下水ダンジョン
とんでもないスピードで投稿を続けております。甘い蜜蝋です。みなさんよろしくお願いします。ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
鉄格子の扉をくぐった瞬間、むわっとした臭いが鼻をついた。
「うえっ……くっさ……」
トリスは思わず鼻をつまむ。
壁には青白い苔がへばりつき、じっとりとした空気が肌にまとわりついてくる。
ぽた、ぽた……と水滴が落ちる音が響き、耳の奥まで湿っぽくなった。
下水の匂いと獣臭が混じって、喉の奥がひりつく。
(ここが……ダンジョン……。怖い……でも、やるんだ。冒険者になるって決めたから)
小さな手で木剣をぎゅっと握りしめる。手のひらは汗でぬるりとしていた。
⸻
ぷるん、と嫌な音を立てて、半透明のスライムが飛び出してきた。
「うわっ! ち、近っ!」
慌てて下がりそうになるが――
頭の中に、昨日のギルドのお姉さんの声がよぎる。
『何が出ても、よく見て。慌てないで、観察するのよ』
「……そ、そうだ。鑑定だ!」
⸻
【鑑定】
名称:スライム(コモン)
特徴:酸性粘液。核を壊せば消滅。
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「……あれが“核”かな?」
ぶよぶよの奥で光る小さな玉に狙いを定める。
「えいっ!」と声を張り上げ、木剣を突き出す。
ぐしゃりと砕けた瞬間、スライムはしゅわっと光の粒になって消えた。
「や、やった……! 俺、倒せた!」
胸がどきどきして、思わず笑顔がこぼれた。
指先が震えているのに、それすら誇らしく感じた。
⸻
その時だった。
ガサガサッ!
通路の暗がりから、赤い目をぎらつかせたラットが五匹ほど飛び出してきた。
「ひいっ! ね、ねずみ! しかもいっぱい!」
ぎちぎちと牙を鳴らし、低い唸り声を上げて迫ってくる。
トリスは必死に木剣を振り回した。
「うわぁぁっ!」
先頭を突き刺し、壁に叩きつける。
だが一匹が足に噛みついてきて――
「いたっ! はなせぇぇ!」
涙目になりながら必死に足を振り払う。
(落ち着け……落ち着け……! 群れは先頭を崩せば……!)
訓練場で聞いた言葉を思い出し、喉がひりつくほど声を張り上げた。
「どけぇぇぇっ!」
横薙ぎに振り抜いた一撃で数匹をまとめて吹き飛ばす。
壁にぶつかったラットが悲鳴を上げる。残った一匹を突き刺し、地面に押さえ込んで必死で仕留めた。
「はぁっ……はぁっ……」
足に血がにじむ。痛くて、怖くて、胸の奥が泣きそうになる。
それでも――立ち上がる。
「こ、怖かった……でも、勝った……!」
その瞬間、胸の奥が熱くなり、脳裏に、淡い文字が浮かんだ。
【レベルアップ】
名前:トリス(9歳)
Lv:2
HP:62 → 66
MP:670 → 720
STR:11 → 12
VIT:10 → 11
AGI:14 → 15
DEX:18 → 19
INT:25 → 26
MND:18 → 19
LUK:50 → 51
(すごい! 強くなった! 俺でも、本当に強くなれるんだ!)
思わず両手をぎゅっと握りしめて、子供らしく跳ねる。
「やった……やったぞ!」
⸻
服は泥と血で汚れ、木剣もぼろぼろ。
肩で息をしながら、それでもトリスの目はしっかりと前を見ていた。
「俺……冒険者だもん。もう退けないんだ……!」
小さな体で、また木剣を構える。
その姿はまだ頼りなく、今にも折れそうに見える。
けれど――確かに、“冒険者の一歩”を踏み出していた。
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