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第百九十四段 達人の人を見る眼は(3)

(原文)

愚者の中の戯れだに、知りたる人の前にては、このさまざまの得たる所、詞にても顔にても、隠れなく知られぬべし。

まして、明らかならん人の、まどへる我等を見んこと、掌の上の物を見んが如し。

但し、かやうの推しはかりにて、仏法までをなずらへ言ふべきにはあらず。


(舞夢訳)

愚かな仲間うちの戯言であったとしても、真に知識を持つ人の前では、今まで例示してきた様々の反応を、人の言葉や表情から、しっかりと分析されてしまうのである。

そのうえ、深く洞察力を持つ人から見れば、物事の道理を知らない我々を観察するなど、手の平の上の物を見るようなものなのである。

ただし、このような判断によったとしても、そもそもが方便を使う仏法までを、世俗の嘘と断じてはならないのである。


神話や仏法などの、荒唐無稽な話には、その教えのための寓意(方便)が込められているので、「ありえない」と、簡単に切り捨てることには馴染まない。

何故、そのような寓意や方便を使うべき理由があるのか、それを考えるべきなのである。

または、何故、人は、そんな荒唐無稽な話を信じてしまうのか、それが長く続いて来ているのか、それも考えるべきなのだと思う。


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