ファンデーションの砂漠に閉じ込めて④
「す……素晴らしい作品ばかりだ……。
芸術に関してはそこまで詳しくないですけど……それでも凄いということは解りますよ。」
杮が絵画をひとつひとつ写真に収めながら言う。
地下室───袋布 斎造のアトリエには油の匂いが充満していた。
袋布はと言うと、アトリエの奥の椅子に座っている。
顔はとにかく『平凡』で、良くも悪くもない。
だが目の下には抉ったような傷があり、鼻や耳からは沢山のピアスがぶら下がっていて、歯はとても鋭い。
結果、まるでキュビズムの絵画のような派手派手しい顔面が出来上がっている。
「そうでしょう、素晴らしいでしょう。」
「はぁ……。」
杮は『自分で言うか』というような顔をした。
「……君、もしかして『そんなことないですよ』という返事を期待していたのか?
そーゆー返事をしていれば、満足したのか?
だが私は先程言った通り謙遜が嫌いなんだ。
大体否定されるのを見越して褒めることに何の意味がある?
私は思ったことを、実直に、嘘偽りなく伝えてやっただけだ。
これこそ本来人間があるべき『素直』な在り方だろう。
実力がありながらそのことを否定する人間というのは『相手に好かれるため』にそう振る舞っているだけだ。
決して素直じゃない、ただの大嘘つきだ。
人はいつしか『ついていい嘘、悪い嘘』などと勝手な区別をするようになった。
だがそんなものは嘘をつく側の人間のエゴに過ぎない。
相手を欺き続ける罪悪感から逃れるための大義名分だ。
嘘で相手をぬか喜びさせ、本人はさぞ満足だろう……だがあまりにも自分勝手だ。
ちっぽけな自己満足のために他人を利用するなど浅ましいにも程がある。
杮さん……さっさと取材して帰ってくれ。
私は君のような善人気取りのクズが非常に嫌いだ。
……本来なら今すぐ追い出してるところを、譲歩してるんだ。
あまり私を怒らせるなよ、取材すら出来なくなるぞ……永遠にな。」
「お、恐ろしいことを……。」
確かに、思ったことを正直に言っているらしい。
彼は心の底から杮を嫌っている。
「で、では……取材を始めます。」




