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修学旅行(4) 憔悴(中学3年生5月)

排泄の描写があります

 部屋に入って襖を閉めると、優香はビショビショに濡れて、お尻から足首まで下半身にベットリと貼りついた部屋着のズボンを、引き剥がすようにして脱いだ。

 雫が伝って湿った靴下も脱いで、下半身は丸裸になる。

 トイレの床に打ち付けた両膝は擦りむけ、赤く晴れていた。


 漏らしてしまったショックと惨めさ、傷の痛みで、優香が嗚咽を漏らしそうになったとき、襖の向こうから、

「もし、タオルが必要なら、ホテルの人にお願いして持ってきてもらおうか?」

と木下先生の声が聞こえた。


 優香は慌てて布団に入ってむき出しの下半身を隠そうとしたが、襖が開けられることはなかった。

 ありがたい申し出だったが、優香は恥ずかしさで咄嗟に、

「…大丈夫です」

と断ってしまった。


 カバンから昨日着ていたシャツを出して、ぐっしょりと濡れた下半身の水気を拭い、今晩お風呂に入ってから履き替える予定だった新しいショーツを履いた。部屋着用のズボンは1枚しか持って来ていなかったので、制服のスカートを履くか、乾くまでショーツだけで過ごすしかない…。


 優香は湿ったズボンを少しでも乾かすために、窓際の手すりにかけた。そして、スカートがシワになると明日履けなくなってしまうので、少し迷ったが、下半身はショーツだけのまま、布団をかけて横になった。

 目を閉じると漏らしてしまったショックが脳裏に蘇り、その上、下半身は冷たく、膝がジンジンと痛んで、とても眠れそうになかった。


 眠れないままに何度も寝返りをうつうちに、優香はまた、下腹を締め付けるような腹痛と便意に襲われた。

 よろよろと起き上がり、寒さと便意で震えながら、びしょ濡れのままのズボンに足を通して、どうにかお腹まで引き上げる。

 湿ったままのズボンは下半身に気持ち悪く貼りつき、ただでさえお腹を下している優香の身体を、さらに冷やしていった。


 優香は便意と下半身の冷たさにブルブルと身体を震わせながら、トイレに急ごうとしたが、下半身にべったりと纏い付くズボンと、痛む両膝のせいで、ゆっくりしか歩けない。

 廊下のトイレまで間に合いそうにないし、膝が痛くて、和式トイレにしゃがめそうもなかった。

 優香は諦めて、襖を開けた先にある部屋のトイレに入った。


 便器に腰掛け、流水音のボタンを押して、できるだけ音がたたないように、すぼめた肛門を少しだけ開く。


 クチューー。ブリュッ…プシューーっ。


 最初は音も小さく、わずかに出ただけだったが、排泄は次第に勢いを増していく。


 ついに、大量の下痢便とガスが、肛門を大きくこじ開け、

 バスッ! ブリュルルーッ、ブッ!ブリッブリブリブリュッッ。 

と、派手な音をたてて溢れ出してしまった。


 優香は片手でギュルギュルと蠢くお腹をさすりながら、もう一方の手を何度も流水音のボタンに伸ばすしかなかった。


 数分かけて、ようやく下痢が止まり、部屋に戻ったが、濡れたズボンを履いたり、ショーツ1枚で過ごしてお腹が冷えてしまったせいか、優香はその後も何度も腹痛と下痢に襲われ、その度にトイレに駆け込まねばならなかった。


 何度もトイレに通う度、優香の気力と体力は奪われていった。

 なるべく大きな排泄音を立てないように気をつける余裕もなくなり、酷い下痢の音と、水っぽいガスの音を何度となく響かせた。その大きな音が、廊下と薄い襖を隔てた木下先生の元まで響いていることは明らかだった。


 何度目かの下痢排泄を終えて、消耗しきった優香がつかの間、部屋で横になっていると、襖の向こうから保健の中原先生の声がした。

「佐伯さん、寝てる? 開けるわね」

 襖を開け部屋に入って来た中原先生は、優香の枕元に座ると、予備で用意していた学校指定の体操着のズボンを差し出した。

「大丈夫? よかったらこのズボンに履き替えて。

 それから、必要ならこれも…」

と言って、中原先生が薬局の紙袋から取り出したのは、優香にとっては、何度か使っているせいで見覚えのある、パンツ型になった紙オムツだった。


 優香が何も言う前から用意して来てくれたということは、優香がズボンを汚してしまったことや、その理由を察した木下先生が、中原先生に伝えてくれたのだろう…。

「…ありがとうございます」

 優香は恥ずかしさで顔を赤らめながら言った。


「お腹は、まだ下ってるの? 随分、酷い下痢?」

 お腹が下っているのは事実だが、転んだ拍子に漏らしてしまっただけで、トイレにも間に合わず、オムツに垂れ流すような状態ではない。

 優香はオムツが必要だと思われている自分が情けなくなって、目に涙を滲ませ、黙って首を横に振った。


「抵抗があると思うけど、明日は長時間の移動もあるから、寝るときや移動中は、念のためにこれを履いておいた方が安心だと思うわ。

 普通の下着のように、自分で脱ぎ履きできるし、薄くて服の上からは目立たないから、使い捨ての下着だと思って使って」

 中原先生は、優香の気を楽にさせるために言った。


 そして、布団から出した優香の手のひらに、血が滲んでいることに気づいて問いかけた。

「怪我したの?」

「…トイレで、転んでしまって…」

「大丈夫? 怪我は手のひらだけ?」

「膝も…打ってすりむきました…」

「消毒したほうがいいわ。見せてごらんなさい」

 優香は起き上がると、ショーツだけの下半身を布団で覆うようにして、膝から下を出して見せた。

「腫れてきてるわね…。消毒して湿布を貼っておきましょう」

 中原先生は救急用品が入ったカバンから消毒液を取り出すと、コットンに染み込ませて、擦りむいて血がにじむ優香の膝を丁寧に拭っていった。

「可哀想に、痛かったでしょう…」

 優しい言葉に、優香は一層自分が惨めになり、こらえていた涙が溢れた。


「病院では便秘の診断で、浣腸の処置だけしてもらって、薬の処方はなかったのね?」

「はい…」

「浣腸してもらって、しっかり出た?」

 優香は恥ずかしくて、黙って頷いた。

「だったら、お腹はしばらくしたら落ち着くと思うわ。

 浣腸の作用で、しばらくお腹がゆるくなってしまうことがあるから。

 お腹を冷やさないように、早く穿き替えて、今日はゆっくり休みなさい」

 中原先生は、手のひらと膝の手当てをしながら、優香を安心させるように優しく言った。


 しかし優香は、あのいつも以上に惨めで恥ずかしい浣腸の体験がまざまざとよみがえり、頬を伝う大粒の涙は畳を濡らしていった。


「今は、お尻は大丈夫? 傷んでない?」

 不意に痔の治療で保健室登校していたことに触れられて、優香は泣き顔を上げ、無言で中原先生を見た。

「便秘や下痢になると、どうしてもお尻に負担がかかるから、ぶり返していないかと思って…。

 恥ずかしいかもしれないけど、酷い痛みや晴れがあるなら、早めに対処しないと」

「…薬も持ってるので、大丈夫です…」

「そう…。病院の先生からも聞いてるかもしれないけど、痔も冷やすと良くないから温かくしてね」

「はい…」

 優香の傷の手当てを終えた中原先生は、泣いている優香にティッシュを手渡し、自分も1枚取って畳に溢れた優香の涙を拭いた。

「すみません…」

「大丈夫よ。冷えないように早く着替えて、ゆっくり休みなさい。

 後ろを向いてるから、ここで着替えたらいいわ」


 優香は背を向けた中原先生の隣で、ショーツを脱ぎ、パッケージを開けて取り出した紙オムツに足を通した。

 パンツ型とは言っても、オムツ特有の感触で、お尻の部分が分厚く、モコモコとして、履いているだけで気恥ずかしくなる。

 そして、サイズが大きくてブカブカの体操着の上からでも、オムツのせいで、ウエストやお尻周りが不自然にゴワついているのがわかった。

 快適とは言えなかったが、濡れていないズボンと、お腹までスッポリと覆う紙オムツに包まれた下半身は温かく、消えたいほど惨めだった気持ちが少しだけ安らいだ。


 優香は布団に横になり目を閉じた。

 今朝からの出来事が全て夢ならいいのにと思いながら。

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