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第百九十九段 横川の行宣法印が申し侍りしは
(原文)
横川の行宣法印が申し侍りしは、「唐土は呂の国なり。律の音なし。和国は単律の国にて、呂の音なし」と申しき。
※横川:は比叡山三塔(東塔・西塔・横川)の一つ。延暦寺東塔の根本中堂の北方、約7キロの道のりにある。兼好氏も修行した経験がある。
※行宣法印 伝未詳。法印は僧位の最高。
※呂:雅楽の音階の一つで、理性的的であるという
※律:雅楽の音階の一つで、感情的であるという。
(舞夢訳)
横川の行宣法印が申したことは、「中国は呂の国である。律の音はない。和の国は律施だけであって、呂の音がない」と、いうことであった。
音楽における中国と日本の比較。
兼好氏自身が唐楽をどれほど聞いたのかわからなく、あくまでも伝聞を記しただけで、何も感想が書かれていない。
単なる伝聞のメモ書きと思われる。




