表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
209/338

第百四十六段 明雲座主、相者にあひ給ひて

(原文)

明雲座主、相者にあひ給ひて、「おのれ、もし兵杖の難やある」と尋ね給ひければ、相人、「誠にその相おはします」と申す。

「いかなる相ぞ」と尋ね給ひければ、「傷害のおそれおはしますまじき御身にて、かりにも、かく思し寄りて尋ね給ふ、これ既に、その危ぶみのきざしなり」と申しけり。

はたして、矢にあたりて失せ給ひにけり。


※明雲座主:(1115-1183)第55・57代天台宗比叡山座主。権大納言久我顕通の次男。木曽義仲の法住寺合戦の際、流れ矢に当たって死んだ。


(舞夢訳)

明運座主が人相占いの人に相対して、「私は、もしかして武器による攻撃で難を受けることがあるだろうか」と尋ねなさったところ、人相占いの人は、「確かに、その相をお持ちです」と答えた。

明運座主が重ねて「いったいどのような相なのか」と尋ねなされると、人相占いの人は、「そもそも傷害の恐れもない御身分のお方が、そんなことを思いつき、この私にお尋ねになられたのです。それこそが今後の危難の兆しなのです」と答えた。

その人相占いの人の予言通りに、明運座主は矢に当たって亡くなられたのである。


『源平盛衰記』三十四・信西相明雲言からの引用。

後白河院が比叡山に登った折のことで、明雲を予言したのは少納言入道信西。

しかし信西は明雲が座主になった時すでに死んでいる。

兼好氏は怪しい話であり、矛盾を避けるために相人の名を信西としなかったとされている。


この段で、兼好氏が何を語りたかったのかは不明であり、学者も疑問を持つ人が多い。

しいて言えば、政治を比叡山に有利に導こうとする、比叡山の武装化への批判か。

人相占いの予言を気にするのも、本来は将来への執着も捨てるべき出家者としては、あるまじきものなのか。

流れ矢で死ぬのも、占いが当たったと言うよりは、自業自得と言いたいのか。


本人に聞かないとわからない段の一つと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ