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二百四十段 しのぶの浦の蜑の見る目も(2)

(原文)

すべて、よその人の取りまかなひたらん、うたて心づきなき事多かるべし。よき女ならんにつけても、品くだり、見にくく、年もたけなん男は、かくあやしき身のために、あたら身をいたづらになさんやはと、人も心劣りせられ、わが身は、むかひゐたらんも、影はづかしく覚えなん、いとこそあいなからめ。

梅の花かうばしき夜の朧月にたたずみ、御垣が原の露分け出でん有明の月も、わが身さまにしのばるべくもなからん人は、ただ色好まざらんにはしかじ。


(舞夢訳)

第三者が取り持つような結婚は、すべてが実に不愉快なことが多いと思われる。

立派な女を妻としたとしても、身分が低い、醜い容姿、老境に入った男としては、こんな程度の悪い自分のために、何を考えて妻はその身を犠牲にするのだろうかと、その女についてまでくだらなく感じてしまう。

また、自分自身も立派な女と向かい合うことに、引け目を感じてしまうと思う。

それを考えれば、実につまらないことなのである。

梅の花から漂う芳香のなか、朧月夜にたたずみ、恋人の住む屋敷の庭の草露を踏み分けて帰りにつく有明の空の情景を、自分自身の経験から思い出すことができないような男は、そもそも、恋をするなど関わるべきではないのである。


兼好氏は。妻問い婚の時代に憧れていたので、このような結婚観となる。

それと、京都人特有の地方差別、東国差別も根底にある。

つまり京都人でなければ、よほどの高位高官でなければ、「人としては下劣」との判断である。

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