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第二百二十三段 鶴の大臣殿は

(原文)

鶴の大臣殿は、童名たづ君なり。鶴を飼ひ給ひけるゆゑにと申すは僻事なり。


※鶴の大臣殿:内大臣九条基家(1203~1280)の通称。歌人でもあり「続古今集」の撰者の一人。


(舞夢訳)

鶴の大臣殿は、幼名が「たづ君」なのである。

鶴をお飼いになられたためと言われているのは、間違いである。



実に短い文になる。

歌人としての大先輩の通称に対する誤解を正したかったのかもしれない。


第二百二十四段 陰陽師有宗入道、鎌倉よりのぼりて

(原文)

陰陽師有宗入道、鎌倉よりのぼりて、尋ねまうで来りしが、まづさし入りて、「この庭のいたづらに広きこと、あさましく、あるべからぬ事なり。道を知る者は植うることを努む。細道ひとつ残して、皆畠に作り給へ」と諌め申しき。

誠に、少しの地をもいたづらに置かんことは、益なき事なり。

食ふ物、薬種など植ゑおくべし。


※陰陽師有宗入道:安倍有宗。正四位下陰陽頭。安倍晴明の子孫。陰陽寮の職員。


(舞夢訳)

陰陽師の有宗入道が鎌倉から上京して来て、我が屋敷に訪ねて来た時のことである。

彼は、まず入って来て、「この屋敷の庭は無駄に広いことは、恥ずかしいことであって、あってはならない事です。道理を知る者は、植物を植えることに努めます。細い通り道を一本だけ残して、全て畑に作りなさいませ」と、忠告してくれた。

本当に、少しの土地であっても、無為にあるだけでは、何の用もなさない。

食物や薬種を植えておくべきなのである。


この段から、兼好氏は広い庭を持っていたと推定が出来る。

ただ、どのような管理だったのか、草木が生えるままになっていたのかもしれない。

おそらく自由に話が出来る関係だったらしい。

それを有効活用したらどうかと指摘され、兼好氏も素直に納得している。


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