情報網舐めたらダメですよ!
街中で冒険者が暴れてお店の一部を損傷させてしまったことは、まもなくギルドを統治するサイレント侯爵のもとに届いた。
数日後、ジルさんは侯爵から呼び出され、今後の対策を余儀なくされ、なぜかわたしに相談に来た。
イヤイヤ、いくら賢者の孫でも喧嘩を止める方法なんて知らないよ。むしろ、後ろ暗い陰謀やいじめより、スカッとして良いと思う。
冒険者なんて半分以上は脳筋で血気盛んな人ばかりだ。今までも年に数回はこういうイザコザがあり、ギルドではその都度対処してきた。ただ、なぜか今回はサイレント侯爵の預かり知ることとなり、コトが大きくなっているようだ。
前世、教員の体罰が問題になり、逆にずる賢い子どもたちの授業妨害や教師いじめを知っているわたしとしては、イライラや理不尽なことへの吐口が、ちょっとした拳の対話で済むなら、その方がはるかに健全だと思っている。
それなら、とわたしが思ったのは、万が一のことがあれば防壁や結界を張らせれば良いのでは?と言った対策だった。実際、冒険者2人の喧嘩を見ていた街の人たちの中には、危険視する人より、応援する人の方が多かった。
血気盛んな冒険者同士のバトルは、自分が被害に遭わない限り、街の人たちにとってちょっとしたお祭り感がある。日々鬱憤が溜まっている人たちにとって、時折こういったことがあると、ちょっとした余興のようで、楽しみなのかもしれない。
やっぱり拳での対話って大事だね!
わたしが防御結界の意見を口にすると、ジルさんは納得しないながらも、一応考えてくれそうだ。
「結界が間に合えばだがな。」
「たしかに。」
拳の対話には苦笑していたが。
ただ、今回のように冒険者の殴り合いについて、侯爵が出てくるなんて珍しいと言うのがジルさんとわたしの共通意見だった。
誰か命を落とすようなことがあるなら別だが、こんな喧嘩は冒険者でなくとも、街の人同士でも起こること。
むしろ、お店の破損や一般の人の怪我に関しては、「ギルドが責任を持って謝罪と弁償をする。」という決まりがあり、普通の喧嘩よりも責任の所在がしっかりしていで安心という人もいる。それだけに侯爵に呼び出されるなんて。こんなことは、ジルさんにとっても初めてのことだった。
互いの認識を確認したわたしとジルさんは、しばらく首を傾げていた。
「そういえば、昨日誰かと会っていたのか?」
ジルさんが唐突に聞いてきた。別に隠すことではないので、祖父の弟子とお茶していたことを話した。すると、ジルさんが訳知り顔になり
「そーいうことか。」
と小さく呟いた。
「??」
「え?わからない?」
「わたしですか?」
「たぶん。」
「もしかして、わたしのせい?」
「おそらく。」
「えー?でもー、そんなー。」
祖父の弟子が大切なお嬢様がいる街中で、こんな危険なことが起こった、と祖父または侯爵に告げたのでは?
と言うのがジルさんの推測。
「でも、数日前のことですよ?いくら祖父でもそんな早く聞いて、サイレント侯爵に知らせたりできないでしょ!」
とわたしは返した。ただ、ジルさんには言わないが、一緒にいたのは確かにブラントン侯爵家のテイルだ。ありえるかも。そして、ジルさんには
「貴族の情報網、舐めるなよ!」
と凄まれてしまった。




