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第8話 スパイは怖い
話し終え、トーコに目を向けると、彼女は静かに口を開く。
「そう」
それだけだった。
「……信じるのか」
「えぇ」
「どうして……」
「信じてほしそうだから」
彼女はじっと俺を見ている。口元は笑っているのに、まるで探るような視線だ。
「……」
「違うの?」
トーコは首を傾けて俺を覗き込む。
「いや……」
仲間を見殺しにしたと思われるような俺を、誰が信じるのか。
だから黙っていたし、それで良かったはずだ。
でも今、その言葉だけで。
ほっとしている。
信じてほしい。
そんな当たり前のことすら、俺はわかっていなかったらしい。
「……あんたの言う通りだ」
「認めちゃうの」
トーコはイタズラっぽい笑みを浮かべる。
「おかしいか?」
「いいえ?……スガルさんが強いのは、戦闘だけじゃないのねぇ」
トーコは嬉しそうに紅茶を口に含んだ。
「これから、よろしくね」
「スガルでいい」
「よろしくね、スガル」
これだから、スパイは怖い。
俺は落ち着かなくて、タバコを咥える。
煙を吐き出した頬は、緩んでいた。




