表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
198/338

第百三十九段 家にありたりき木は(1)

(原文)

家にありたき木は、松・桜。

松は五葉もよし。

花は一重なるよし。

八重桜は奈良の都にのみありけるを、このごろぞ、世に多くなり侍るなる。

吉野の花、左近の桜、皆一重にてこそあれ。

八重桜は異様の物なり。

いとかちたくねぢけたり。

植ゑずともありなん。

遅桜、またすさまじ。虫のつきたるもむつかし。


※左近の桜:紫宸殿の南庭の階の東に植えた桜。朝儀の時、左近衛府の官人たちがこの南に並んだことに由来。当初は梅だったけれど桜に変更された。 


(舞夢訳)

家に植えておきたいと思う木は、松と桜である。

松は五葉松でもいい。

桜は一重がよい。

八重桜はかつては奈良の都にだけあったけれど、最近は、世に多くなったようである。

吉野の桜にしろ、左近の桜は、みな一重である。

それを考えると、八重桜は異様なものである。

かなり仰々しく、ねじれた姿をしている。

だから、植えなくてもいいと思う。

遅桜も、また興がさめてしまう。

毛虫がついているのも、不愉快である。



すっきり好みの兼好氏は、少々派手な八重桜がお気に召さなかったようだ。

美しかるべき桜に、毛虫がつくなどは論外。

八重桜にも、遅桜にも、毛虫にも、それなりの事情があると思うけれど。

何事にも執着しないはずの遁世人も、何かを嫌いになる自由は、残していたようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ