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第百六十六段 人間の営み合へるわざを

(原文)

人間の営み合へるわざを見るに、春の日に雪仏を作りて、そのために金銀・珠玉の飾りを営み、堂を建てんとするに似たり。

その構へを待ちて、よく安置してんや。

人の命ありと見るほども、下より消ゆること、雪のごとくなるうちに、営み待つ事甚だ多し。


(舞夢訳)

人間が様々に営む事などを見ていると、春の日に雪仏を作り、その雪仏のために金銀・珠玉の飾りを施し、堂を建てようとするのに似ている。

しかし、その堂が完成することを待ってから、雪仏を安置することなどが出来るのだろうか。

人の命は、まだあると思っていたとしても、その足元の見えない部分から消えていく様子は、まるで雪のようであるのに、その間の人があくせく働いて願うことが、とにかく多すぎるのである。


雪仏は雪で作った仏像。立像で丈六(約4.85m)、座像でその半分。現代の雪だるまよりも、かなり大きい。

しかし、雪はやがては消えてなくなる、人間が死んでいくかのように。

立派な雪仏も、人間も、それは変わりがない。

しかし、消えてなくなるもののために、あくせく働いて金銀や珠玉を飾り、立派な家まで造ろうとする。

確かに無駄な努力とも思う。

金稼ぎ自慢、家自慢、地位自慢のために、あくせく働く人もいるけれど、中身は乏しい人が多い。

他人から褒められたい人たちがほとんどで、少しでもそしられると、途端に機嫌を悪くする、そんな子供のような人が多い。

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