ビッグスライムとの死闘
ビッグスライムが巨体を震わせ、ずるり、と体を持ち上げた。
通路いっぱいに広がるその影は、まるで生きた壁が迫ってくるかのようだった。
粘液がだらだらと滴り落ちる。
「ジュウウ……ッ!」
石畳が黒く泡立ち、白煙がもうもうと立ちこめる。
鼻をつんざく酸の匂いに、思わずむせそうになる。
「……でかい。どうすれば……」
トリスは木剣を構えたまま、一歩、また一歩と後ずさった。
だが、背中に触れたのは冷たく湿った壁。
――もう逃げ場はない。
「鑑定!」
⸻
【魔物鑑定】
名称:ビッグスライム(アンコモン)
特徴:通常のスライムより大型で、酸性粘液の濃度が高い。
核を砕けば消滅するが、表層が厚く、核に到達しにくい。
⸻
「やっぱり……核しかない。でも、厚すぎる……!」
考える間もなく、ビッグスライムが体を大きく弾ませた。
次の瞬間、巨体そのものが壁のように迫ってきた。
「うわあっ!」
トリスは咄嗟に横へ飛び退いた。
だが遅かった。飛び散った飛沫が頬にかかり――
「っぐ……ああっ!」
焼け付く痛み。皮膚が赤く爛れ、涙が滲む。
焦げた肉の匂いに、胃の奥がひっくり返りそうになった。
「熱っ……熱い……!」
震える手で頬を拭い、トリスは必死に木剣を握り直す。
腕も足も震えていた。
怖い。逃げたい。
でも――
(怖い。でも……やるしかない! ここで倒さなきゃ、俺は……生き残れない!)
⸻
トリスは叫び声を上げ、駆け出した。
真正面から木剣を突き込む。
「うおおおおっ!」
木剣の先端が、ぶよぶよとした緑の表層を押し分ける。
ぬるりと滑る感触に、全身の毛穴が総立ちになった。
さらに奥へ、奥へと力を込める――
だが。
「……っ、止まった……!?」
木剣は途中で動かなくなった。
核には、届かない。
「くそっ……!」
その瞬間だった。
スライムの粘液が逆流するようにぐわっと押し寄せ、トリスの腕ごと木剣を飲み込んだ。
「うあああああっ!!」
酸が肉を焼く音が耳に届く。
「ジュウッ! ジュウウ……ッ!」
激痛が走り、視界が白く染まる。
腕が……溶ける……!?
必死に木剣を引き抜き、後ろへ転がった。
背中を石畳に打ち付け、肺の中の空気が吐き出される。
「かはっ……! はぁ……はぁ……!」
荒い呼吸。心臓は早鐘のように打ち続けていた。
腕の皮膚は赤黒くただれ、触れるたびに鋭い痛みが走る。
(俺じゃ……勝てない……のか……?)
ほんの一瞬、心が折れかける。
だが、その時――脳裏に浮かんだのは孤児院の子どもたちの笑顔だった。
「……俺が、帰らなきゃ……みんな……困るんだ……!」
必死に意識をつなぎとめ、トリスは壁に手をついて立ち上がる。
痛みで足は震えている。
それでも、その瞳は諦めの色を宿していなかった。
「まだだ……まだ終わってない……!」
巨体を揺らすビッグスライムが、再び突進の構えを取る。
粘液が滴り落ち、石畳が次々と溶けていく。
――少年と怪物の、死闘はまだ続いていた。
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。