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一応な関係  作者: aotohana
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本音


「わけわかんねぇ」


「私も」


また彼と瞳が重なり、私たちは同時に大きくため息をつく。お互い予想外のことで、一気に力が抜けてしまった。



「とりあえず、寒いし店入ろうぜ」


「うん」




駅前のファーストフード店。

あったかいの飲んでたら、ちょっと落ち着いてきたかも…。


ちらっと颯の様子を見る。


「なに?」


「あ…いや、ごめん」


……。さっきまで、緊張と不安だらけだったから、今もこうやって彼と一緒にいれることに、ほっとしてしまう。



「で、さっきの話だけど、お前の元カレは谷口の兄貴で、お前と谷口はなんでもねぇって?」



「あ…うん、そう」



「けどお前、谷口と仲良すぎじゃね?」



「え!?そう?幼馴染みだし」


なんでそもそもシンのこと、こんなに確認すんだろ。いつも颯、こんなに喋る方じゃないのに。それになんかイライラしてる?



「ねぇ、まさかだけど、私とシンのこと疑ってたりしてないよね?」



私の質問に一瞬黙りこむ。



「あ…いや、…悪い。正直お前らできてっと思ってた」


頭真っ白になった。そんなこと考えもしてなかった。


「いつから?」


「付き合って、わりとすぐ」


颯と別れてからの誤解かと思ったのに…私付き合うとか言っちゃったし…なのに…すぐとか意味分かんない。


「え、だって私、颯と付き合ってたじゃん」


……。


なんで何にも言ってくんないの?

消えたはずの不安がまた押し寄せてくる。


!?


うつむく私の視界に、急に颯の手が伸びてきて…思わず後ろに身体を引いてしまった。颯はそんな私の行動に一瞬戸惑った表情をする。



「悪りぃ、なんかお前具合悪いかと思って…顔色悪いんだけど」



颯は心配して顔を見ようとしただけらしい。

最近、寝不足だったからかな…。ちょっとぼーっとするだけで別に具合悪くないけど。そういや、もっちゃんやシンにも言われたっけ。


「平気、ちょっと寝不足なだけだし」


私は笑って言ったんだけど、


……。


「それ飲んだらやっぱ帰ろうぜ。送るし」


またなんか気まずい雰囲気になってしまった。

心配してくれるし…声も口調も優しい…勘違いしそう。まだ戻れるかもって。





結局颯は黙ったまま、いつも別れる場所…家の近くの公園のとこまできてしまった。先程まで空を舞っていた雪はどこかへ行ってしまった。寒さだけが身体に染み込む。



「じゃ、お前ムリすんなよ、ちゃんと寝ろよ」



行っちゃう…せっかく話そうと思ったのに、肝心なことまだ話せてない…。



「あ…颯待って!!私たち…あの」



気づいたら颯のこと必死に掴んでた。

どうしよう…引き留めたのにうまく言葉が…けど言わなきゃ…。


「…颯、…私のことちゃんと好きだった?」


……。


2人に流れる少しだけの沈黙。そして


「…あぁ」


彼は強い瞳で私を見て、そう言った。



「そ…そっか…そうなんだ…うん」


ヤバイ…泣きそう。私の方が彼から目をそらしてしまう。じゃあ…今は?…言葉にならず、のどの奥がじんとした。



「俺さ…たぶん付き合ってっ時優しくできなかったよな、ごめんな」



今度は少し揺れた瞳で言うと、力なく笑った。私はそんな颯の顔を見たら、何も言えなくなってしまった。



「話…半端だけど、お前具合悪そうだし…」


「けど…けどさ、こんなん、また寝不足なるし」



…だって颯の考えてることよく分かんない。




「俺はさ…」


「別に今も気持ち変わってねぇし、お前のこと適当に付き合ってたつもりもねぇんだけどな」


颯の意外な言葉に…心臓壊されるかと思った。






しばらくの沈黙…。



「お前顔アホすぎ、俺すげぇ恥ずいんだけど」


「だって…颯そんなん言うと思ってもなかったし」


「お前言わないと、なんも分かんねぇみたいだからな…」


ため息まじりに彼は言う。めんどくさそうだし、無愛想だ。



「なっ…お前何泣いてんだよ」



私の視界は溢れた涙で遮られる。

ただ、慌てる彼の声だけが心に響いてきた。


「だって…私も…き…すきだし」


こんな怒りっぽく泣きながら告うとか、ほんと可愛くないと思う。



「お前…あぁ、もう俺拭くのとかねぇぞ」


「い…いよ、べつに…へいき…だし」


恥ずかしさでぷいっと横を向き、鼻声のまま私は強がる。



「お前、実はけっこう泣き虫だよな」



笑いを抑えたような颯の声…優しい。

顔みたい…


けど…私は彼を見れなかった。

彼の指がそっと涙に触れて…その後そのままキスされたから。






「お前ってほんと分かりにくい奴だよな」


「は…はやてに言われたくない…」


「可愛くねぇの」


私たちの前で白い吐息が交互に舞っては消えていった。抱きしめられたら、寒さなんか感じなくなってた。寒さと一緒に今までの重たい気持ちが嘘のように消えてなくなった。



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