修学旅行(3) 無残(中学3年生5月)
排泄の描写があります。
ホテルに戻った優香は、元の大部屋ではなく、体調を崩した生徒のために用意された部屋で休むことになった。
襖で仕切られた二間続きの和室の、一部屋に優香のための布団が一組敷かれていた。
「まだ痛むのか…?」
泣き腫らした顔の優香に、木下先生は心配げに声を掛けた。
声を出すと泣き声になってしまう、と思った優香は、黙ったまま首を横に降った。
「今日は、ゆっくり休みなさい。
こっちの部屋にいるから、何かあったら呼びなさい」
木下先生がそう言って部屋を出て行き、襖が閉められた。
部屋で一人になると、優香は布団に横になったが、目を閉じて眠ろうとすると、改めてこみ上げてくる悲しさと惨めさを抑えきれず、しゃくり上げて泣き出してしまった。
襖を隔てた隣室で、木下先生は、優香が腹痛を起こして病院に行ったことを真斗に電話で報告していたが、優香の泣き声に気づくと、早々に電話を切り、襖を開けて顔を出した。
「どうした!? 具合が悪い…?」
優香は、泣き止んで大丈夫です、と答えようとしたが、実際には話すことはできず、言葉にならない声を上げて、一層激しく泣き出していた。
木下先生は優香の枕元に腰を下ろすと、あぐらをかいて座った。
そのまましばらく黙って泣いている優香を見守っていたが、数分が経ち、優香のしゃくりあげる声が次第に小さくなって落ち着いてきたのを見計らい、部屋の隅に寄せされたテーブルの急須でお茶を淹れてくれた。
枕元に茶托にのせた湯呑みを置き、自分ももう一度その横に座ると、
「少し落ち着いたか…? お茶を淹れたから飲みなさい」と優香に声をかけた。
そして、ゆっくりと起き上がった優香の顔を見ると、
「顔を拭くのが先だな」と少し笑って、テレビ台に置かれていたティッシュの箱をとってきてくれた。
優香が涙でぐしゃぐしゃになっていた顔をぬぐい、お茶を一口飲むのを待って、
「身体は大丈夫そうか?」と木下先生は聞いた。
「…はい。お腹が痛いのは、大分治まりました…」
「病院での処置が、つらかった…?」
優香は頷いてから、ゆっくりと口を開き、ポツポツと話し出した。
「…治療だから、仕方ないって…分かってはいるんですけど……」
それだけ言うと、悲しみで声が震え、目からはまた涙がこぼれる。
木下先生はティッシュを数枚取って優香に手渡しながら、
「せっかく落ち着いてきたのに、また泣かせてしまったな…。
身体のことは、何も力になれないから、せめて相談に乗ってあげられたらいいんだけれど。僕に相談しづいらいなら、保健の中原先生が戻られたら相談しなさい」
と少し困った表情を浮かべて言った。
申し訳ない気持ちも合わさって、優香の目にはまた涙が溢れ、木下先生は苦笑しながら、新しいティッシュを手に取ると、腕を伸ばして優香の涙を拭いてくれた。
その時、部屋のチャイムが鳴り、昼食の用意が運ばれてきた。
優香にはおかゆが、木下先生には魚の定食のような食事が用意され、布団が敷かれていない方の部屋のテーブルで、二人は向かい合って昼食を食べた。
「さっき電話で、病院に行ったことをお兄さんに伝えておいた。心配してたよ」
「そうですか…。すみません…」
「……お兄さんは優しい?」
「はい…。いつも迷惑をかけっぱなしなので、もう少し、自立したいと思ってるんですけど…」
「でも急に自立されても、寂しいんじゃないかな」
「そうかな…。先生は兄弟いるんですか?」
「うん、兄貴と弟がいるよ」
和やかな会話を交わしていた時、優香のお腹がギュルギュルと大きな音を立て、優香は突如腹痛と強い便意に襲われた。
「すみません…、ちょっとお手洗いに…」
優香は注入軟膏のポーチを部屋に取りに戻る余裕もなく、立ち上がると、廊下のトイレに駆け込むため、部屋の玄関に降りると備え付けのスリッパを履いた。
「大丈夫か? 気にせず部屋のトイレを使ったら」
と木下先生に声をかけられたが、優香は、答える余裕もなく、それでも音が筒抜で臭いもこもるであろう部屋のトイレを使うことはできず、ただ首を横に振ると、部屋のドアを開けて廊下に駆け出した。
廊下の奥にトイレの表示を見つけて駆け寄り、入口に並べられたトイレ用の木のサンダルに履き替えると、タイルの床にカンカンと硬い音を響かせて、奥の個室を目指して小走りになった。
その時。
水で濡れたタイルに足を滑らせ、優香は前のめりになって、両手をついて転んでしまった。
「…あぁ!」
悲鳴を漏らすのと同時だった。
ブリュッ!
転んだはずみで、必死で締めていた肛門から軟便が噴き出し、お尻には熱い軟便の感触が広がっていった。
優香は冷たいタイルに打ちつけた両手と両膝の痛みで、濡れた床に手をついた四つん這い姿のまま、しばらく動くことができなかった。痛みと惨めさで嗚咽と涙が込み上げてくる。
クチューーーッ…
しかし、さらに水のような便が肛門から勢いよく溢れ出し、お尻の割れ目を伝ってショーツいっぱいに広がっていくのに気づくと、優香は痛みをこらえて立ち上がり、急いで個室に駆け込んだ。
ズボンとショーツを下ろすと、ショーツには泥のような軟便が溢れ、茶色いシミが広がっていた。
呆然としながらも、強くなる便意に急かされて、優香は和式便器にしゃがみ込んだ。
さっきタイルに打ち付けた両膝が痛む。
お尻からは、水のような便が勢いよく吹き出していた。
ピューーーーー、ブチュビチュビちゅーーーブリュっ。ブボッ…ブボッ…ブリュリュリュリューーー。
「うぅ……あぁ……はぁ…はぁ…はぁ…」
時に弱まり、時に肛門が痛むほど激しくなる下痢を何度も繰り返し、優香の排泄は10分ほど続いた。
息を荒らげ、膝のジンジンとした痛みをこらえて、どうにか下痢便を出しきり、汚れたお尻をトイレットペーパーで何度も拭うと、優香はあらためてショーツの惨状に目をやった。
べったりと汚れがしみ込んだショーツは、トイレットペーパーで拭ったくらいでは、きれいになりそうにない。
優香は軟便がこぼれないように気をつけて、ゆっくりとショーツとズボンを脱ぐと、ショーツは諦めてトイレットペーパーでくるみ、汚物入れに捨てた。
そして恐る恐る、脱いだズボンのお尻を見ると、幸い黒いズボンだったので目立たないものの、お尻の辺りがべっとりと濡れ、異臭を放っていた。
どうしよう…。
洗ってでも、このズボンを履かないことには、部屋まで戻れない。
優香は、奇しくも今朝病院で浣腸された時と同じように、下半身は靴下しか身につけていない姿で、恐る恐る個室を出た。
そして誰もトイレに入ってこないことを祈りながら、洗面台でズボンの汚れを落とした。
備え付けられた石鹸水を使って、ズボンから茶色い水が出なくなり、臭いが落ちるまで、何度も洗っているうちに、お尻の部分だけでなく、ズボンの大半がぐっしょりと濡れてしまった。
転んだときにタイルで強く打ち、擦りむいてしまった手のひらの傷に、石鹸と冷たい水がしみて痛んだが、我慢するしかない。濡れたズボンに何度も鼻を近づけ、ようやく臭いがなくなったことを確認すると、優香は手のひらの痛みをこらえ、できるだけ硬く絞ってからズボンを履いた。
しかし、力一杯絞ったつもりでも、手で絞るのは限界がある。
冷たく湿ったズボンは、歩くたびにむき出しの優香のお尻にべっとりと張り付き、ようやく部屋に着いた時には、絞りきれなかった雫が足首から滴ってスリッパを濡らしていた。
優香が部屋のドアを開けると、随分時間がかかっていることを心配していた木下先生が、襖を開けて顔を出した。
「大丈夫か…?」
「はい…。ちょっと、体調が悪いので寝ます」
優香は答えると、ズボンが濡れていることに気づかれないうちにと、慌てて布団が敷かれた部屋に駆け込んだ。
しかし、入口から奥の部屋に続く廊下には濡れた足跡が続き、不自然にお尻に張り付いたズボンは、ぐっしょりと湿っていることが一目でわかる無残な状態だった。




