表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
298/338

第二百十六段 最明寺入道

(原文)

最明寺入道、鶴岡の社参の次に、足利左馬入道の許へ、先づ使を遣して、立ち入られたりけるに、あるじまうけられたりける様、一献にうち鮑、二献にえび、三献にかいもちひにてやみぬ。

その座には亭主夫婦、隆弁僧正、あるじ方の人にて座せられけり。

さて、「年毎に給はる足利の染物、心もとなく候」と申されければ、「用意し候」とて、色々の染物三十、前にて女房どもに小袖に調ぜさせて、後につかはされけり。

その時見たる人の、近くまで侍りしが、語り侍りしなり。


※足利左馬入道:足利義氏(1189-1254)。左馬頭。母は初代執権北条時政の娘。妻は三代執権北条泰時の娘。北条氏とは深い関係ががある。承久の乱(122年)で武勲を立てた。

※かいもちひ:ぼた餅説とそばがき説があり定まらない。

※隆弁僧正 石清水八幡宮別当。


(舞夢訳)

最明寺入道が、鶴岡八幡宮に参詣なされたついでに、足利佐馬入道の屋敷に、事前に使者を遣わして、お立ち寄りになられたことがある。

その時には、佐馬入道が接待をなされ、最初の御膳には干し鮑、二番の御膳には海老、三番の御膳にはかいもちいを出して、それで終わった。

その座には、そのお屋敷の主人夫婦と、隆弁僧正が主人側として座っておられた。

その折に、最明寺入道が、「毎年いただいている足利の染め物が待ち遠しく思います」とおっしゃられると、

「すでに用意をしてあります」と言って、様々な色の反物三十疋をその御前で女房達に小袖に仕立てさせ、後にお届けなさったのである。

これは、その時に見ていた人で、最近までご存命であった人が、私に語られたことである。



絢爛豪華な接待ではなく、質素な献立と、引き出物も亭主の国の特産品。

お互いを知り尽くした仲で、難しい政治的な含みもない宴会。

これもすっきりとした兼好氏が好む世界である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ