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修学旅行(2) 無神経(中学3年生5月)

排泄の描写があります

 待合室の人々の視線から逃げるように、駆け込んだトイレの個室で、優香は嗚咽をあげて泣きながら、激しく下していた。

 しゃくり上げ、身体に力が入る度に、肛門からは、熱い軟便が痛みを伴って噴き出していく。



「便秘がひどいので、今浣腸をかけました」

 看護師さんのよく通る声が蘇る。

 あの時、看護師さんの声に、待合室のざわめきが一瞬静まり、みんなの好奇の視線を一身に浴びせられた気がした。


 苦しい…。

 お腹は絞られるようにうごめいて熱い。ひどい音を立てて、激しい勢いで便とガスが噴き出すお尻も、ピリピリと鋭く痛んだ。

 もう消えてしまいたい…。



 どのくらいそうしていただろう。

 コンコン、とトイレのドアがノックされ、

「佐伯さん、大丈夫ですか? まだかかりそう?」

 とドアの向こうから、さっきの看護師さんの声が聞こえた。


 優香は泣き声をこらえ、返事をしようとしたが上手く声が出ず、とりあえず早くトイレから出ようと、強く息んだ。


 ブリューーーっ! ブシュッ! ビューーーーーブリュブリュッ。


 ガスが混じった軟便の噴き出す大きな音が、看護師さんの耳にも届いたらしい。

「まだまだかかりそうね。

 ゆっくりでいいですよ。たくさん溜め込んでいたから、スッキリするまで、頑張って全部出しましょうね」

という言葉を残して、看護師さんは一旦トイレを後にした。


 何度も強く息んでいると、直腸も空になったのか、軟便はようやく止まったが、ゴロゴロと蠕動が続くお腹はまだ痛み、涙も止まらない。

 優香は渋る下腹をさすりながら、気持ちを落ち着かせるために、何度か大きく息を吸い込んで深呼吸をした。


 もう二度と受けたくないと思っていた浣腸の処置を、よりによって修学旅行中に受けることになってしまった…。

 いつも以上に恥ずかしく、こんなに、惨めに感じるやり方で…。

 その上、浣腸されて便意をもよおし、排便のためにトイレに入ろうとしていることを、木下先生にも、待合室の人たちにも、大声で伝えられてしまった…。


 何もかもが恥ずかしく、悲しく、惨めで、もう待合室に戻りたくない。

 できることなら、もうこのまま消えてしまいたい、という気持ちだった。


 でも、そんなわけにもいかない…。


 コンコン、コンコンと、またドアをノックする音がした。

「佐伯さん、大丈夫?

 お腹はまだ落ち着かないですか? まだまだ出そう?」

 看護師さんの大きな声が容赦なく響き、せわしなくドアが叩かれる。


「…大丈夫です。もうすぐ行きます…」

 優香はなんとかそう答えて、軟便で汚れたお尻を洗い流した。

 しかし、シャワートイレをあてると、その刺激でまた便意をもよおし、洗ったばかりの肛門から再び熱い水便が噴き出した。

 何度もぶり繰り返しながら、ようやく便が止まると、優香はトイレットペーパーでお尻の水分を拭って、どうにか立ち上がった。


 お腹の張りは浣腸する前よりもいくらか楽になっていたが、下腹はまだズシリと重く、鈍い痛みが残っていた。

 手を洗いながら鏡を見ると、目は充血して、まぶたは赤く腫れ上がり、一目で泣いていたとわかる様子だった。

 優香は少しでも腫れがひくように、冷たい水で何度も顔を洗ってからトイレを出た。


 トイレから待合室に出ると、待ち構えていた看護師さんに、

「たくさん出た?」

と声を掛けられた。


 その大きな声で、また待合室の人たちの視線を浴びているような気がして、優香は恥ずかしさでうつむいた顔を上げることができなかった。


 軟便と水下痢のような便が出たものの、お腹はまだ張りと痛みがあって苦しかったが、待合室でこれ以上相談することは、恥ずかしすぎて優香には到底無理だった。

 優香は小さな声で、「はい」とだけ答えた。


「そう、たくさん出したらスッキリしたでしょう。

 ひどい便秘だったものね。これからは、便秘をしないように気をつけて、浣腸かけないといけないほど溜め込まないようね」

 うつむいたままの優香の顔を覗き込み、満足そうに微笑みかけた看護師さんに、優香は顔を赤らめ、黙って頷くことしかできなかった。


「では、今日はもう診察室には戻らずに、帰ってもらっていいですよ。支払いはあちらの受付でお呼びします」

 二人の会話を聞いてソファから立ち上がり、近づいてきた木下先生に、看護師さんは言った。








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