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第九十二段 ある人、弓射る事を習ふに(1)

(原文)

ある人、弓射る事を習ふに、もろ矢をたばさみて的に向ふ。

師の言はく、「初心の人、二つの矢を持つ事なかれ。後の矢を頼みて、はじめの矢になおざりの心あり。毎度ただ得失なく、この一矢に定むべしと思へ」と言ふ。

わづかに二つの矢、師の前にてひとつをおろかにせんと思はんや。

懈怠の心、みづから知らずといへども、師これを知る。

この戒め、万事にわたるべし。


(舞夢訳)

ある人が弓を射ることを習うのに、二本の矢を手に持ち、的に向かった。

それに対して、その師匠は

「初心者は、二本の矢を持ってはならない。二本目の矢をあてにして、一本目の矢を射る時に集中力が欠けるからだ。毎回、失敗をせずに、この一本の矢で的に当てると思うべきだ」

と言ったとのこと。

弓を習う人としては、わずかに二本程度の矢であって、師匠の前で一本の矢でも、そこまでおろそかにしようとは思っていなかっただろう。

しかし、二本の矢を持つという行為は中途半端な心のあらわれであって、本人は気が付いていなくても、師匠はそれを見抜いたのである。

この戒めは、全ての事に通じると思う。



弓が「この一本しかない」と思うから、的を外してはならないと真剣になる。

「失敗したら次の矢があるからいい」では、覚悟の程度が問われるのだと思う。

今持っている一本の矢に全力を尽くす、ということは、目の前の対象に全力を尽くすことにも通じる。


表現を変えれば、「一期一会」なのだと思う。

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