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旅する鍛冶師と勇者たち。  作者: バドライ
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緑巨人

今日は頑張って長めに書きました。GWでサボッ…ゴホン。休んでいた分、楽しんで頂ければ幸いです。

ズドォォン!という爆発したかのような衝撃音。和彦を狙ったキングトロールによる攻撃である。


「クッ…こいつ、想像以上に力が強い…!」


片手に根本から抜いた木を持った巨人は上から見下ろされているというのもあり、足がすくみそうになるほどの恐怖を感じさせる。


「カズヒコッ!右からトロール!」

「ッ!」


ジェイマーのおかげで間一髪回避した和彦。つい先程まで立っていた場所には小さな(くぼ)みができていた。


「…一応礼は言っておく。」

「おう!」


その後もトロールとキングトロールによる連携攻撃は続く。しかし、こちらも全く反撃しないわけではない。



「くらうでござる!」


シュッという風を切る音が聞こえた強志。直後、目の前にいたトロールが苦しそうな悲鳴をあげる。


「グアァッ!」


右肩に刺さった矢を無造作に抜き取ると、矢を放った狙撃者を睨む。


「太郎!そっち見てる!」

「カイン殿、護衛頼むでござる!」

「わかっただ!」


こちらも見事な連携によりトロール達に少しずつではあるが確実にダメージを与えている。


「ツヨシ君、さがって!」

「了解!」

「【アイシクルプリズン】」


ヘクセに言われた通りさがると、トロールの体が氷に包まれ、巨大な体の真ん中に小さな切り傷ができた。


「今だよ!壊される前に早く斬って!」

「うん!【ダークブレス】!」


ナイトメアドラゴンから入手したダークブレスにより剣先は闇色のオーラのようなものが纏わりついている。ヒビが入りつつある氷の牢獄(アイシクルプリズン)の中に囚われたトロールを全力で斬ろうとした時――


パリンッという音とともにヒビが広がり、最後には牢獄が砕け散った。


…だが、強志は怯える事なくトロールに斬りかかった。

悲鳴を上げる間もなく、傷口に命中した剣により一瞬にして真っ二つに切り捨てられた。



その頃、すぐ近くでジェイマーと和彦はキングトロールの相手をしていた。


「【覇炎剣(はえんけん)】」


ジェイマーの剣に炎が纏わりつき、その剣はキングトロールの足に命中する。

確かにダメージは入った。しかし、キングトロールはその程度では止まらない。


「グオオォォ!」


怪我をした足を振り上げ、ジェイマーの腹を蹴り上げる。


「ゴフッ…」


口から鮮血が飛び散り、腹を抱えて倒れ込む。


「ジェイマーさんっ!」

「ここは俺が引き受ける。お前は早く回復してもらえ。」

「あ…ああ…頼んだ…」


苦しそうな声を上げるジェイマー。たった一撃くらっただけでもこのダメージ。2回もくらえば命は

無いだろう。


「…おいお前、クソデカ野郎。ここからは俺1人で相手してやる。お前なんか1人で十分だ。」


和彦の挑発が効いたのかキングトロールは木を投げ捨てて


「グオァァッ!」


と怒り、両手を組んでハンマーのようにした後、和彦にそれを振り下ろした。


「【辻斬り】」


地面を滑るように移動し、振り下ろされる拳をギリギリで躱した和彦。背後から凄まじい衝撃音と

衝撃波が襲ってくるが、それすらも使いさらに加速する。腹をめがけて一直線に跳ぶ。


「オラッ!」


振り下ろされる刀。飛び散る赤い液体。鉄の匂い。

だが、命中したのは脇腹だった。当たる直前に体をそらしていたのである。


「…一筋縄ではいかないって事か。」


そこに2体のトロールが現れ、和彦に棍棒を容赦なく振り下ろす。


「!!」


さすがの和彦もここまでかと思い、目を閉じた。


しかし、いつになっても振り下ろされることのない棍棒に違和感を覚えた和彦は目を開く。


そこには、トロールの棍棒を苦しそうな顔で防いでいる強志とジェイマーがいた。


「良かった…!間に合った…!」

「この前の借り、返したぜ!」

「…お前ら…」


ナイトメアドラゴンの時に助けに入った和彦のように、2人に助けられたようだ。

棍棒の軌道を逸らした2人。だが、囲まれているのでじりじりと追いつめられる。


「まずいな…このままじゃ俺達潰されるぜ。」


ジェイマーの焦りを感じさせる一言。


「そうはさせないでござるよ!」


太郎の放った矢が見事にトロールの目に命中し、トロールは目を抑えながら倒れる。


「今でござる!」

「おう!」


倒れたトロールの上を走り、何とか離脱する。


「サンキューな!」


仲間を2体倒されたキングトロールは怒りのあまり地面を拳で殴りつけた。

当然そこには半径10メートルほどのクレーターが出現した。


「まずいだよ!怒ってるだ!」

「あれはかなり怒ってますね…」


キングトロールの怒りに思わず怯んでしまいそうなくらい恐ろしかった。

今怯めば命は無いのは分かっていても恐怖という感情はそう簡単に消せるものではない。


「グオオオォォ!」


突進してくるキングトロールが狙っていたのはカインだった。


「わわわっ、おら何もしてないだよ!」


カインの言葉が届くはずもなくさらに加速するキングトロール。


「【スピードアップ】!カインさん、いくらなんでもこの攻撃は危険です!逃げてください!」

「わ、わかっただ!」


命掛けの鬼ごっこ、とでも表すべきか。

トロールもただ茫然とキングトロールを眺めていた。


「【アイシクルプリズン】【アイシクルプリズン】【アイシクルプリズン】!はぁ…はぁ…」

「そろそろやめとけって。魔力切れ起こすぞ。」


ヘクセはジェイマーの隣でひたすらキングトロールの動きを封じようとしていたが、

一瞬にして氷が砕かれる為、ほぼ無意味となっている。


太郎はひたすら弓を乱射するが全て躱されている。


「まずいな…このままじゃカインが危ない…」

「ああ。アイツもそろそろ体力が限界だろう。早く助けないと危険だ。」


とは言ったものの、全く作戦などないのである。


「…あれ?なんかこっち来てる?」

「…アイツ、向かってきてるな。」

「え?マジ?」

「マジだ。」

「ひいいいぃぃっ!助けてほしいだぁぁぁ!」

「「うわあぁぁぁ!」」


巻き添えをくらいそうになる2人。さらにサクロが追い打ちをかける。


「【グレードアップ】【グレードアップ】!お二人とも、ファイトです!」

「げっ…アイツ…スパルタかよ…」

「意外とスパルタだね…」

「うわあぁぁぁっ!」


カインが2人の間を通ると、キングトロールは怒りの矛先を2人に向けた。


「トロールは俺達に任せろ!お前らはキングを任せた!」


とジェイマーの一言。

このパーティー、意外とスパルタが多いようだ。

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