前衛トーナメント 其の四
なんだかんだ、拙い文章ですが、書いていて楽しい作品になって来たと思います。
誤字脱字が悩ましいですが…。
この作品が誰かの記憶に残りますように…。
『続いてトーナメント第三組Cグループの選手の入場です!』
ミサトの呼び込みでCグループの選手たちが続々と会場に入場する。
AグループとBグループの試合が異例の1試合で終わってしまった為、予定では午後から開催予定されていたCグループの試合が昼前に始まることとなった。
ニヤのせいで、会場を約半周ランニングさせられた観客たちも各々自分の席に戻り、気を落ち着かせて入場してきたCグループの選手たちを改めて品定めする様に見守っている。
「本来だったら6試合の予定が、2試合で決勝選出者が決まるなんて異例中の異例らしいわね」
俺たち二人も例外なくアリーナを半周させられて、今元の場所に戻っている所だ。
「第一試合はお前が終わらせたんだろ?」
隣で腕を組んで呟いてるのはキム・ヨンウ、韓国の虎女だ。
「アンタが美味しいところを、全部持って行ったんじゃないのさ」
結果、俺は第一試合でこの虎女と一騎討ちに勝利しただけで決勝戦に進出できたわけで…。
「で、第二試合もニヤがやらかしてくれたからな」
そう、Bグループのニヤの試合を観て胸騒ぎがするというか、嫌な予感がするのだ。
あの女は超がつく負けず嫌いで、オマケに凶暴だ。
絶対狙ってる…と断言できる。
しかし、杞憂はある。
「なぁ、ヨンウさんよ、安綱のヤツどんな塩梅なんだ?ウワサではお前ら九識の所で特訓してたんだろ? 」
「ウワサ? ニュースソースはどこよ? それ」
「ニュースソースっていうか…親父から聞いただけだって! 」
というか、親父のニュースソースはどこなんだ?
「ふーん、真狼講師にね…で、何? 安綱のこと気になるの? 」
「そりゃ、気になるって、あのヤバいギフトを…安綱は使えるようになったのか? 」
獣界門ではプロのステアーズたちが束になっても、暴走した安綱のギフトが圧倒していた。
アイツがあのギフト使いこなせる様になったら、鬼に金棒どころじゃないぞ! 学校に当たり前の様に帯刀してくる女だぞ金棒なんざマストなワケだ。
鬼に金棒+ランチャー…イヤ、ICBM(大陸弾道ミサイル)でもお釣りが来るよな。
なんて妄想に耽っていると、ヨンウに肘で突かれる。
「ホラ、すぐ試合が始まるわよ、自分の目で確かめなさい…知ってるでしょう? あの子は私なんかよりずっと短気でせっかちで負けず嫌いよ」
それはもう、痛いほど身をもって知ってるよ。
選手の紹介とともに、対戦表通りに各闘技台に選手たちが対峙する。
モニターに紹介された選手たちが映し出されていく。
第三闘技台で二本の刀を帯刀した小柄なポニーテールを見つける。
「・・・・・・っ!」
ん? 気のせいか安綱頭部に見慣れない物のシルエットが…。
待て待て待て! 第三闘技場の選手紹介でモニターに写った安綱の姿は、見慣れた艶やかな黒髪ポニーテールの左耳の上に立派な白磁の角が一本伸びていた。
「おい! あいつ角が! 切ったんじゃなかったのかよ!? 」
興奮する俺とは相反して、ヨンウは冷めた表情で、デッカいため息をつく。
「戻したのよ、角がないとあの子ギフト使えないからね」
「そんなに簡単に切ったり戻したりできるものなのか? 」
「簡単だけど、コスパが悪いのよね! ギフトの暴走が始まったらあの角を切り落として暴走を止めるの、で、エリクサーで角を元に戻すって寸法よ」
待てよ! 何回切ったら暴走する程のギフト使える様になるんだ? それにエリクサーってレートいくらだっけ? 取引価格は変動するよな…ハイポーションより高価な回復薬をそんな贅沢な使い方できるなんてドコの金持ちだってんだ? 企業が出資したとしたら、やっぱり九識か?
「それって…一回じゃないよな? アイツは何回目であのギフトをモノにできたんだ? 」
「あはは、アンタ顔に出てるわよ! スポンサーは九識に決まってるでしょ! 私と安綱はナインの全員相手に毎日訓練してたんだからさ」
「ツノは誰が斬ってたんだよ? そんな事できる奴はナインにも居ないだろ? 」
「最初は大変だったわよ〜、安綱を拘束してナイン全員がかりでさ、でも後半は剣士グラム一騎で安綱の角を切り落とせるほどにナインもアップデートされてたわよ」
はっ?
そんな短時間で一騎討ちで安綱のツノを落とせる程強化できるものか!?
「大枚叩くだけの価値が、九識にとって安綱にはあったって事よ」
「なるほどな、こんな短期間で特訓に同伴したヨンウが無茶苦茶強くなってたのはそういう事か…」
「私はもともと無茶苦茶強かったの」
鼻息を荒くして得意げなヨンウ。
そして、会場が静まりジェームズがタイミングを測った様に試合開始の号令をかけた。
《それでは、試合開始! 》
その瞬間。
予想通り、会場全体が眩い光が全てを包む。
安綱のヤツ、やりやがった。
獣界門で散々喰らった閃光。
俺とヨンウは経験済みなので、予め瞼を閉じて閃光を直視しないようにしたおかげで、全ての闘技台に落とされた落雷の攻撃を見定める事に成功した。
「あの初見殺しのフラッシュ攻撃を操れる様になってんだな…」」
ちゃんと手加減はしている様で、他の闘技台の選手たちが派手に吹っ飛ばされて行くが、おそらく死者は出ていないだろう。
「ナインにFOXの連中も手玉に取った技だからねー、学生にどうこうできるレベルじゃ無いって」
ヨンウは余裕の表情で言っているが、コイツの性格を考慮すれば、ヨンウは既にあの技を何とかできるレベルに成長してると考えるべきだな。
そう確信させるのは、ヨンウに以前からあった安綱に対する嫉妬心が全くと言って良いほど無くなっている事だ。
最初はギフト持ちの俺たちに向けられてきた嫉妬心が、授業も始まり自分もギフトを得て、改めてノーマルで三席に登り詰めた安綱を勝手にライバルみたいに敵視してた印象だ。
アリスと安綱との関係に近い信頼感というか、仲間意識みたいな雰囲気を感じる。
《おっとぉぉぉ! スランプ情報の噂はガセだったのか! 大閃光の後、渡辺安綱選手以外全員場外に吹っ飛んだ!》
《そして! この第三試合も一発で終了! Cグループ勝者 渡辺安綱! 》
ジェームズの勝ち名乗りに手も挙げないでうつむいたままの安綱。
「おい、ヨンウ…アレ、安綱のやつ大丈夫か? 」
「アレ…ちょっと不味いかな…」
俯いたままの安綱の顔がこっちを向いて、目を見開いて俺を睨む。
「アンタはまた違う女と並んでイチャイチャと…」
「へっ? 俺?」
「バカッ…私は関係ない…って! 」
アリーナから背を向けて、突然逃げだすヨンウ。
そのヨンウに白雷が豪音とともに打ち落とされる。
「ガッ…はっ」
口から白煙を吐き出して倒れる。
「はっ? ライカンを一撃で!? 」
ヨンウさんよ! 安綱の雷撃攻略済みじゃなかったのかよ!さっき余裕かましてたじゃん!
変身前とはいえ、安綱は九識での特訓でしっかりライカン・スロープを攻略し終えていたようだ。
「死ね!女の敵!」
真っ赤になった安綱の顔を見て、なんかあんな顔して怒る安綱の顔を見るのは久しぶりだなぁと思いながら
「誰が女の敵だ!? 」と言い返す間もなく、手加減なしの落雷によって俺の意識は刈り取られた…。
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