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第百四段 荒れたる庭の(2)

(原文)

内のさまは、いたくすさまじからず、心にくく、火はあなたにほのかなれど、ものの綺羅など見えて、にわかにしもあらぬ匂ひ、いとなつかしう住みなしたり。

「門よくさしてよ。雨もぞ降る、御車は門の下に。御供の人はそこそこに」と言へば、「今宵ぞやすき寝は寝べかめる」と、うちささめくも忍びたれど、ほどなければ、ほの聞ゆ。


(舞夢訳)

家の中の様子は、それほど荒れているようには見えない。

奥深しさがあり、燈火は奥でほのかに灯されているのみ。

調度品が燈火にきらめいて見え、急いで焚いたとは思えない香りが漂い、心を落ち着けさせる住まいと感じる。

女性が

「門の鍵をしっかりと刺して、閉めなさい」

「御車は門の下にお入れなさい」

「お供の人は、適当な場所で休んでいただくように」

と言うと

「今夜は安心して眠れそうですね」

と侍女がささやく。

小声ではあるけれど、広くはない家なので、かすかに聞こえてくる。



荒れたる小さな家に、女性の「夫」たる男性が珍しく訪れたのだろう。

もちろん、女性は「正妻」ではないだろう。

それでも「夫」が来るからには、見捨てられなかったという安心感もある。

侍女にいたっては、「経済的なつながりの継続による安心」もある。


待ち続ける女性としては、普段は訪れない「夫」ではあるけれど、いつ訪れても失望させないような努力、調度品を磨く、香を焚くなどの努力が大切だったのだと思う。


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