、長くても25年程度じゃないかな。そして、神様の時間感覚を考えると、決して長い時間じゃない。子供が自立したら適当な時期に出家して、身を眩ませた後、転生してまた別のネタを探せばいい。


 そうなると、夫が必要になるよね。え、順番がちがう?いいんだよ、細かなことは。でも、酒と賭け事にはまった、ダメ亭主との貧乏生活...いや、それ余計な苦労を抱え込むだけだよね。産むという本質とは全然関係ないよね。というわけで、まあ、それ相応の暮らしは欲しい。せめて、豪農とか豪商とか中級程度の貴族とか...え、贅沢?私は、夢見る乙女にだって転生できるんだよ。舐めるんじゃないよ!まあ、白馬の王子様、と言い出さないだけの理性はあるよ。


 というわけで、それなりの手順(わるだくみ)を計ったわけだよ。幸い、今まで色々な立場を得る(こうさくかつどうの)ために、様々な衣装は一通り持っている。うん、あいつのところに持ち込んだ大型クローゼットには、各種衣装がよりどりみどりだよ。店を開けるぐらいさ。ささやかなものから、かなり高価な宝石類も持っている。もちろん全部、必要経費だよ!その上、幾つかとはいえ勲章なんかももらっているんだよ。まあ、それなりに出自はごまかせる当てはある。


 というわけで、今回はきちんとこの世界で通用する、若い美女の絵をあいつに見せて、若干の修正点を指定した上でその姿で転生した。いや、美人画じゃ胸が誇張されすぎているんだよ、日常生活の邪魔になるぐらいに。


 比較的平和が保たれている、ある国の王都近くの小さな町。きちんとしたドレスを身に着けて。とりあえず雑貨屋で小物を選ぶ。若い男性店員がかけよってきて、一生懸命説明してたし、お金を渡す時、微笑んだら、ぼーっとなってお釣りを渡すのを忘れていたぐらいだから、まあ、通用する容姿だと判断する。で、そこから馬車で王都の中心部まで行く。中堅の教会に入り、先づは祈りを捧げる、深く丁寧に。そして、シスターにまとまったお金を寄付したい旨を告げたんだ。金貨の詰まった皮袋を見せて。うん、教会に寄付をするのは全然惜しくないよ?まあ、預金みたいなものかな?


 いや、全力で相談に乗ってくれたよ。その教会の最高位の神父さんまで出てきた。いろいろ事情があり、親を失い独り身になった。利用されそうになったが、幸い遺産は残されたから、私のことを誰も知らないこの街にやってきた。そしてこの街で、この世を捨てて出家したいって言ったら。


 それじゃあ、この書類にサインして出家の手続きを...ってなると思う?教会だってビジネスだよ。単に出家させても、それ以上の収入うりあげにはならないでしょ?私は、若く美しくスタイルもよい、きちんとした服をまとい、小ぶりだが上質の指輪とネックレスを身につけ、おまけに金も持っている。そこそこの立場を持っていた者の娘っていうのは、よっぽどのバカじゃなければわかるよね?だったら、どっかの金持ちに嫁がせて、そこからずっと寄付を得た方が教会にとっても得だよね。その上、神の御心にも叶うって言えるよね。言い訳は完璧だ!うん、全力で動いてくれたよ、教会。私?教会で毎日祈っていたよ、後方の目立たない席から。それなりの金貨を寄付したんだから、教会は私を住まわせてくれたし、食事も出してくれた。もちろん、本当に質素な物だったけど、文句なんか言わないよ。何事も感謝だよ!言っとくけど、私は若く美しく清純な女性だからね、見た目は。しかも、目立たない席から、ずっとひたすら祈り続けるっていう、控えめな女性なんだよ。そう、これも仕事だよ、男どもの庇護欲をそそるための。うん、腹のなか真っ黒だね!いいんだよ、ばれなきゃ。


 街は、ちょっとした騒ぎになったようだ。教会に閉じこもっていたからよくわからないけど...若い男性の参拝者が増え、しかも、チラチラ私を気にしている気配がする。うん、後方の目立たない席に座っていたのは、私の容姿をじっくり拝ませるためね。後ろ姿だけじゃアピールできないでしょ?そのうち、親らしき者も増えてきた。まあ、計算道理だね。あら、私に祈りを捧げる他人も現れ始めたよ。大丈夫か?この街の男ども。


 で、相談に乗るからと、教会を通して私との面談希望者がでてくる。まあ、教会による一次面接済みの人たちだから、どれも優良物件だったよ。そして、その中から条件が良い家を選んだんだ。貴族家だった。私の家柄について聴きたそうだったが、父親の形見ですって、勲章いくつか見せたらそれ以上は追求されなかったよ。涙は女の最終兵器りーさるうえぽんだよ!本人と父親の庇護欲を煽りに煽ったよ。まさに完全試合だったね。まあ、問題は母親なんだけどね...女の敵は女ってことだ。それも大した問題じゃなかったよ。伊達に人生経験積んでるわけじゃない。もちろんすぐ結婚したわけじゃないけど、貴族家の交際なんかの詳細については、他のラノベに当たってね。きっと、そっちの方が面白いよ。




 まあ、計算尽くしの出会いだったけど、夫への愛情は自然に生まれたよ。そういう関係になったからね。そして、子供も生んだ。痛かったよ。もう二度と産むものかというぐらいには。でも、あと一人二人ぐらいはいけるかな?乳児の時ははもちもちして可愛かった。甘い匂いもしたし。お猿さんみたいだけど、触れているだけで安心するんだよ。で成長して、女の子らしさ男の子らしさがでてくる。長女はただひたすら可愛かった。男の子はただひたすらバカだった。まあ、そこが可愛いんだけどね。こっちが庇護欲をそそられるんだよ。チクショー、完敗だ。幸い、みんなすくすく育っている。よかったよ。うん、あと一人二人ぐらいはいける。育児?細かなことは侍女がやってくれるから、そんなに手間かからないよ。正直、前世より楽だね。単純に考えると、産み育てるっていうのは、動物としての本能なんだよ。


 子供が生まれたけど夫への愛情は続いているよ。良妻賢母をうまく演じれていると思う。いや、それは愛情じゃない。ただ、そのうち夫の側室なんて話も出てくるかもしれないけど、それは仕方ない。戦争はあるんだ。で、貴族はその前面に出なければいけない義務を負う。だからできるだけ、多くの次世代候補を残すっていうのは、合理的なんだよ。あと、私は領地経営や社交もアドバイスしているよ。自分の立場を確保するためだよ。伊達に前世と、この世界のいろいろな国の情報を持っているわけじゃない。だから、義父もとっても大事にしてくれるよ、私を。まあ、義母は仕方ない...とはいえ、義母より大きな立場を手に入れたからね、この家では。人目につくような嫌がらせは受けていない。そう、我慢できないような嫁姑問題は起こっていないってことだ。まあ、細かなことはあるよ、色々と。ただ、わたし結構、権力行使できるからね。もちろん、夫と義父の顔は立てているよ。いいんだよ、男なんて顔さえ立ててやれば、手のひらで踊らせることなんて簡単なんだから。言葉や態度なんて、タダなんだから、いくらでも払ってあげるよ。お代わりだって惜しくないよ!その結果、間接的だけど、ほとんど私の好き勝手、やりたい放題だよ。従順な振り、ってとっても大事なんだよ?反感を持たれるとややこしくなるからね。もう、ぶきは不要だよ。それに涙は女性の反感買うんだよ。使う状況に注意しないとやばいことになる。


 うん、あの神様(ダメなやつ)には、たまに報告しているよ。最初の子を産んだ時の気持ちとか、3人目の子の時にはどう感じたとか。数字じゃないけど、まあ、あいつの暇つぶしだし、結構楽しそうに聞いてたよ。まだ軽い乱闘(こうしょう)は続いている。お金には不自由していないんだけど、やってあげないと寂しそうだし。奪ったお金は、あの教会に寄付しているよ?だから教会も大事にしてくれる、私を。もちろん、いつもというわけでも、全額というわけでもないけどね。何か買うのに、いちいち夫からなんて面倒だからね。いくらでも出すって言ってくれるけど、面倒なのよ。


 私の収入が不自然にならないように、それほど大きくなかったある商会に、かなりの金貨を出資して、交易のアドバイスなんかもやってるんだ。遠く離れた国の特産品なんかについても情報持っているからね。貴族への紹介なんかも任せてよ。商会、急成長している。で、商会からは神様扱いだよ。資本金の半分ぐらい出しているから、実質、私が準オーナーってのもあるけど。小型の馬も手に入れて、乗れるようになったよ。馬車は不自由だからね。仕事は金貨と舌先三寸だけを使った物だけど、機動性は大事だからね。まあ、ちょっとした有名人だよ、社交界でも。ただ、社交界についても詳しくは、他のラノベをあたってね。ここで触れるのは、あれも仕事ということだけ、容姿と舌先三寸を使った。


 卑怯すぎるんじゃないかって?いや、ラノベってそんな物でしょう。開き直りって大事だよ?


 いや、前世でもあったよ、美容整形とか性転換手術とか。一部は健康保険が適応される場合もあるけど、自分が希望する容姿になるためには、大金を払う必要がある。要するに、お金を持っていて、それに払う価値があると考える者だけが受けれるサービスっていうやつ。もちろん、遺伝子が変わるわけじゃないから完璧じゃないけど。私の子供は私に似ているからね。卑怯なのは、その点だけだよ。

 単に生き延びるために不要なことであっても、その需要があれば商売として成立するってことだ。精神的な満足に対する対価だね。自分の体を改造することによって得られる利益も期待できるだろうしね。医療市場の拡大なんだから、悪いことじゃない。サービスを受ける側、提供する側が幸せならば、それについて何かいうことなんてないよ。さすがに、貧しいとこの手のサービスを受けれないから、みんな平等に受けさせるようにするべきだ...なんて主張は、主流じゃなかったはずだよ。


 成長期っていうのかな、いろいろなものが拡大していく時期がある。ただ、いずれ限界を迎える。なにかを変えないとそれ以上大きくならなくなる。今の私は、成長期っていうだけだ。とはいえ、私がどう頑張ってもこの国の経済規模を超えることはできないから、いずれ頭打ちになる。頭打ちになったらどうするかって?その時期がきたら考えるさ。前世の日本の医療費なんかもそうだったよ。年間40兆円。それ以上どうするんだよ...


 医療費の枠が決まっていたらどうなるだろう?前世で外国の医師とこういう会話をしたことがある。国の健康保険の話になったからね。

 彼の国でも健康保険があった。決まった年間予算が病院ごとに割り振られるらしい。ただし、医薬品は対象外。これは患者が自腹で買わなければいけない。まあ、そういう制度もあるよね。続きを聞く。えっ、何言っているの?念の為もう一度言ってくれる?


 ・年初に病院ごとに年間予算が割り当てられる。

 ・診療科間で患者を奪い合うように、過剰診療が行われる。ただし、薬を処方しても、全額自費だから薬を買う患者はあんまりいない。

 ・半年ぐらいで予算が尽きる。以降患者の全額負担。だから、患者は病院に来なくなる。もちろん薬も買わない。


 ワカッタケド、ワカリマセン。いや、診療科毎とか月ごとに予算を割り振るとか、患者の自己負担を上げて年間を通して補助するようにするべきじゃないの?と振ったら、彼は諦めた顔でこう言ったよ「私の国では、もう何十年もこれでやっているので、医者も患者も当たり前のこととして受け入れている。だれも疑問に思っていない。」って...


 医療費の予算に枠があるとしたら、その枠を奪い合うのは当たり前だ。病院、医療関係の卸業者、製薬会社、検査会社、医療機器の会社なんかで奪い合いが起こる。病院の中であっても、医師(経営陣も含む)、看護師、薬剤師、検査技師、事務なんかでの奪い合いになる。ただ、鍵を握るのは医師だよ。

 医師が薬を処方する→薬局→卸業者->製薬会社

 医師が検査を決める→検査技師/検査会社→医療機器会社

 の順でお金が流れるからね。単純に考えれば、治療、投薬、検査を絞れば医師の取り分は多くなる。入院を減らす、短くするのも有効だよね。まあ、日本の場合は診療報酬は定価だから、ちょっとややこしいけど。ただ、医療行為に対する診療報酬の割り当ては増やせるよね。要するに医師が働かなければ、医師の収入が増える可能性もあるってこと。発想の転換ってやつだ。まあ、私には関係ないことだけど...考えなきゃいけないのは、前世の人たちだからね。

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