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決勝戦 姉弟

やっと決勝戦です。

読むとすぐなのに

書くとそれは遠い道のりでした。

 ステアーズの最高ランクである《SSSランク》はエボ・タワーのフロア40階に到達したものだけに与えられた総称である。

 現在《SSSランク》のランカーは12名。

 日米共同アライアンス(同盟)で行われたF(フロア)40アタック・プロジェクトに参加した六界とUSAイーグルの2チーム。

 このプロジェクトの様子はスタジオ・ステアーズで大々的にリアルタイムで世界発信された。

 この2チームがフロア39のエリア・ボスを討伐する様を、そして40階に到達した瞬間を全世界が固唾をのんで見守ったのだ。

 当時10歳のオレもその一人で、その配信を見て強烈に感動した。そして生まれ持ってギフトを持っていた俺は疑いなく《ステアーズ》になると決めたのだった。



 入学セレモニーでUSAイーグルのノーマンと戦った。

 そして、今日…

 チーム六界から最強のヒーラーが俺達の前に召喚されたのだ。


 ステアーズ・マニアとしては夢の様な話だ。

 赤星帝、皇帝の愛娘、赤星茜(あかぼしあかね)…ニヤの義理の姉に当たる人だ。

 当時16歳、最年少で最高到達点に達した人物。

 

 ガキの頃の憧れの存在が目の前にいる。


 単純に、緊張するし。

 自分の鼓動はうるさいし、手汗が止まらない。

 二つ名は《治療する死神(キュア・グリムリーパー)》


「やぁ、義理の弟くんと同級生のお二人さん」


 長い黒髪を2つに編んだ髪を後ろで束ね、身長172センチ漆黒の戦闘服を着込んだ細身の体躯、そして彼女には似つかわしくないが、その二つ名を表す巨大な死神の鎌(デス・サイズ)を構える。



「やあ、義理のネーちゃん、はじめまして」


「さぁ、やろうか? 仮に死んでしまっても…安心していいよ、私がちゃんと生き返らせてあげから」


「じゃぁ…アンタが死んだら誰がアンタを…」

 オレとニヤの横に並んでいたはずの安綱が突如飛び出し、抜刀した状態で赤星茜の背後に瞬間したかのように現れる。


「生き返らせてくれるんだろうねっ! 」 


 躊躇なく胴体を真っ二つにするべく刀を一文字に左薙ぐ。

「死なないから…私」

 顔色ひとつ変えずに茜はデス・サイズの柄の部分で斬撃を受け止める。


「やるよ、天満」

 ニヤは呟くと、左目の眼帯を外して言葉を続ける。

「跪け!」

 赤星茜はまるで見えない力で強制的に片膝をつく。

「くっ!ちょっと! 義理のお姉さんに対して酷くない!? 」


 同時に安綱の爆雷が彼女の頭上から降り注ぐ。

 それを合図にオレも獣化して赤星茜に向かって二刀のダマスカス・ナイフを構えて肉薄する。


 

 オレは彼女を知っている。

 いや、みんな知っている。

 彼女は赤星帝やノーマン同様に世界中に名が知れ渡っている超有名人だ。その整った容姿とヒーラーながら前衛までこなす万能型(オールラウンダー)で人気は凄まじいものがあり、《患者》と呼ばれる彼女の熱狂的なファンだけで結成されたステアーズチームまで存在している程だ。


 ギフトは安綱と同系の幻獣系ギフト黒麒麟(ブラック・チーリン)別名角端(かくたん)。

 能力は全てのケガ、病気を完治させる超絶回復術が彼女の回復者(ヒーラー)たる所以だが、彼女のギフトにはもう一つの顔がある。


 それが、対象者の生気を吸い取り、命を喰らう《魂喰らい(ソウル・イーター)》能力だ。

 敵から奪った生気(魂)を体内に貯めて、自身と味方の回復に使えるチート級のギフトだ。


 恐ろしい話だが、殺した分、命が救えるという事だ。

 六界とUSAイーグルが誰一人欠けず40階層へ導いたのは、そんな彼女の功績とも言えるだろう。

 

 だから、遠慮はいらない。

 全力でぶつかってやる!


「ふふふ、君ワーウルフなのにナイフ使いなんだ…珍しいね」

 大鎌で器用にナイフの攻撃をいなす。

「安綱!落雷!」

「うっさい!天満のくせに私に命令するな!」

 文句を言いつつ四発中三発をオレに当たるように白雷を放つ。

 赤星茜は鎌を突き立てて手を放す。

 なるほど、避雷針の代わりだ。

 オレは落雷に打たれながらも上体を低くして彼女を追撃する。

 雷撃で筋肉は硬直するし、背中は焼かれるが構わずに突っ込む。


 一瞬の隙に手癖の悪い小僧が白煙を上げて燻ってるデス・サイズを握り、オレの背後から赤星茜に横薙の一線!

 攻撃のタイミングを合わせてオレは四つん這いになって身を伏せる。

 背中スレスレに斬撃が一文字に通過する。


「うん、即席にしてはいい連携ね」

「なっ!? 」

 ニヤの大鎌の横薙の攻撃を素手で受け止めて、驚愕するオレに微笑む。


「潰れろ! 」

 オレを乗り越えてニヤは赤星茜の目前で赤眼を輝かせて呟く。

  

「ぎゃっん!! 」

 まるで見えない巨大ハンマーで打たれたように、彼女の身体は床に打ち付けられる。

「安綱!追撃!」

「うっさい!わかってる」

 文句を言いながらも、ドンピシャなタイミング。

 

 が、抜刀した安綱が空中で背後に引っ張られ頭から地面に叩きつけられる。


「エナジー・ドレイン!」


 追撃に加わろうと飛び込んだ安綱を、彼女は地面にひれ伏したまま、右腕をヘビのように変形させて安綱の足首を掴んで叩きつけたのだった。

「なっ!? 」


「まず、一機撃破」

 赤星茜は何事もなかったように立ち上がる。

 安綱は気を失ったのか、ピクリともしない。

「スッゲー、無傷じゃん」

 安綱を心配する事なく、義理の姉が無傷な事に驚嘆の表情を見せる。まったく冷たい野郎だ。

「角端獣の固有スキルの自動回復(オート・リジェネ)だ」

 これも知ってる。

 自身を常に回復し続ける能力。

「安綱! 起きられるか? 」

 倒れたままの安綱の首に指を立てて安否を確認する。

「って!? 息してねぇ!? うん? 微かにしてるか? 」


「ふふふん、殺してはいないよ〜」


 確かに、辛うじて呼吸はしているが、とても戦闘続行出来る状態ではない。

 一発でコレかよ!

 ヴァンパイアなど上位アンデットが使う生気吸収(エナジー・ドレイン)ってヤツだ。

 触れただけで生気を奪う能力。

 安綱が油断していたわけではない。

 

 知識は体験とは違う。


 知ってた。

 でも、想像以上に速い…というか、視えない。


 「さて、今更だけど、この決勝戦のルールを君たちに説明するね」

 赤星茜は「その前に」と呟き、倒れたまま安綱に近づいて手を翳す。

「完全回復! 」

 

「ッ!」


 覚醒した瞬間、抜刀した刀で二連撃を繰り出す。

「ホント!渡辺くんは交戦的な子ねぇ、コレも幻獣系ギフトを得た副作用みたいなことなのかな?」

 軽々と安綱の連撃を交わし、値踏みする様に安綱を見つめる。

 人としての器以上の強力なギフトを手にした者は何かしらの副作用の様な症状が顕著に現れるらしい。

 九尾の狐のギフト持ちの玉藻銀子がいい例だ。

 ただのアイドルが獣界門を潜って幻獣系のギフトを得てしまって以来、交戦的なとてもアイドルとは言い難い性格となってしまったのは超有名な話だ。

 それでコアなファンが増えたらしいけどね。


 症例としては、外見変化、体質変化、凶暴化、性格変化、不眠、弱点付与(特定属性が弱点となる)などが挙げられる。

 フロア10で俺たちが実際に目撃したギフトに飲まれて人間ではなくなり、魔物や魔獣となって人々の敵対する存在に堕ちることを「裏返り」と呼称されるが、その一歩手前の連中がこのカテゴリーに入る。

 実際、安綱も半分は裏返ったって事になる。

 

「チッ」

 安綱は体制を整え、鞘に刀を戻す。

 

「イヤイヤ、安綱の場合、出会った普通(ノーマル)の頃からそんなんでしたよ! 凶暴女っす」

「うんうん、初めから怖かった! 」


「もう!2人ともうるさい!」

 安綱は真っ赤になって怒鳴る。


「ふふふ、索冥(さくめい)のギフトを得て副作用なしってのもすごいね、まさに麒麟児ってところかしら」


「で、ルールっていうのは?」

 俺は改めて赤星茜に向き直る。

「そうそう…、君たちにはゲームみたいに命をふたつ用意しました。自分の命と合わせて3つね、渡辺くんは今一回死んだからあとふたつ」


「3回やられたら負けって事っすね」


「そう、3度やられた人は退場してもらいます。仮に本当に死んでしまってもちゃんと生き返らせてあげるから安心して」


「ふん、こっちの命の心配なんて余裕なんですね先輩」

 いつでも抜刀できる様に刀の柄に指を這わせる。


「あと1つ! コレは個人的な事なんだけど…」


「猫柳二夜! この戦闘でアナタがパパから受け取ったその瞳! 私が貰うから! 」


 

「嫌だ! 目ん玉取られるのスッゲェ痛いんだからな! 」  


「弟に適応したって事は、義理でも半分血がつながった私の方がパパの魔眼を上手く使えるに決まってるでしょう?」


 余裕の表情で微笑んでいた赤星茜の表情が変わる。


「さっさとその左目を私に差し出しなさい」

 真剣で残忍な笑みは狂気の表情だった。

 



この作品を見つけてくれてありがとうございます。

そして、読んでくださってありがとうございます。

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