ミスズの運転(2)
「シュウ君、これで良いんですかっ……なんかシュウ君が運転する時と違って音の割にはスピード出てないような気がしますけど」
「ひとまず今はこれで行こう」
ミスズにはまだギアチェンジを教えていない。大型バスはアクセルを踏めば全部自動でやってくれる最近の乗用車と違い色々とやる事があるのだ。
それでもバスは着実にオームボアへと追い付いて行った。門では衛兵の一人が必死に門を閉め、もう一人が戦闘態勢で待ち構えている。
《ドン ドン ドンドンドンッ》
もう少しで王都の門……と言う所で五匹のオームボアを追い付いたバスが跳ね飛ばした。
「ミスズ! ブレーキ!!」
《キーーーーッ》
急ブレーキをかけたバスは、門の前で武器を握りしめて立ち尽くす衛兵の手前でなんとか停止した。もう少しブレーキが遅ければ人身事故になっていたかもしれない……。
バスと接触し跳ね飛ばされたオームボアは周辺に倒れ、いつもの通りピクリとも動かない。
「衛兵さん大丈夫ですか!?」
「あ、ああ。二つの意味でびっくりしたが俺たちは大丈夫だよ」
二つの意味と言うのは、五匹のオームボアが接近してきた事とバスが接近してきた事だ。だがまだ気を抜く訳にはいかない。この間と同じ失敗を繰り返さないよう俺は守衛さんにこう告げた。
「あのオームボア達は気を失っているだけでまだ完全には死んでいません。念の為にとどめを刺してきて貰えませんか?」
「分かった」
衛兵の一人が周辺に散らばるオームボアにとどめを刺した上で死体を持ち帰って来た。
「いやーやっぱりバスって凄いよな。一瞬で五匹のオームボアを倒しちまうんだもん。オームボアは俺から売却の方へと回しておくから今度取りに来な……ってあれ、運転してたの兄ちゃんじゃないのか!?」
早速バレてしまった。まだ適当な言い訳も考えていなかったのに……。
「あーそうなんです」
「そういや今日は運転の練習をするって言ってたけど、その子の練習だったのか。実は俺達ここから見てたんだけど、いつもの感じと違って何かぎこちないなって思っていたんだよ」
「ハハハ……」
ミスズは眉をぴくぴくさせながら愛想笑いをしている。ぎこちないって言われてちょっと怒っているのは間違いなさそうだ。
「でもバスって兄ちゃんしか運転できなかったんじゃなかったっけ? 確か噂でそんな話を聞いたような気がしたけど」
妙に物覚えの良いその衛兵は早々とその事に気付いてしまった。まだ設定を考えていないのに……
「あっこれは……俺と俺に近しい、バスに認められた存在の人にだけ操る事ができるんですよ」
雑な設定だけど、とっさに思い付いたのはこの程度の物だった。そしてそれを聞いた衛兵はニヤリと笑う。
「やっぱり兄ちゃんとお嬢ちゃんはそういう事だったんだな。俺は最初会った時からそうだと思ってたんだよ」
何の事を言っているかは分からないけど、それを聞いたミスズはやはり少し赤くなっている。大丈夫だろうか……。
「なあに誰にも言ったりしないから頑張りな。それと助けてくれてありがと。また危ない時は宜しく頼むよ」
そう言うと二人の衛兵はオームボアを抱えて奥へと消えて行ってしまった。
「ミスズ……無事に魔物も倒せたし、いい運転だった!」
「ホントですかっ! 有難うございますっ」
本当に嬉しそうな表情のミスズは最後にこう付け加えた。
「でもまた前みたいに一緒に運転しましょうね。私がペダル踏みますからシュウ君はハンドルでっ」
「えっ?」





