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2章-9

「牛丼、美味しかったね」


店の外へ出た理奈が陽気な口調で練に話しかけた。正直練自身、牛丼の味を覚えていなかった。それでも練が首を縦に振ってしまったのは彼女のテンポに乗せられたからだろう。


「さてさて、次はゲームセンターでも行きますかー」


理奈はわざとらしく遠くを見るような仕草でゲームセンターのある方向へ視線を移した。

いつもの理奈だった。牛丼屋ではなぜかお互いに会話を振ることもせずに黙々と牛丼を食べてしまっていた。その時の理奈から発せられていた「何か」は理奈からは感じられなかった。


「次はなんだ? UFOキャッチャーか? それともプリクラか?」


練はそれっぽい単語を出したつもりだったが、理奈の表情はどこか渋い。彼女はため息をついた直後、自分の意思を声高らかに宣誓する。


「え、コインゲーム一択でしょ」


練はこれまた予想外の展開に目を見開いた。


「女子がコインゲームか。意外だな」


練は思いの丈を言葉に乗せた。すると、理奈はクルッと反対向きに方向転換した。


「ーーーー帰る」


彼女の表情はまたも見えないが、口調がどこかいつもと違う。


「なんだよ、突然」


練は訳もわからず理奈に問う。


理奈からの返事はない。


「おれ、変なこと言ったかな?それなら謝るよ」


練はとっさに出た謝罪とも言えない微妙な物言いに少し違和感を覚えつつ、理奈の反応を伺った。


理奈は深くため息をつくと、練に目線を移した。その目には怒りではなく、物寂しさがこもっていた気がした。


「練くん」

「女の子にそんなに期待してて楽しい?」


理奈の表情と相まって、理奈へ返す言葉が浮かばなかった練は、黙ってうつむいた。


「わたし、帰るね」


理奈の残した一言がいつまでも耳から消えない。そんな気がした。



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