表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
324/338

第二百三十八段 御随身近友が自賛とて(1)

(原文)

御随身近友が自讃とて、七箇条書きとどめたる事あり。みな、馬芸、させることなき事どもなり。その例を思ひて、自讃の事七つあり。

一、人あまたつれて花見歩きしに、最勝光院の辺にて、男の馬を走らしむるを見て、「今一度馬を馳するものならば、馬倒れて、落つべし。しばし見給へ」とて立ちとまりたるに、また馬を馳す。とどむる所にて、馬を引き倒して、乗る人、泥土の中にころび入る。その詞のあやまらざる事を、人みな感ず。


※御随身:上皇・摂政・関白を警護する近衛府の舎人。

※近友:中原近友。堀河・鳥羽帝の御世の人。競馬の名手。

※最勝光院:後白河院の中宮滋子の御願によって建立。その後火事で焼失。以後再建されなかった。現在の三十三間堂や新熊野神社のあたり。


(舞夢訳)

御随身近友の自賛という、七箇条にわたり書きとめた故事がある。

その内容は、すべて馬芸に関するものであって、たいしたものではない。

さて、その前例を思いながら、私にも自賛したい事が七つある。

一 人を多く連れて花見歩きをした際に、最勝光院付近で、男が馬を走らせる姿を見た。

「もう一度、あの馬を走らせるならば、馬は倒れてしまって、男は落馬するだろう、しばらく見ていて欲しい」と、私が言い、全員が立ち止まっていると、その男は再び馬を走らせた。

そして、止めた場所で、馬を引き倒してしまい、男は泥土の中に転がり落ちてしまった。

私の予言が間違いではなかったことに、人はみな、感心したのであった。



兼好氏は見抜いたけれど、素人目にはわからない乗馬における問題があったのだろうか。とにかく兼好氏の予言通りに、落馬事故になってしまった。

しかし、これを自賛するのも、実にたいしたことはなく、どうかとは思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ