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第百段 久我相国は
(原文)
久我相国は、殿上にて水を召しけるに、主殿司、土器を奉りければ、「まがりを参らせよ」とて、まがりしてぞ召しける。
(舞夢訳)
久我相国は、清涼殿の殿上の間で、水を召し上がる際に、主殿司の女官が素焼きの杯をさしあげたところ、「まがりを持ってまいりなさい」と指示し、そのまがりで、水を召し上がった。
※久我相国:太政大臣源通光。歌人。新古今集以下に49首入集。
※主殿司:殿上の雑事を行う女官。
※まがり:確定されていないけれど、木製の器と想定されている。
堀川家出身の太政大臣になるけれど、「まがり」の意味が、木製の器らしいという程度で、未確定。
木製の器であれば、それが古来の習わしだったのだろうか、素焼きの杯よりは質素なイメージがわくけれど、未確定のため、言い切れない。




