封鎖
ゼットがエンクローズ村の入り口に到着したとき、そこでは縄梯子を登る村人で渋滞していた。
ゼット:(まずいな、なんとか足止めしなくては。)
ゼットは持っていた油壷の油の半分を足場にかけ、半分を通路の床に流した。
そして足場の横にある松明の山から1本取り出すと明かりを灯した。
丁度そのとき、「右から2番目だ!!、進め!!」という声が聞こえた。
すぐに敵が来る、しかし村人はまだ登りきっていない。
絶体絶命の状態にゼットは慌てた。
ゼット:(落ち着け、落ち着くんだ。)
ゼットは心を落ち着かせようと一回二回と深呼吸した。
その頃、エンクローズ村の入り口では残りの村人達の到着を待っていた。
カイルは、入り口の穴を覗き込みながらゼットのことを考えていた。
カイル:(ゼット、無事で居てくれ。)
しばらくすると、下に人影が見えた。
カイル:「人が来たぞ。」
周りにいた村人は、弓を構えた。
カイル:「ボトム村の村人だ。」
周りの皆は、ほっと胸をなでおろした。
村人は登りきると、息切れした声でつぶやいた。
村人:「村長が殺されました。」
長老:「なんと惨いことを。」
1人また1人と村人が縄梯子を登ってくる。
カイルは神に祈った。
カイル:(全員無事に上がってこれますように。)
そのとき、「右から2番目だ!!、進め!!」という声が聞こえた。
カイルは反射的に叫んだ。
カイル:「まずい、武器を下に降ろすんだ。」
ガラガラという音がすると籠が降りてきた。
その中には、複数の剣と弓矢が入っていた。
ゼット:(助かった、これで戦えそうだ。)
縄梯子の順番を待っている村人に武器を取るように言うと
ゼットは油を流したところで敵を待った。
先頭の兵士が現れたそのとき、ゼットは油に火を点けた。
絶叫と共に兵士が燃え上がった。
燃え上がる炎の向こう側から声が聞こえた。
敵:「どけ!!」
突然、1本の矢が放たれた。
その矢は、違うことなく縄梯子を登っている村人を貫いた。
短い絶叫と共に村人は落下する。
続けざまに放たれる矢によって、足場の上に乗っていた村人は
一人また一人と貫かれていった。
ゼットは死を覚悟し、残った村人を見回した。
皆覚悟を決めたようだ。
ゼット:「カイル!!聞こえるか?!!2人を頼む!!」
そう叫ぶと、ゼットは足場に火を点けた。
足場は、勢いよく燃え上がった。
カイルは、村人の引き上げを手伝っていた。
縄梯子を上がっていた村人が突然矢に射抜かれて落ちていった。
カイルはあせった、このままでは皆が危ない。
今にも飛び降りそうなカイルを見て長老が言った。
長老:「まて!!、カイル!!
お前にはまだやるべきことがあるはずだ。
今ではないのだ、ゼットの兄弟をどうするのだ?
おまえは、約束したのであろう?」
そういわれ、カイルが一瞬躊躇していると、下から声が聞こえた。
ゼット:「カイル!!聞こえるか?!!2人を頼む!!」
そして、足場から火の手が上がった。
カイルはその声を聞き、足場が燃えるのを見た。
そして、膝をつきうなだれると地面を叩きだした。
長老:「ゼットの意思を無駄にするな、すぐに封鎖するのじゃ!!」
入り口には1枚岩が置かれ、その上には土嚢が次々と乗せられていった。
カイルはぼんやりとそれを眺めていた。そのとき、一筋の涙が零れ落ちた。