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第百四段 荒れたる宿の(1)

(原文)

荒れたる宿の、人目なきに、女のはばかる事あるころにて、つれづれと籠り居たるを、ある人、とぶらひ給はんとて、夕月夜のおぼつかなきほどに、忍びて尋ねおはしたるに、犬のことことしくとがむれば、下衆女の出でて、「いづくよりぞ」と言ふに、やがて案内せさせて入り給ひぬ。

心ぼそげなる有様、いかで過ぐすらんと、いと心ぐるし。

あやしき板敷にしばし立ち給へるを、もてしづめたるけはひの、若やかなるして、「こなた」と言ふ人あれば、たてあけ所狭げなる遣戸よりぞ入り給ひぬる。


(舞夢訳)

人が訪れることのないような、荒れた家があった。

その家に、とある女性が世間の目をはばかるべき事情のため、特別な何かをするということもなく、籠っていた。

さて、ある人が、その家にお立ち寄りになろうと思われ、夕月夜の薄暗い時間に、ひっそりと尋ねておいでになられた。

すると、その家の犬が大きく鳴き騒ぐのを聞きつけて、使用人の女性が顔を見せた。

「どちらからのお越しなのでしょうか」と聞いて来たけれど、すぐに彼女に取り次がせて、そのお方は家の中に、お入りになられた。

そのお方は、家の中の心細げな様子を見るにつけ、ここに住む女性は、どのような暮らしをしているのかと、実に心苦しく思っていた。

そして、そのまま、そのみすぼらしい縁にしばらくたたずんでおられると、落ちつきのある、しかも若々しい声で、「こちらにお入りに」と言われたので、あけたてに不自由する引き戸から、お入りになられた。


※はばかる事ありて:世間との交渉を慎む事情。近親者の不幸、疾病などが想定されるけれど、それ以外の語れない「男女の事情」もあるかもしれない。




源氏物語にも出て来そうな、いわくありげな、設定。

世間をはばかる若い落ち着きのある女性は誰か、その事情な何か。

訪れるある人は誰か。

使用人の女は初対面なのか、面識がないらしい。

なかなか、謎の設定である。


※荒れたる宿の(2)に続く。

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