仲間との別れ、新たな出会いの予感
「さて、そろそろ行くか。」
朝食を保存食で済ませたジェイマー達は、{イニーツェト}へと向かう事にした。
「あのさ、僕…戦闘で役に立てそうにないからさ、イニーツェトで仕事を見つけたいと思うんだ。」
突然の一言で全員が固まる。
「…そうか。俺達は別に戦闘で困っていないが、それでもか?」
「うん。皆との旅は短かったけど、楽しかった。でも、このままだと皆に頼りっぱなしになってしまうし、それだとダメ人間になっちゃうから。」
「そうですか…ツヨシさん、頑張ってくださいね!」
「ツヨシぃ、おらが少しだけお小遣いあげるだぁ。これで少しの間は生きていけるだよ。」
ジャラジャラと音の鳴る革袋を手渡される。
「まだちょっと早いけど…でも、ありがとう!」
「がんばってなぁ」
「うん!」
「…なぁ皆、ちょっとしんみりするのはいいけど早くない?」
空気の読めないヘクセの発言に、ツヨシ以外の3人が冷たい視線を送る。
「ちょ…冗談です。はい。ごめんなさい。」
「ア、アハハ…」
数秒の沈黙が続いた。
「さぁて、そろそろ行くか!」
こうして5人は{イニーツェト}へと旅立った。
橋を渡り、途中で出てきたスライムを倒し、緩い坂道を超えた所でようやく街が見えてきた。
「あれがイニーツェト…」
「おら、ツヨシと別れるのはやっぱり悲しいだぁ…」
「そりゃ俺もだよ…」
「まぁ、僕も少しは悲しいかな。」
「短い間でしたが、楽しかったですね…」
それぞれの思いを口に出す。
それからおよそ30分歩き、ついに関所に到着し、税を払って中へ入る。
「ツヨシ、これでお別れだな…まあ、しばらくはこの街にいるけど。」
「あ、じゃあ仕事決まったら教えに行くから宿屋教えてよ!」
宿屋の場所を教え、少しだけ雑談をして。
「お仕事、早く見つかるといいですね。」
「早く見つけて、おら達が出る前に伝えにくるだよ?」
「僕達は大体4日くらい宿屋にいるから。…グスッ」
「お前泣いてんの~」
「…ないてないさ。」
「じゃあなんで眼鏡外して服を目にあててるんだよ…」
「目にゴミがはいっただけさ。」
「…ちょっと名残惜しいけど、そろそろ僕は行くね。バイバイ!」
「おう!」
ヘクセをいじる4人を置いて、僕は1人で先に駈け出して行く。
(さてと…まずは武器を買おうかな…武器がないと外じゃ生きていけないし。)
そう思い、近くにいた人…というか獣人(?)に聞く。
「それならここを右を見ながらまっすぐ進むと{防具と武器の店ウィン}とかかれた看板がある店があるから、そこに入ると良いよ。あそこは鍛治屋の見習いが武器を作るから、安い武器が多いよ。店主のウィリアさんがいるから粗悪品は店に出ないしオススメだよ。」
「ありがとうございます!」
教えてもらった通りに進むと、{防具と武器の店ウィン}と書かれた看板がある店を見つけた。
大きな剣と金槌が目立つが、それ以外は至って普通の店に見える。
そこで強志は気付いた。窓に貼られた紙、そこに書かれた文字。
それは確かに『鍛冶師になりたい方募集中。ウィリアが直接教えます。』
と書いてあった。




