ファンデーションの砂漠に閉じ込めて⑤
取材から何分ほど経っただろうか。
真冬は地下三階に来ていた。
地下一階で行われている取材の声は微かに聞こえる程度。
味気のない壁に飾られた色とりどりの世界。
それらは全て彼がゼロから作り上げた物質・人間・世界。
何ら参考にすることなく、想像を具現化したモノ。
しばらくそれらを眺めていると、あることに気付く。
「これは……扉……?」
如何にも『開けてみろよ』と言わんばかりのそれは扉にしか見えない。
壁と同化していて気付かなかったが、きっとそうだ。
「……何だ……?」
押しても引いても開かない。
ただ、立入禁止とも書いていない。
鍵がかかっているわけでもない。
扉が重いわけでもない。
「にひっ。」
立入禁止でないならば、開けても問題ないだろう。
そう思い、扉に暗示をかける。
「……暗示は効くみたい。」
造作もなく開いた扉。
その奥はひたすら暗闇。
せっかく開けたのだから何があるのか確かめてみたい。
だから足を進める。
「……懐中電灯、あった。」
足下を照らす。
ところどころに錆びた工具のようなものが落ちている。
虫の死骸も落ちている。
非常に劣悪。
間違っても裸足は厳禁だ。
好奇心の泥沼に引きずり込まれてしまった真冬。
既に取材のことなど忘れ去っていた。




