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魅惑の湖水浴ツアー(1)

【今回の登場人物】

ムツキ…"雑貨屋 旅のしっぽ"の共同経営者

ミリエ…湖水浴ツアーに当選した家族の一人

「あの、こんにちは……」


「「いらっしゃいませ」」


 この日、"雑貨屋 旅のしっぽ" には見覚えのある顔の女性がやって来た。


「あなたは確か湖水浴ツアーに当選された……」


「はい、ミリエと申します。先日詳しい案内書を頂いたんですが、その……持ち物を念の為に確認しておきたくて。携帯食とかは用意しなくても大丈夫でしょうか」


「大丈夫ですよ。お昼ご飯は現地ですし夕食と朝ご飯は宿で用意しますから。足りないようであれば間食やお菓子は持って来て頂いても構いませんけど」


「そ……そうですか。ちなみに子供が一緒なんですが、念の為に子供にも武器を持たせた方が良いでしょうか」


「湖周辺で魔物が出たという話は聞いていませんので大丈夫だと思いますが、自由行動中に村から出たりされるのであれば……」


「そ……そうですか」


 湖水浴ツアーの出発は二日後。事前に配布した案内にも魔物や食料の心配をしなくて良い旨は書いているが、ここ数日同じような質問をしに来る参加者が相次いでいる。


 普通なら片道四日かかる距離をたった数時間で移動し、魔物からの被害も一切受けないという事が今一つピンと来ないのだろうから仕方ないと言えば仕方ない。


 だからみんな揃って携帯食や武器という発想にたどり着くのかもしれないし。


 とは言っても、万が一何かの理由でバスが立ち往生したり、道を間違えて野営を余儀なくされた時に備えて非常食は人数分積み込んでおくつもりでいる。


 俺の説明を聞いたミリエさんは、納得したのかどうかは定かではないが帰って行った。


「武器や食料持ってくる人いるかな……」


「でも荷物入れは大きいですし大丈夫ですよねっ?」


「貴族と違って荷物もそこまで多く無いだろうしね」


 今回の湖水浴ツアー参加者に貴族はいない。貴族だからと言って選考が優遇される訳では無いので母数の多さから十六名の一般庶民が選出された、ただそれだけ。


 そして貴族の荷物はやたらと多い。何が入っているのかは知らないが、今回は貴族が居ないので荷物の心配は無いだろう。


「そろそろ準備をしておかないとだな……」



―― そして迎えた湖水浴ツアー当日


 その日、"旅のしっぽ"の店内は朝から沢山の人で賑わっていた。ツアーに参加するのは十六名だけだが、その家族やら親戚やらの見送りも多く、全く関係の無い人達もバスの出発を見送ろうと集まっていた。


「いらっしゃいませ~。あ、ありがとうございます!」


 ムツキはバスの絵が描かれた飲み物や菓子類を忙しそうに売っている。


 この王都では食品物価が安いのは周知の通り。だがムツキの売る商品はバスの絵が描かれているだけでどれも相場の数倍、観光地価格……いやただのボッタくりかもしれない。


「バスの中で使わない荷物はこちらへお願いします~」


 俺は乗客から荷物を預かりトランクルームへ収納する係。ミスズには扉の前で乗客の確認と座席の振り当てをして貰っている。


 予想に反して武器を持って来ている人は少なく荷物はみんなコンパクト。トランクルームもほとんどが空いているという状況だった。


「シュウ君、さっきのお客さんが最後です。全員揃いましたっ」


「ありがとう、じゃあそろそろ出発するか」


 王都への帰着は明日。これから一泊二日の湖水浴ツアーへ出発だ。

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