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大量のオームボアの死骸が消えた理由(5)

【今回の登場人物】

ムツキ…"雑貨屋 旅のしっぽ"の共同経営者

 ミスズの看病の甲斐もあって、なんと桃耳ウサギは夕方に息を吹き返した。


 そして同時に仮説が立証された。つまりバスに接触しただけでは魔物は死なない。どのぐらいの時間で生き返るかは分からないが、今後魔物を持ち帰る時は必ずとどめをさす必要がある。


 そして、生き返ったーと大喜びするミスズとムツキ。


 検証へ協力してくれた桃耳ウサギに感謝しつつ、無害な魔物なんだし森に放してあげようと俺は思っていた。しかしそれに二人は大反対、どうしてもお店で飼いたいと言い出した。


「ちゃんと面倒見ますからっ」


「私が散歩に連れて行きます!」


 ウサギって散歩させなきゃダメなの? この世界の事は良く分からないけど、拒否する理由も無いし桃耳ウサギはお店で看板ウサギとして飼われる事になってしまった。


 さて、今日はバスツアーの当選者宅へ通知を届けに行かないと。


「大丈夫ですよ私が届けに行きますからっ」


 ミスズは俺の身体を気遣っているのかそう言ってくれるが、もうだいぶん回復したし六軒だけとは言え王都は広い。バスで回った方が効率的なので一緒に行く事にした。


「ごめんね昨日は急に運転を手伝って欲しいなんて言って」


 やはりバスに乗ると顔を赤らめ目を逸らすミスズに俺は謝った。


「いえっ……えっ? 何で謝ってるんですか?」


「「……?」」


 お互いの言っている事が分からず二人の頭上には、はてなマークが浮かんでいた。


「俺がいきなりバスの運転を手伝えって言った事、怒ってるんじゃないの?」


「えっ何でですか?」


「ミスズ顔が赤いし、すっごく怒ってるのかなって……」


「そ、そんな事無いですっ!!」


「それだったら良いけど……」


 ぎこちないやり取りをしながら俺たちは当選者の家を順番に回って行った。どうやらミスズは怒っていた訳では無さそうだし、また運転をやってみたいとも言っている。


 もし俺に何かあった時、ミスズがバスを扱う事ができたら状況はだいぶん変わって来るだろう。今度どこか広い安全な場所に行ってミスズにも少し練習して貰おうかな。


「こんにちは、"旅のしっぽ"の者です。バスツアーの通知でお伺いしました」


 六軒全てに通知を配り終えた俺たちは店へと戻った。


「これで後はバスツアーの本番を待つばかりですねっ」


「ミスズはまた車内販売するの?」


「しますよっ! でも今回はムツキちゃんのお店で取り扱いのある商品を売ろうかと思っています。湖水浴ですし浮き輪とかも多めに用意しておきたい所ですね」


 これでバスツアーの準備は完了。開催は一週間後、それまでに足が治ると良いな。そうそう、それまでにミスズと一緒にバスの練習をしておかないと。


「明日一緒に南の草原でバスの運転でもやってみない?」


「本当ですかっ、やりますやります!」


「……という事でムツキ、明日も留守番お願いします」


「はいはーい、そして気を付けて下さいよ。またボロボロになって帰って来るとか止めて下さいね」


 こうして俺たちは明日からミスズの練習を始める事になった。完璧にバスを扱える必要は無い。ドアの開閉は既に知っているので、魔物が出た時に備えてエンジンのかけ方と……最低限の運転ができればそれで大丈夫だろう。


「そういえば前に私があげたお菓子の試作品どうでしたか?」


「あの旅で不足する栄養を……ってやつ?」


「そうです! 試供品が好評なのでネネさんと商品化してみようって話しをしているんです」


 ああ、やっぱりあれにはネネさんが絡んでいたのか。そりゃムツキは雑貨屋で菓子の知識なんてないもんな……。でもまさか魔物のエサにしましたとは言えないので、適当に濁す事にした。


「あのお菓子のお陰で助かる命もあると思うよ」


「えーそれは大げさ過ぎですよ。まあ確かに旅路での栄養不足は死に至る可能性もあるかもしれませんが……」


 俺は間違った事は言っていない。うん。

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