第5話「始まりの春――五つの恋が動き出す」
いつも本作品をお読みいただき、ありがとうございます。
学校編も、いよいよ最終話となりました。
ここまで、一眞が送る「普通の高校生活」と、日本最高峰のアイドルプロジェクト「Five Melody Project(FMP)」という二つの世界を描いてきました。
学校では、アイドルたちに憧れるごく普通の高校生。
放課後は、トップアイドルたちの素顔を知る数少ない存在。
この二つの日常は、まだ誰にも知られていません。
そして今回、一眞の日常は変わらないまま、少しずつ新たな物語への扉が開き始めます。
プロローグの締めくくりとなる学校編最終話。
ぜひ最後までお楽しみください。
翌朝。
午前七時四十五分。
春の柔らかな陽射しが街を包み込み、一眞はいつも通り高校への通学路を歩いていた。
昨日の合同レッスンが夢だったかのように、目の前には穏やかな日常が広がっている。
「おはよう、一眞!」
後ろから元気な声が聞こえた。
振り返ると、佐伯健斗と大野翔太が駆け寄ってくる。
「おはよう。」
「昨日は何してた?」
「家でゆっくり。」
「いいなぁ。」
健斗はスマートフォンを取り出した。
「見て見て!」
画面にはFive Melody Project公式SNS。
『FMP合同レッスン終了。本日もありがとうございました。』
その文字と共に、五つのグループ全員が並んだ後ろ姿の写真が投稿されていた。
「これ見た!?」
「昨日の夜、投稿されたんだ!」
「うん、見たよ。」
もちろん、一眞はその場にいた。
しかし、それを口にすることはできない。
「俺さ!」
「いつか合同ライブ行くのが夢なんだ!」
「絶対泣く。」
翔太もうなずく。
「俺も!」
「四十人全員が同じステージって最高だよ!」
そんな話をしながら三人は校門をくぐった。
すると校内は朝から賑やかだった。
「あっ!」
「FMPの新曲ランキング一位だ!」
「テレビでも特集されてた!」
「今年の全国ツアーも決まったらしいよ!」
「応募しなきゃ!」
「倍率やばそう!」
一年生も二年生も三年生も。
廊下ですれ違う生徒たちの話題は、やはりFive Melody Project一色だった。
教室へ入ると、女子グループも盛り上がっていた。
「昨日の配信見た?」
「見た見た!」
「白雪澪ちゃん可愛すぎ!」
「桃井音羽ちゃんの歌声鳥肌だった!」
「春川さくらちゃん最高!」
「一ノ瀬花音ちゃんの笑顔反則!」
「天宮ひなたちゃんも!」
教室中に笑顔が広がる。
その様子を見て、一眞も自然と笑みを浮かべていた。
(みんな、本当に応援してるんだな。)
そこへ担任の山城先生が教室へ入る。
「おーい。」
「席に着けー。」
ホームルームが始まる。
「来月の校外学習について説明する。」
生徒たちは真剣に話を聞き始める。
しかし休み時間になると。
「健斗!」
「今度のFMPライブ応募する?」
「もちろん!」
「家族全員分応募する!」
「俺も!」
「もし当たったら学校休む!」
「それは駄目だ!」
教室は再び笑いに包まれた。
昼休み。
中庭で昼食を食べる一眞たち。
「一眞。」
「ん?」
「もし奇跡が起きてさ。」
「何?」
「FMPの誰かと話せるなら誰選ぶ?」
「急だな。」
「いいから!」
「うーん……。」
一眞は少しだけ考えた。
(昨日、四十人全員と話したんだけど……。)
もちろん言えない。
「一人なんて決められないかな。」
「だよな!」
「俺も!」
「全員神だもんな!」
三人は笑い合った。
放課後。
帰宅する生徒たちを見送りながら、一眞は一人校門を出る。
その時だった。
ブルルル……。
スマートフォンが震える。
送り主は――
『柊木沙織』
『今日も来られる?』
『みんな、一眞と話したいって言ってるよ。』
一眞は思わず笑った。
『行くよ。』
そう返信すると、すぐに返事が届く。
『待ってるね。』
電車へ乗り込み、昨日と同じようにFMP本部へ向かう。
その頃、本部では――。
「一眞くん、今日は来る?」
「来るって!」
「やった!」
「今日は学校の話いっぱい聞こう!」
「この前のテストどうだったかな?」
「文化祭ってもう準備始まるのかな?」
四十人のメンバーが楽しそうに話していた。
その様子を見ていた安本康晴は優しく微笑む。
「みんな、本当に一眞くんが好きだね。」
沙織も笑顔になる。
「昔からみんなの弟みたいな存在でしたから。」
「でも……。」
安本は静かに続けた。
「このままでは終わらないだろう。」
「ええ。」
「これから、一眞くんは五人の少女と、特別な出会いを迎える。」
「その出会いが、彼自身の人生も、Five Melody Projectも、大きく変えていくことになるでしょう。」
沙織は窓の外を見つめ、小さく微笑んだ。
「きっと素敵な春になります。」
夕暮れ。
オレンジ色に染まる空の下、一眞を乗せた電車はゆっくりと本部の最寄り駅へ到着する。
まだ彼は知らない。
これから出会う五人が、自分の人生にとってかけがえのない存在になっていくことを。
そして――。
幼い頃からの想い。
新たな出会い。
すれ違い。
支え合い。
秘密。
五つの恋が、この春、静かに動き始める。
後書き
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
これにて、プロローグ「学校編」全5話は完結となります。
学校では、ごく普通の高校生として過ごす柊木一眞。
その一方で、放課後には「Five Melody Project(FMP)」の本部で、日本中が憧れるトップアイドルたちと交流するという、誰にも知られてはいけない二つの日常が描かれました。
また、学校ではFMPに憧れる生徒たちの様子や、一眞が秘密を守りながら日常を送る姿を通して、本作の世界観も少しずつご紹介することができました。
ここから物語はいよいよ本編へと進みます。
次回から始まる**第一章「HONEY BLOOM編」**では、幼い頃から一眞を知る少女との再会をきっかけに、最初の恋物語が動き始めます。
さらに、その後も
・第二章「SUGAR RIBBON編」
・第三章「CHERRY SMILE編」
・第四章「MILK CROWN編」
・第五章「PEACH MELODY編」
と、それぞれのグループを中心とした物語が続いていきます。
五つのグループ。
五人のヒロイン。
それぞれ異なる想いと秘密が交差しながら、一眞の青春は大きく動き始めます。
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次回より始まる第一章「HONEY BLOOM編」も、ぜひよろしくお願いいたします。




