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保健室(4) 考察(中学2年生3月)

体育の授業が終わり、給食を食べ終えて、内服の薬を飲むと、優香は今日も保健室横の教室に向かった。


莉緒は昨日と同じように、一人気だるげに文庫本を読んでいたが、優香の姿を見ると、

「おはよう」

と笑って、手を振った。

「おはよう」

優香も答えて、隣の席に座る。


「ねえ、保健室登校って、いつも莉緒ちゃんだけ?」

「不定期に来る子はいるけど、レギュラーメンバーは3年生の不良っぽい先輩と、1年生のクラスに馴染めない子くらいかな。先輩はもうすぐ卒業だし、もうここには来ないかも。1年の子は、不登校気味で、最近は週に1回くるかどうかかなー」

「そうなんだ。じゃあ寂しいね」

「うん、ずっと喋らないから、声が出なくなるかもって思う時もあるよ。そういうときは、監督の先生と喋ったり、気分転換に保健室に行ったりね。でも気楽だけどね、机に落書きしたり、浣腸入れてくる人もいないし。靴箱には、飽きもせずいたずらされてるけど」

莉緒はそう言って笑った。

「そっか…。いつまでそんなことが続くんだろうね…」

「どうなんだろ。別にもう慣れたから、どうでもいいんだけどね。前に保健の中原先生に相談したときには、今は思春期だから、みんな性的なことに関心が向きやすくて、浣腸も性的なことと結びつけて考えがちなんじゃないかって。みんな浣腸って言葉は知ってても、経験したことがない子が多いし、なんとなく恥ずかしいことって感じで、隠したりするから、余計に好奇心を掻き立てたり、いろんな想像をしちゃうんじゃないかって」

「そっかー、なるほどね…」

「あとね、私が思うのは、私、帰国子女で転校生でクォーターで、多分みんなから見て、ちょっと異質な存在なんだよね。そういう子をいじめたいとか、異質な分、目立つから、そういう目立つ存在を貶めて屈服させたい、っていう気持ちが、どこかにあるのかなって。その気持ちに、浣腸っていうのがぴったり嵌ってて、浣腸されるのってSMではMだから、私が浣腸されるのが好きだってことにしたら、自分がS側の立場で私を征服出来てるって思えて、気分がいいのかな、とか。浣腸ってポーズも、その後に起こることも、やっぱり恥ずかしいから、私が強制的に恥ずかしい目に遭わされているのを想像して、溜飲が下がるのかな、とか」


優香は、莉緒の理論的な話し方と、状況を客観視する頭の良さ、自分は恥ずかしい治療としか思っていなかった浣腸に対する知識や洞察に圧倒され、うまく相槌さえうてずにいた。


「あ、ごめん…。また私ばっかり喋ってるね、優香ちゃんって、清楚でおしとやかそうなのに、私、そんな人相手に、浣腸の話ばっかりしちゃって…。大丈夫、引いてない?」

莉緒は苦笑しながら言った。


「ううん。洞察力がすごくて、ちょっと圧倒されちゃった…」

優香がそう言ったとき、5時間目の始業のチャイムが鳴り、監督の先生が入って来て、会話は一旦終わりになった。


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