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第百九十八段 揚名介に限らず
(原文)
揚名介に限らず、揚名目といふものもあり。
政治要略にあり。
※揚名介:名前だけで、実務も俸給も無い介(国司の次官)。
※揚名目:名前だけの国司の四等官。
「年官といって上皇などの収入を確保するために、いくつかの地方官の席が指定され、それに任ぜられた者は、任国には下向せずに、その官の給料は上皇などのほうに行く。こういう場合の揚名の官ができる」玉上琢彌。
※政治要略:惟宗允亮による法制書。全130巻。26巻が現存。寛弘5年(1006)頃成立。
(舞夢訳)
揚名介に限らず、揚名目といふものもある。
政治要略にかかれている。
参考:源氏物語夕顔。
「揚名介なる人の家になむはべりける。男は田舎にまかりて、妻なむ若く事好みて、はらからなど宮仕人にて来通ふ、と申す。」
(揚名介を勤める人の家でした。男は田舎に行っていて、妻は若く派手好きで、その姉妹などが宮仕え女房で、ここに入りしていると申します)
実際は名目だけの官職であっても、地方に出向いた例もあるようだ。
朝廷から給料は出ないけれど、出向いた先からは、様々に貢物があったのかもしれない。




